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いま知りたい デルタ株を防ぐには?

NHK
2021年9月8日 午後8:44 公開

対策していたはずが……

デルタ株は従来株と比べて感染力が2倍程度とされていますが、中国の研究グループによると、感染した人のウイルス量が従来株に比べておよそ1200倍に達するケースもあるそうです。日本でもすでにデルタ株が感染の主流となり、特に、東京・埼玉・神奈川・千葉では全体に占めるデルタ株の割合がおよそ99%に達すると考えられています。

感染力が強いデルタ株が広がるなか、これまでにはあまりみられなかったクラスターが発生しています。基本的な感染症対策をとっていたにも関わらず感染が広がってしまった事例が少なくないのです。例えば、大型商業施設の地下食品売り場で起きた、あるクラスターについて番組が取材したところ、次のような感染症対策が取られていたことがわかりました。

  • 入店時の検温と消毒
  • マスクの着用
  • ビニールの仕切り
  • 換気
  • 密を避ける(入店人数の制限など)

それにも関わらず、100人以上のクラスターが発生しました。

また、10人のクラスターが発生したある市民講座でも、次のような対策が取られていました。

  • 検温と消毒

  • マスクの着用

  • 参加人数の制限(定員80人の会議室に25人程度)

  • 距離をとる

  • 全ての窓とドアをあける

  • 物品の共用なし

大型商業施設クラスターも市民講座クラスターも、保健所の調査でも明確な感染経路は特定できていません。

クラスター なぜ?

なぜ、対策したにも関わらず、デルタ株と思われるクラスターが発生してしまったのか。「デルタ株」の感染症対策の難しさを公衆衛生が専門で厚生労働省専門家会合のメンバーでもある国際医療福祉大学大学院教授 和田耕治さんと共に検証しました。

和田さん「様々な対策をしていたとしても、少し弱みがあるとつけ込んでくるのがデルタ株の“すごさ”と言えると思います」

これまでわかっている情報を手がかりに和田さんに検証していただくと、2つのポイントが浮かび上がってきました。

①適切に換気できていたか?

和田さん「この夏は特に暑かったため、日中、窓をずっと開けて換気をするのは難しいのが実情だったと思います。また、エアコンの風があるので、換気がされているのかなと思ってしまう場面があった可能性もあるかもしれません」

もし感染者と同じ空間にいた場合、適切に空気の流れを作って換気しないと、ウイルスを含む空気が部屋の一部にとどまり、感染リスクが上がる可能性があるといいます。

では、換気をする上ではどんなことに気をつければよいのか? 建物内の換気に詳しい工学院大学教授の柳さんは次のように指摘します。

①換気扇やサーキュレーターを効率的に活用

スモークをたいた部屋で実験したところ、部屋のドアを一か所開けただけは部屋の空気が十分に流れませんでした。しかし、扇風機を部屋の内側からドアの方に向けておくと室内の空気がスムーズに外に流れていくことがわかりました。ドアを一か所だけ開けただけの場合に比べ、およそ半分の時間で空気を入れ替えることができました(13畳ほどの部屋の場合)。

②こまめに二酸化炭素濃度を測定

家電量販店やインターネットなどで購入することのできる二酸化炭素測定器を使うことで、その場所の空気が流れているのか調べることもできるそうです。数値の目安としては、1000ppmを超えたら要注意。もし1000ppm以上の場合は、空気がよどんでいる状態だと考えられるそうです。数値を参考に、改めてきちんと換気できているかを見直したり、換気が難しい環境の場合には、部屋の中の人数を減らすなどの対策をすることを心掛けて欲しいといいます。

②マスクから“エアロゾル”が漏れ出していた?

感染力の強いデルタ株だからこそクラスターが起こってしまったもう一つの原因として、和田さんが考えているのがマスクからの“エアロゾル”の漏れ出しです。エアロゾルとは、ウイルスを含む唾液などの微粒子で、特に会話や歌などで大量に発生することがわかっています。小さく軽いため、空気中を数十分間漂い続けることもある上に、吸い込んでしまうと喉や肺にまで到達してしまうリスクがあります。

和田さん「ウレタンや布のマスクは呼吸がしやすいのですが、会話などの際に多くのエアロゾルが漏れ出してしまうことがわかっています。厚生労働省の専門家会合でもできるだけ不織布のマスクをしてくださいというお願いをしています」

特に、人が多く集まる場所は、感染拡大局面では無症状感染者がいる可能性が高まります。そのため、感染状況が落ち着くまでは、人混みは出来るだけ避けることが、エアロゾル感染対策においては重要になると和田さんは指摘しています。

“基本的な感染症対策を続ける”とは

クラスター発生事例から見えてきたデルタ株の感染力の強さ。しかし和田さんによると、デルタ株だからといって主な感染経路は変わったわけではなく、依然として“人が話をするところ” “食事をするところ” “集まるところ” の危険性が高いといいます。

特に、飛沫感染とエアロゾルをどう防ぐかという、基本的な感染症対策が漏れなくできているのかを、ひとつひとつ丁寧に確認することが大事だということです。

あえて、イメージ化するとこのような感じになります。

複数の感染症対策をひとつひとつ、しっかりと徹底することで、デルタ株から自分を守る“盾”がはじめて完成するというものです。

ところが、「このくらいでいいや」と対策に緩みができてしまうと……

対策をやっていたはずでも、盾が隙間だらけになってしまいます。そう、この盾の隙間に入り込んできてしまうというのがデルタ株の怖さなんです。

まだまだ続く新型コロナ流行。いつまでこの状況が続くのか不安に思う方も多いかと思いますが、医療のひっ迫を起こさないためにも、家庭にウイルスを持ち込まないためにも、今一度、ひとつひとつの感染症対策をしっかりと徹底することが大切です。

視聴者のみなさまからの質問

「30分に1回換気していますが、窓を開け、反対側のキッチンの換気扇を回していますがどうでしょうか?」など換気方法への質問を多く頂きました。そこで、換気に詳しい、工学院大学教授の柳さんに伺いました。

柳さん「窓に加えて換気扇など2か所以上を開けて空気の通り道を作ることがとても大事です。ただ、30分に1回の換気では、少し心もとないかもしれません。5センチでも10センチでもいいので、常に開けておくと、より安全だと思います」