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子どものワクチン接種

NHK
2021年10月7日 午後7:35 公開

これから本格化 子どものワクチン接種

首相官邸HPによると、10月7日時点での国民全体に占める2回接種完了者の割合は62.7%に達しています。その一方、子どもを中心とする10代(12歳から19歳)では、26.85%となっています。まさに、これから子どものワクチン接種が本格化していくとみられます。

では、当事者となる子どもたちは、ワクチン接種についてどんな考えをもっているのでしょうか?

小児科医でワクチンの専門家でもある川崎医科大学教授の中野貴司さんの協力のもと、12歳から16歳の子どもたち(首都圏在住)にさまざまな質問をぶつけてみました。

子どもたちの本音は……?

まず聞いてみたのは、「ワクチン接種でどんな効果が期待できると思いますか?」という質問。ちょっと難しいかも……?というスタッフの懸念をよそに、みんなスラスラと自分の答えを書いていきました。

4人が書いたのは、「重症化しづらくなる」ということ。

あむさん(小6)「ワクチンの抗体で、もしかかったとしても軽症で済むかなと思いました」

しゅんすけさん(小6)「ワクチン打ってできた抗体が、自分の体内に入ってきたコロナウイルスを弱体化するみたいなことをニュースとかで聞いたことがあります」

現在日本で承認されている新型コロナワクチンについては、12歳以上の子どもの場合でも、大人と同様に、高い感染予防効果・発症予防効果があることが製薬会社の臨床試験などで確認されています。しかし、こうした効果は、時間がたつとともに少しずつ落ちていくことも、世界の研究からわかってきています。それでも、からだの中の免疫細胞の働きで、仮に感染しても速やかに抗体が作られたり、感染した細胞を別の免疫細胞が破壊したりすることで、ウイルスの増殖を抑えて重症化を防ぐ効果は期待できると考えられています。

接種完了後の感染、いわゆる“ブレークスルー感染”があるから、接種完了後も基本的な感染対策は、感染状況が十分に落ち着くまでは必要だということも、子どもたちは全員よく理解していました。

さらに、こんな答えを書いた子も……

ひろたかさん(中2)「新型コロナウイルスにかかりにくくなるっていうことで、経済活動とかが活発になって、だいぶいつもの生活に戻ってくるんじゃないかなと思います」

ワクチンによる免疫が自分のからだを新型コロナウイルスから守る効果に加えて、社会全体への影響についても考えを巡らせているようでした。

では、副反応についてはどうでしょうか?

「腕(接種部位)の痛み」・「発熱」・「体のだるさ(けん怠感)」など、特に起きる頻度が高い症状を子どもたちは挙げてくれました。中には、すでに接種を済ませていて、自分の経験した症状を書いてくれた子もいたようです。

これまでの研究で、子どもの方が大人よりも副反応や体調不良の発生頻度は高く、やや症状が重い傾向があることがわかっています。この点についても、ほぼ全員が知っていました。

専門家の中野さんも驚くほど、新型コロナワクチンについて詳しく知っていた子どもたち。いったい、どのように情報を集めているのでしょうか?

みすずさん(高1)「学校で先生に聞いたりします。ほかにも、テレビのニュースも見ています。あとは、やっぱりスマートフォンです。気になることがあったら、検索していろいろ調べて参考にしています」

今回集まってくれた6人の場合、友だちとワクチンや感染状況についてなどの情報交換をすることも多いそうです。

でも、なぜ、それほど熱心に情報収集をするのでしょうか?

けいとさん(高2)「やっぱり自分が当事者だからなんだと思います。自分がワクチンを打つからやっぱり慎重になります。今回のワクチンは本当にいろいろ初めてのことが多いと思うので、正直それだけビビります」

ひろたかさん(中2)「生きていたいからですね。やっぱり、知識を持たずに新型コロナウイルスに挑もうとするのが僕は嫌なんです」

ゆうりさん(中2)「ちゃんとしたことを知りたいし、大人の人にもちゃんとしたことを自分たちに伝えてほしいなって思います」

これまで、子どもはたとえ新型コロナウイルスに感染しても軽症・無症状で済むことが多く、他人にうつすことも大人ほど多くはないといわれてきました。しかし、“第5波”では、持病の無い子どもが人工呼吸器が必要になるほど重症化したというニュースがありました。また、子どもが家族感染の起点となって、家族全員に感染が広がり過酷な自宅療養を余儀なくされたケースも多く報じられました。さらに、たとえ療養期間中は症状が軽くても、その後数週間以上たってから、“後遺症”と見られるさまざまな症状や体調不良が出現したり、MIS-C(ミスシー)という全身の重い炎症反応がごくまれに起きたりすることもわかってきています。

今回集まってくれた子どもたちの多くは、「子どもでも感染したら大きなリスクがあるのではないか?」と強く警戒していました。ワクチン接種は新型コロナウイルスの脅威からわが身を守るひとつの手段になる一方、副反応などのリスクも決してゼロではありません。子どもたちは、このことを自分たちの命と健康に関わる問題としてとらえ、自分なりに何が正しい情報なのか見極めながら日々情報を集めているようでした。

しかし、こうしたメリット・デメリットをてんびんに掛けて接種するかどうか判断するのは大人にとっても決して簡単ではありません。子どもたちは、いざ迷ったとき、誰に相談しようと思っているのか聞いてみました。

親・家族と答えたふたりに理由を聞くと、「身近にいて一番信頼できる大人だから」とのことでした。

医師に相談すると答えた子も。

ひろたかさん(中2)「ウイルスなどのプロフェッショナルであるお医者さんに聞いて、ワクチン接種でどういう症状が出るのかを理解した上で、接種するかどうかを決めていきたいなと思います」

その一方、ただひとり「己(おのれ)」と答えた子もいました。

けいとさん(高2)「もしワクチンを打って、自分にかなり重大な症状が起こったときに、その決断を人のせいにしたくないと思うので、自分で決めたいです」

でも、けいとさんはなぜ家族や医師に相談したくないのでしょうか?

けいとさん(高2)「例えばお医者さんは、ワクチンを打つ人が安心するための情報を提供してくれる人だと思っています。なので、打つデメリットについてはあまり深く触れてくれないのではないかと思うんですよね、自分的には」

このけいとさんの言葉を受けて、こんな反応も。

あむさん(小6)「もしもワクチンを打ってそのメリットと違うことになったら『あれ?あのお医者さん、言ってた事と全然違うじゃん』って思ったりしてしまうかもしれないので、デメリットはデメリットとして教えてもらわないと、ちょっと覚悟ができないです」

もちろん、ワクチン接種は新型コロナウイルス感染時のリスク低減につながることは確認されています。しかし、「ワクチンの感染予防効果・発症予防効果・重症化予防効果がどのくらい続くのか?」といったメリットについても、「長期的な安全性については問題ないのか?」といったデメリットについても、まだまだ十分に研究しつくされたとはいえない状況です。特に、子どもについては詳しい臨床データがまだまだ不足していると、ワクチンの専門家の川崎医科大学教授・中野さんは指摘しています。

今回、取材に協力してくれた6人の子どもたちからは「誰かに言われたからではなく、良いことも悪いことも全て納得した上で自分で判断したい」という意思がうかがえました。日本・世界の子どもたち全員がこうした意思を持っているかはわかりませんが、こうした子どもたちの気持ちに寄り添った情報提供のあり方が必要なのかもしれません。

子どもたちの声 専門家はどう受け止めた?

今回、専門家の中野さんには、子どもたちの座談会での発言の書き起こし全てに目を通して頂きました。これまで、新型コロナワクチンについて子どもたちの生の声はほとんど聞く機会が無かったという中野さんは、どう受け止めたのでしょうか?

専門家・中野貴司さん川崎医科大学教授・小児科医)「予想以上に、基本的なことを正しく理解していて驚きました。当事者意識をもって子どもたちがひとりひとり情報を集めて、接種するかどうかを迷ったとき、『最終的に頼るのは自分だ』という信念を持っていたことにも感心しました。その一方、厳しい指摘もありました。医師としては『いい面も悪い面もちゃんと説明してくれる医師であること』をより大切にしなければいけない、と身が引き締まる思いでした」

ワクチン接種 親子でよく話し合って

自分自身で最終的に判断したいという子がいた一方、厚生労働省のHPには子どものワクチン接種について次のようにあります。

「メリットとデメリットの双方について本人と保護者が十分理解したうえで接種に同意した人が接種する」(厚生労働省HP 新型コロナワクチンQ&A 子どもへの新型コロナワクチン接種の考え方と副反応への対処法 より)

実は、厚生労働省のこちらのコラムは、専門家の中野さんが執筆したものだといいます。あくまで、子どもと親など保護者がともにしっかりと納得した上で接種するかどうか決めるのが大事だと明記したのは、なぜなのでしょうか?

専門家・中野さん「そもそも16歳未満の子どもに関しては接種にあたって同意書が必要です。また、もし、仮に家族間でワクチンの考え方が異なっていると家族関係がギクシャクしたり、万一接種後に副反応や体調不良が出たときの対応などにも問題が出る可能性があります。そうすると、子どもに大きな負担をかけてしまう懸念があります。ですので、本人と保護者がメリット・デメリットについてよく把握した上で、納得いくまで話し合ったうえで接種するかどうか最終的に決めてもらいたいと思います」

親子で話し合うヒント

とはいえ、思春期の子どもとワクチン接種について本音で話し合うことに気後れする方もいるのではないでしょうか?親子でスムーズに話し合うためのヒントが、あるご家庭の取材から見えてきました。

母親のゆうこさん(40代)は、思春期の子どもたちと本音で話し合うことの難しさを感じています。ワクチンに限らず、どんな話題でもほとんど会話のキャッチボールが成立しないのだとか……

長男のともやさん(14歳)はすでに1回目のワクチン接種を済ませていますが、事前にほとんど話し合うことはできなかったといいます。2回目の接種が迫るなか、ゆうこさんはこんなふうに会話を切り出しました。

母・ゆうこさん「ともやはこの間、ワクチンの1回目を打ったじゃない?打とうかなって思ったのは、何かきっかけがあるの?」

すると、長男のともやさん、こんな風に答えてくれました。

長男・ともやさん「学校でも友達が打ってたりして、それなら大丈夫かなって思って。ワクチンを打って、コロナにかかりづらくなるんだったらそっちのほうがいいし、コロナにかかっちゃってもワクチン打っていた方が軽症で済むと思うし、やっぱりワクチンは必要かなって」

この日、ともやさんはいつもと違って、自分の考えをはっきりと言葉にしてくれました。このほか、新型コロナワクチンにまつわる根拠の無いうわさに惑わされていないか?など、聞きたかったことを、ひとつひとつ聞いていきました。すると、ともやさんは、どの質問にも、自分なりの考えを返してくれました。

何が良かったのでしょうか?実は、この話し合いの3日前に、ゆうこさんはともやさんに、「ワクチンについてあなたの考えを聞きたい」と伝えていました。

長男・ともやさん「事前にいつ何の話をしたいと伝えてくれたら準備ができますし、『自分はこういう答え方を持ってるんだ』と改めて自分と向き合えました。事前に用意できた自分の考えをそのまま言えました。考える時間があると、自分としては答えやすいと思いました」

さらに、ゆうこさんは、話題が本筋からそれたりしないよう、事前に何を聞きたいかメモを作って臨んでいました。親のほうも、自分の考えを整理しておくことが、スムーズな話し合いを行うために有効なのかもしれません。

専門家・中野さん「こちらのゆうこさんは、接種するか否か決めつけず、まず、お子さんの考えを聞くことに徹していたのが良かったと思います」

もし、接種がどうしても不安という場合にはどうしたら良いでしょうか?

専門家・中野さん「もちろん、どうしても不安という方もいると思います。接種を迷っているならば、安全性を示すデータが出てくるまで、しっかりと感染対策をしながら待つこともひとつの選択として、私は尊重したいと思います」

また、両親でワクチン接種に関しての方針が違う場合はどうしたら良いでしょうか?

専門家・中野さん「接種するか否か、どちらにしても、しぶしぶでも良いので両親が納得した上で接種するかどうか決めることが大事だと思います。両親の方針が違って子どもが板挟みになってしまうと、子どもを苦しめることになってしまいます。根気よく話合うことを諦めないでください」

視聴者のみなさまからの質問

番組には、視聴者のみなさまからたくさんの質問やメッセージを頂きました。専門家の中野さん(川崎医科大学教授・小児科医)に伺いました。

Q.注射嫌いの子 どうすれば?

専門家・中野さん「まず、子どもに無理強いすることは避けてください。もし無理強いしてしまうと、その子と親・医師の間の信頼関係が傷ついてしまう懸念があります。確かに注射は痛くて怖いものです。すぐに注射嫌いを克服するのは難しいと思います。もし接種を検討する場合には、その注射の痛みや副反応などのデメリットと、ワクチンがもたらすメリットをよく理解したうえで、子ども自身も納得して判断できるまで、根気よく話し合いを重ねながら待つことが必要だと思います」

Q.大人と子ども 同じ容量のワクチンで大丈夫?

専門家・中野さん「法律上は年齢ごとに定められた量を打つことになっています。ただ、中には体格が小さかったり、その年代の子どもの平均より体重がかなり少ないお子さんもいて、不安を感じる方もいるかもしれません。もし接種が不安な場合は、体格や体重だけでなく持病の有無などについても考慮する必要があるので、かかりつけ医に相談をしてみてください。また、いま、子ども用のワクチンの開発も進んでいます。そうしたものが実用化されるまで子どもの接種を急がないというのも、ひとつの手ではないかと思います」