筋肉のプロから学ぶ!健康的な筋トレダイエットとは?

昨今の筋トレブーム。生活習慣病の改善、メンタルの安定などその健康効果が注目されていますね。
この筋トレを「痩せる目的」も兼ねて取り組んでいる人も多いはず。いわゆる、”筋トレダイエット”です。
早く痩せたいという思いから、食事制限を取り入れている人も多いのではないでしょうか。(※2021年1月18日スポーツウェブ掲載)

 

でも、ちょっと待ってください! 食事のバランスが崩れていると、せっかくの筋トレの効果が薄くなってしまう可能性も…。
というわけで、今回はボディビルダーとしても活躍する日本体育大学准教授のバズーカ岡田こと岡田隆さんに、筋トレと食事制限の関係について聞きました!

岡田隆

1980年、愛知県生まれ。日本体育大学准教授。理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JOC強化スタッフなど役職多数。2014年東京オープンボディビル選手権大会70kg以下級優勝。トレーニング法や食事法など肉体改造に関する最新情報を世界中から集め、自らの体で試しつつ検証。トップアスリートにトレーニング方法を教える。現在は動画サイトで自身のチャンネルも開設。

 

30代が節目 筋肉は年々減っている


最近、「筋肉が落ちた」と感じていませんか? 
体を動かしていないと筋肉は減っていきますが、そこには年齢が関係しているといいます。


岡田先生:「個人差はありますが、筋肉は30代ごろから落ち始めます。ちょうど体重が増え始めて気になりだす年齢でもありますね」

 

“筋肉が減ると、太る”は間違い


岡田先生:「ここで、勘違いされがちなんですが、「筋肉が落ちる=脂肪が増えて体重も増える」というわけではないんです」

「そもそも筋肉は、体を動かすことで維持されています。これは30代であっても60代であっても変わりません。まったく運動していない30代よりも、日頃からスポーツや運動をしている60代のほうが筋肉は確実に維持されます。しかし、たいていの人は30代ぐらいになると体を動かす機会が減っていき、筋肉が落ちてしまいます。脂肪が増えてしまうのは、それまで体を動かすことで消費されていたエネルギーが蓄積されるばかりになり、その結果、脂肪となって太ってしまう。太る原因は筋肉量ではなく、運動量にあるんです」

糖質制限の落とし穴


とにかく早く痩せたい!と考えている人は、食事制限を短期間で一気に追い込みがち。しかし、今はインターネットやSNSなどの情報をもとに、間違った食事制限をしている人が少なくないと岡田先生は見ています。

岡田先生:「まず覚えておいてほしいのは、健康的に痩せるためには、1ヶ月に現在の体重の5%以内を落とすのが理想的とされていること。たまに一般的な体型の人で『1ヶ月で5キロ痩せた』という声を見かけたりしますが、そんな減量の仕方は100キロくらいの人じゃないとそもそもダメなんです」

 

「ダイエット目的で筋トレをする際に、食事制限をしたほうがもちろん体重はすぐに落ちます。たとえば、有名な方法に糖質制限がありますよね。パンやご飯といった炭水化物を抜いて、さらに筋トレをすれば、短期間で希望の体重まで落とせるかもしれません。しかし、糖質が少なくなると、脳の働きが悪くなり、筋トレへのやる気が低下して、倦怠感を覚えやすくなります。そうなると筋トレどころか普段の生活にも影響を及ぼしかねません。結果、筋トレやダイエットを続けられなくなります。そして、リバウンドして、また短期間のダイエット…という悪循環に陥ってしまうのです」

 

岡田先生:「筋トレで痩せたいということは、筋肉をつけて代謝を上げることで体脂肪を落とす、ということになるので、まずは筋肉をつけるために一生懸命筋トレをすることが大事になります。一生懸命になるためには、糖質が必要です。筋肉を作るのはタンパク質ですが、その筋肉を動かすエネルギーになるのは糖質です。いくらタンパク質を摂っていても、糖質が足りないと不十分な筋トレになり、結果的に筋肉はつかず、しぼむように痩せ細るだけです。このように、不適切な食事制限をすると空回り状態になってしまうんです」

まずは正しい食生活を


参考までに厚生労働省が発表している生活習慣病予防のためのバランスを見てみましょう。

1日のトータルカロリーの内、三大栄養素の理想的な割合は
タンパク質:13~20%
脂質:20~30%
炭水化物:50~65%   

出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 

岡田先生いわく、筋トレダイエットをするときは、脂質よりもタンパク質を多めにとって、炭水化物を自分なりに調整し、痩せる効果が出るかどうかを見定めていくことが大事だそうです。

岡田先生:「三大栄養素である炭水化物(の中の糖質)、タンパク質、脂質が人体に必須のエネルギーです。現代人は、このバランスが偏っています。とくに多く摂りがちなのが脂質で、揚げ物やスナック菓子などに多く含まれています。これらのバランスを整えるだけでも、かなり痩せやすくなります。この三大栄養素は必ずどの食品にも表示されているので、コンビニなどで購入するときにぜひチェックしてみてください。目安としては1品だけで脂質が10gを超えているものは敬遠した方がいいですね。ちなみに、1回の食事に対してタンパク質は20g以上が目安で、炭水化物は自分で量を調整する必要があります」

 

「例えば、昼食にラーメンと炒飯セットを食べて、脂質と炭水化物一食分の量をオーバーしたとします。そのオーバーした分、夕食か翌日の朝食で、油とご飯を少なめにするなど、トータルのプラスマイナスで考えて調整しましょう。決して一食で完璧なバランスを作ろうとしなくてもいいんです」

三大栄養素のバランスをチェックしてみよう


三大栄養素のバランスが崩れていないか、岡田先生に簡単なチェックリストを監修してもらいました。次のうち、1つでも当てはまったら、あなたの食事制限には問題があるのかもしれません。

 

□朝食を抜いている
□1品料理(丼ものやパスタ)ばかり食べる
□揚げ物が多い
□炭水化物を過度に制限している
□肉・魚・豆類・乳製品をあまり摂っていない
□スナック菓子をおやつによく食べる
□カフェオレやジュースなど甘い飲み物をよく飲む
□やる気が起きない・集中力が続かない
□就寝に近い時間に食事をとる

 

筋トレのポイントは”筋肉の限界”を感じること


筋トレについては、自分の筋肉量に見合ったやり方を見つけてほしいと岡田先生は言います。

岡田先生:「家でやる筋トレは、スクワット・腕立て伏せ・腹筋・背筋の4つだけでも問題ありません。これらの筋トレは決められた回数よりも、“限界までやる”というのがベスト!それを3セットできると理想的です」 

「なぜ限界までやるのがいいかというと、筋肉というのは限界まで使用したときに大きく強くなりやすいから。一般のトレーニングでよくある「〇〇回×3セット」など回数を決められたやり方だと、例えば私のような元々筋肉がある人がやると、限界まで達せずに効果が出にくくなりますし、筋力の弱い人からしたらこなせない回数となってしまいます。その人にとって限界までやることが、効果を得るために大切なのです。ただ、腕立て伏せなどは比較的早く限界に達しやすいのですが、スクワットの場合はかなりの回数をこなせるので、「限界までやる」というのが難しいかもしれません。こう言ってはなんですが、やはりジムに行く方が早いです(笑)。機材があるので負荷をかけて限界まで達しやすい上に、トレーナーから正しい知識を教えてもらえるからです」


また、岡田先生は、以下のポイントもおさえると、より筋トレの効果が上がると言います。


筋トレの効果を上げるポイント

・狙ったパーツをしっかり鍛え、怪我を防止するために、正確なフォームを心がける
・狙ったパーツをしっかりと疲労させるために、1種目あたり3セット行う

 そのセット間休息時間は、休みすぎないように1〜2分程度とする。
昨日の自分を超える。回数、フォームなど、昨日の自分よりもがんばれたか?それが確実な成長になる。


 筋トレ+食事制限は、ダイエット効果の高い方法ですが、不適切な方法でやっていると思わぬ弊害を起こすこともあります。三大栄養素のバランスを整えることを重視するなど、正しい食生活を取り入れることで、健康的な身体を手に入れましょう!