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“受診控え”に要注意!

NHK
2021年10月18日 午後10:26 公開

“進行がん”の発見が増加 衝撃のデータ

これは、今年9月に横浜市立大学の研究グループが発表した「大腸がんの患者が、どの段階で発見されたのか」をグラフ化したものです。新型コロナの流行前は、ステージ0から1の、比較的早い段階でがんが見つかるケースが多くありましたが、新型コロナの流行が始まった去年3月以降、早期での発見は減少。一方、がんが進行して周辺に転移した状態のステージ3で見つかるケースが大幅に増加していることがわかりました

がんの専門家で東京大学大学院医学系研究科・特任教授の中川恵一さんは強い危機感を抱いています。

がん治療の専門医・中川さん「コロナ禍が始まる前には見たこともないほど、がんが進行した患者が増えています。残念ながら、今後、がんによる死亡が急激に増えてくる可能性が高いのではないかと懸念しています」

なぜ “受診控え”を?

その最大の要因と考えられているのが、“受診控え”「病院に行くことで感染するかもしれない……」「もし自分が気付かないうちに他の患者さんに感染を広げてしまったら……」さまざまな理由から、多くの方が定期検診や通院治療を“自粛”してしまい、その結果として、大腸がんをはじめ様々な病気が、症状がかなり進んだ状態で見つかってしまうケースが全国で報告されているのです。

今回、番組では全国約400人の医師に取材しました。すると、“受診控え”の深刻な実態が見えてきました。

どんな病気も、放置していると気付かないうちに症状が進行して、治療が難しくなったり、最悪の場合手遅れになってしまうリスクがあります。また、通院などの治療や服薬を中断してしまうのも危険です。例えば、ピルの場合、再開時に血栓症のリスクが高まるといった問題がありますが、そうしたリスクを知らずに自己判断でやめてしまうケースも婦人科で多く報告されているとのことです。

特に予防接種 子どもも要注意

大人だけでなく、子どもにおいても“受診控え”は深刻な影響を及ぼします。小児科医の坂本昌彦さん(佐久総合病院佐久医療センター小児科医長)が最も懸念しているのは、予防接種の遅れです。

小児科医・坂本さん「1歳までに受けるような予防接種はほとんどの方がきちんと受けている一方で、特に昨年は幼児から学童が受けるようなMR(麻疹・風疹混合)ワクチン2回目や日本脳炎・二種混合などの予防接種を控える方が減った傾向が見受けられました。実際にそうしたデータが出ている自治体もあります」

子どもの予防接種は受ける時期が決まっています。その病気に最もかかりやすかったり、接種が効果的な時期に設定されています。また、「後で打とう」としても無料で受けられないこともあるため、決められた時期に接種することが大切だと坂本さんは言います。

“かかりつけ医” の大切さ

番組では、“受診控え”をした結果として、病気や体調不良が進行してしまった人たちにも取材を行いました。すると、窮地のところで“かかりつけ医”に助けられたという経験をもつ人に出会いました。

40代のけいこさんは、「卵巣のう腫」のため、今年、片方の卵巣を摘出する手術を受けました。卵巣のう腫は9センチもの大きさになっていましたが、自覚症状はあまり無かったといいます。

けいこさん「医師からは、9センチまでの大きさの腫瘍は3~4カ月でできるようなものではないので、去年の検診のころからあったかもしれませんね、と言われました」

おなかの張りを感じながらも、“受診控え”をしていたけいこさん。卵巣のう腫が判明したきっかけは、ある日、料理中に指を切ったことでした。指の治療で近所の“かかりつけ医”を受診したとき、ついでに下腹部の違和感について相談したところ、腫瘍があることがわかったのです。専門病院での精密検査を経て、手術をすることになりました。

“かかりつけ医”は、多くの場合、これまでの病歴や体質などを適切に把握し、特定の症状をみるだけでなく、患者の健康を第一にさまざまなケアを行ってくれる存在です。また、仮に感染が不安、体調が悪く外に出るのがつらい、といった状況でも電話やオンライン診療などで相談に乗ってくれることもあります。

持病が無い方も、何でも気軽に相談できる“かかりつけ医”をもっておくことが大切です。探す上でのポイントを、総合診療医の大橋博樹さんに伺いました。

まず大事なのは、場所。かかりつけ医は「相談したい時に行ける」ことが大切なので徒歩で行けるか、タクシーで気軽に通える程度の距離にあることが望ましいとのことです。

持病がある方は、その症状を専門に診てくれている主治医をかかりつけ医にする場合が多いそうです。もし持病が無ければ、内科医だと、幅広く相談に乗ってもらいやすいということです。

初めてかかりつけ医を探す場合は、「良いな」と思っている病院で予防接種を受け、院内の雰囲気などを見に行ってみたり、会社等の健康診断の結果を持って行ってみたりすることで、“かかりつけ医”を見つけるきっかけにできるといいます。

総合診療医・大橋さん「もし何度か通って良いなと思える医師が見つかり、“かかりつけ医”になってほしいと感じたら、『私のかかりつけ医になって下さい』とシンプルに相談してみるのも良いと思います。ほとんどの医師が好意的に対応してくれるはずです」

医療とのつながりを取り戻すことの大切さ

番組の放送中、“受診控え”をしてしまったためにがんなどの病気が進行してしまったことを悔やむ体験談が何百件も寄せられました。自覚症状が無くても、定期健診(検診)などを通して、早期発見・早期治療につなげることが自分の命と健康を守ることにつながります。

確かに新型コロナの感染にも大きなリスクがありますが、がんなど、新型コロナよりもケタ違いに死亡率が高い病気もたくさんあります。

取材に協力してくださった全国400人近くの医師のみなさま、「あさイチ」のアンケートに回答してくださったみなさま、放送中にメール・FAXをお寄せくださった視聴者のみなさま ひとつひとつの声と改めて向き合ってみると、「健診(検診)を定期的に受ける」ことと「ちょっとした体調不良でもためらわずに医療機関を受診する」ことの大切さが浮き彫りになりました。