■43.6%の衝撃―身近な危険になってしまった自転車
今回、事前アンケートで今回特に多く寄せられたのが「自転車のルール」に関する声でした。
「歩道を爆走してくる自転車が怖い」
「車道の右側を走る“逆走自転車”に困っている」
中には、商店街で自転車にぶつかられ、転倒したのがトラウマで、自転車の多い夕方の時間には外出しないようにしている…という切実な声までありました。
自転車事故が身近なものになりつつあることは、データにはっきりと表れています。 その年に発生したすべての交通事故のうち、自転車が関わった比率を表す「自転車関与率」。 東京都では、46.3%にのぼります(2021年・警視庁)。
交通事故の総数は減っている一方で、自転車事故は減らないどころか増加しており、自転車関与率は各地で上昇傾向にあるといいます。
■自転車はなぜ左側通行?―知ってるようで知らない交通ルールの本質
自転車事故を少しでも減らすことはできないのか?寄せられた声を読み込んでいく中で、ほとんどの事故や事件は車道の左側通行や乗るときの格好など基礎的なルールが守られていないことによるものだということが分かってきました。
番組ではご自身も2児の母で日頃よく自転車に乗るという芸人の横澤夏子さんに、基礎的な自転車のルールを学んでいただきました。
Q.自転車はどこを走ればいいの?
自転車は原則車道の左側を通行することになっています(道路交通法第17・18条)。 最近は、車道に左側通行を促す自転車マークがついているところも増えています。
自転車が左側通行なのは、道路交通法において自転車も車と同じ「車両」扱いだから。 これを守らず車道の右側を走ると…。
見通しの悪い角から出てくる車に直前まで気づくことができず、危険です。 片側1車線の車道の場合、車に気づくまでに右側通行・左側通行かでおよそ3メートルもの差がありました。
基礎的なルールにはこうした危険を予防する意図があることを理解していれば、自然と実践しやすくなるはずです。
Q.歩道や横断歩道を走ってはいけないの?
自転車で車道を走るのってちょっと怖い・・・と思ったあなた。安心してください。 道路交通法には、自転車の車道通行の例外が明記されています。(第63条の4)
1 道路標識等で指定された場合(「普通自転車歩道通行可」など)
2 運転者が13歳未満の子供・70歳以上の高齢者・一定程度の身体の障害を有する場合
3 車道又は交通の状況からみてやむを得ない場合
以上に該当する場合は、車道側を徐行すれば歩道を走行していいことになっています。
一方、横断歩道の渡り方に関しては明確な規定がありません。ただ、横断歩道は歩行者の横断用のものとされていることから(道交法第2条3の4)、歩行者がいる場合は自転車から降りて押して歩くことが推奨されています。
Q.傘差して運転していいの?
雨の日についついやりがちな傘差し運転も要注意です。 警察庁は片手での傘差し運転は、道路交通法の定める安全運転の義務に違反するとしています。(第70条)危険ですので、片手での傘差し運転はやめましょう。
雨の日はレインウェアを着用するなど、安全を確保しながら自転車に乗りましょう。
■「整備不良自転車」に乗ってませんか?
ルールの他にもうひとつ気を付けたいのが、自転車の整備。 ある損害保険会社の調べでは、自転車に乗る人の86.9%が日頃の点検をしない・ほとんどしないことが分かっています。
特に注意が必要なのがブレーキ。手元のブレーキバーが「カチャカチャ」と音を立て、握り切れてしまうほどゆるい状態で乗っていませんか?実はこれ、ブレーキ機能が相当低下した状態なんです。
正常な状態とゆるい状態では、ブレーキをかけてから停車するまで1メートル以上の差があることが分かっています。もしもの時に整備不良が原因で、人をひいてしまうかの境目になるかもしれないのです。
このほか、タイヤの空気圧低下やチェーンのたるみなどもほおっておくと事故に繋がります。 乗る前に状態をチェックし、異常がある場合は自転車店などに持ち込むようにしましょう。
■歩行者も自転車も安全な社会を目指して
自転車事故が減らない現状を受け、警察も様々な対策を打ち出しています。 危険運転で取り締まりを受けた人に講習会受講を義務付ける「自転車運転者安全講習制度」を全国で始めたほか、警視庁は信号無視や一時不停止など悪質な違反について取り締まりを強化していく方針です。
また、2022年4月に成立した改正道路交通法には、全年齢を対象にヘルメット着用を努力義務とする内容が盛り込まれました。
ルールが厳しくなり窮屈な印象もあるかもしれません。 しかし、すべては大切な命を守るための取り組みです。 ルールを守る少しの気持ちの余裕で、歩行者を優先しようという少しの思いやりで、 守られる命が確実にあります。
便利で身近な交通手段である自転車と、これからもうまく付き合っていくために。 あなたの乗り方を、もう一度見直してみませんか?
(取材・文:「あさイチ」ディレクター・岡大樹)
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