誰にも言えなかったディープな恋愛の悩みを、障害のある女性たちが語り合います。「気になる男性に車いすと告げるとみんな去ってしまう」「元カレに“妹にしか見れなくなった”と告げられた」悩みの背景にある、社会のバリアとは?
<番組の内容>
▶ふだん誰にも言えない恋愛の悩み
▶お悩み#1 -「私って、恋愛対象外?」-
▶自分に自信を持てなくなる悩みの背景
▶お悩み#2 -「私って、恋人というより“妹”?」
▶つきあってからの悩みの背景
▶”恋愛はプライベートな問題”のため相談できない
<出演者>
サーヤさん(ラランド お笑い芸人)
武子愛さん(障害者の恋愛や性について研究)
レモンさん(番組MC)
玉木幸則(番組ご意見番)
あずみん(番組コメンテーター)
ふだん誰にも言えない恋愛の悩み
<VTR>
参加者:あずみん(捻曲性骨異形性症)、まめんさん(けい髄損傷)、セナさん(脊髄性筋萎縮症)、ぷっかさん(脳性まひ)
あずみん:きょうは恋愛からセックスまで赤裸々に悩みを語り合おうと思いますが、今ぶっちゃけ好きな人っている?
ぷっか:私はいるんですけど、コロナで全然会えてなくて…
あずみん:いいな、好きな人いるの羨ましい。セナちゃんは?どう?
セナ:同じ大学の男の子と。ここから恋愛に進展するのかなみたいな。
まめん:私はね、最近のテーマは親切な人がいいなって思っている。
あずみん:何かあれだよね、店員さんに対して横柄な態度取る人 嫌じゃない?
まめ:そう、そういうのいや。
あずみん:私は何か自分の気持ちをちゃんと言葉にしてくれる人がいい。
まめん:そうだね、わかる。
あずみん:我慢ばっかりする人とか、何も自分の気持ち言わない人って何考えているか分からないから…。
恋のお悩みや失恋エピソードを、障害のある女性たちが語り合う。
<スタジオ>
レモン:女性障害者の恋愛のお悩みということで。サーヤさんはどうですか。恋の悩みは友だちに相談しますか?
サーヤ:私あんまり言わないです。
サーヤ:ああやって話せるのうらやましいです、お友達と一緒に。
レモン:障害のある女性の悩みって、結構おれら知らんかったけど、あるねんな。
あずみん:ほんとに軽い恋バナはするんやけど、なかなかその深~いところまで、っていうのは話せないです、ふだん。全然話せてないなと思いました。
お悩み#1 -「私って、恋愛対象外?」-
<VTR>
あずみん:今、コロナ禍で出会うチャンスってすごい減っていると思うんだけれど、みんなどうしているの?まめんちゃん、どうしているの?
まめん:私は、どうしているかな…。結局、仕事関係でぐらいしか、出会いはないままかな。
あずみん:出会いないよね。なかなかね。
まめん:ないです。
セナ:大学生はどう出会っているかっていうと、マッチングアプリをやっているんですよ。
あずみん:どうなん?やってみて。
セナ:障害があるっていうことで、すごい難しいですね。
東京で暮らすセナさんは、大学3年生。全身の筋力が徐々に衰える難病で、電動車いすを利用している。セナさんは実家暮らし。トイレや入浴、食事の準備などは、家族の介助を受けている。
趣味はメイク。最近は韓国メイクにハマっている。「おととい、まつげパーマに行って、今まつげが絶好調な感じです。めっちゃ上がってていい感じです。」
そんなセナさん、去年の夏からマッチングアプリで恋人探しを始めた。マッチングアプリとは、インターネットを通じて、出会いを作るためのアプリ。プロフィールを見て気になった人と、メッセージや電話でやりとりして仲を深めていく。
セナさんは、プロフィールに車いすのことは書かないで、仲を深めてから相手に打ち明けるようにしている。「車いすの人のイメージをそれぞれ持っていると思うし、そのイメージで見てほしくないので。今どきの女子大生って感じのことが伝わったらいいなって」
これまでマッチした男性は10人。しかし、デートまで発展した人は0人。
初めてマッチしたのは、年上の20代社会人。何度もメッセージを重ね、いい感じに。すると、相手から「会いたい」と連絡が。
「会うからには車いすのことを伝えないと」と考えたセナさん。勇気を出して打ち明けると…
社会人「そんなに気にしないよ。これからもよろしくね」
しかし・・・このやりとりが最後。2度と連絡が来ることはなかった。
今度は、家族思いの大学生といい感じに。「この人ならきっと大丈夫」と思ったセナさん。電話で車いすのことを伝えると…
大学生「車いすか…そうだなぁ…」
悩むこと1時間。彼が出した答えは、「オレ、おばあちゃん子だから、考えが古くて…やっぱり無理」。
車いすに乗っていると告げると、気になる男性が次々と去ってしまう。
「私って、恋愛対象外?」
セナさんは、ずっと悩んでいる。「車いすっていうことが、恋愛をする上で本当に大きなハードルだなって。もう、どうしたらいいか分からないっていう気持ちですね」。
セナさんのモヤモヤについて、さらにみんなで語りあうことに。
セナ:車いすって言っていないときまでは、男性は「いやー楽しいわー」とか、「早く会いたいわー」ってすごい言ってくれて。普通の女子大生できてるなーって思ったりとか。
セナ:でも、やっぱり車いすって言うと、世界が一変するじゃないけど。全然うまくいかなくなってしまって。
あずみん:やっぱりまわりの友だちと比べちゃう?
セナ:そうですね。友だちが彼氏とスノボに行ってるのを見ると、やっぱりスノボができたり、彼女に彼氏が教えてあげるみたいなそういう光景が想像できて。
あずみん:車いすだと手とかつなげないじゃん。一緒に歩いててもさ。
まめん:「ここは車いす行けるのかな?」とか、「バリアフリーかな?」とか、常に引っかかってる。
まめんさんは、16歳のとき、頸髄(けいずい)を損傷。胸から下の感覚がなく、車いすで生活している。
まめん:障害があることで、手間をとらせてしまったり、時間がかかっちゃったり、もうそもそも行けないと。
あずみん:ぷっかちゃんはどうですか?
ぷっかさんは、脳性まひ。手足のまひと言語障害がある。食事や着替えなど、生活のすべてで介助が必要。
ぷっか:私は車いすなので、(相手は)全然恋愛とか考えてないと思うんですよ。
あずみん:うちら、男性から恋愛対象として見られてたんのかな、どうだろう?
まめん:私は、難しいなって思うところはあって。障害って、いつもマイナスで、困りごととして常にあるから。
あずみん:セナちゃんはどう?
セナ:私、友だちと相席居酒屋に行ったことがあって。一緒のテーブルになった男性に聞いてみたんですよ。「車いすってどう思う?恋愛対象として、どう思う?」って聞いたら、「うーん、やっぱりいろいろやってあげないといけないから、すごい大変だったり…難しいところだよね」って言われて。
やっぱり車いすの女性は恋愛対象になりにくい?ここからの話題は、「モテる女性」について。
あずみん:もともとモテる女性って何なんだろう?
まめん:モテる女性?
セナ:かわいくて、話が楽しくて、気遣いができる女性?
まめん:女の魅力っていうのは、こういうことだよねっていうのとか、モデルさんとかテレビに出てる人たちのイメージ、雑誌とか。
あずみん:すり込まれてるよね。
セナ:私は、おしゃれも、しゃべることも好きで、いまの自分は好きなんですけど、恋愛ってなったときに、やっぱり相手がいることだから、相手ありきで考えると、一気に自信がなくなってしまうことがあります。
おしゃれにこだわって、明るく気遣いができる女性になりたいと努力するセナさん。それでも、自分を恋愛対象として見る男性は少ないんじゃないかと感じている。
セナ:大学の男の子とかに「遊びに行こう」って誘われたりとかも何回かあるんですけど、「なんで私のこと誘ってくれるんだろう」って、思います。
まめん:「なんか、裏があるのか?」って、思っちゃうんだよねー。
セナ:「面倒で手間がかかる私を誘ってくれるのはなぜ?」って、思っちゃって。
あずみん:うれしいけどね。
セナ:そうなんです。すごい本当にうれしいけど。
どれだけ頑張っても恋愛は成就しない…そのモヤモヤを吐き出したセナさんの闇日記がある。
セナさんの闇日記
「できるかぎりかわいくしようと努力して、人間性も頑張ってあげる努力して、それでもやっぱり車いすの壁が高すぎて…どこまで人格者になったら『いいよ。』って言ってくれる人いるの?理想の自分になれない。近づけない感じがすごく不満で、気持ち悪くって、ストレスで、大嫌いで、吐きそうになる」
あずみん:つらいよね。
まめん:胸が痛くなってきた。すごく気持ちがわかるし、努力してるのも本当に伝わってくるんですよ。すごくかわいくしてて。
セナ:ありがたいお言葉をありがとうございます
ぷっか:車いすだからってひく人は、こっちから願い下げ。
まめん:ぷっかちゃん、いいね。
自分に自信を持てなくなる背景
<スタジオ>
サーヤ:「デート行けない」とか、「こういうとこ行けない〜」とかだけじゃない部分、心理的な部分もあるんだなって、初めて知ることいっぱいありました。
ここからは、障害者の恋愛や性について研究している、武子愛(たけしあい)さんもスタジオトークに参加。
レモン:セナさんが、車いすの壁が高すぎて、理想の自分になれないと。なんで、こんな気持ちになってしまうんですかね?
武子:以前、障害のある方の婚活イベントに関わってたことがあるんですけども、趣味に「料理」というふうに書いてきた方が多かった回があったんですよね。それってやっぱり男性へのアピールポイントだと思うんですよ。でも、(障害のある人が)実際、料理するのって大変じゃないですか、やっぱり段取りも考えなきゃならないし。理想の女性像を描いてしまっていて、女性障害者自身がつらくなっているという。
レモン:「料理」を書こう、という感じになっているっていうこと自体が、ジェンダー的にも、まだまだそういう空気感が社会のほうにあるってことかもしれませんね。
バリバラでは、恋愛の悩みについて、アンケートを実施。障害のある女性173人のうち、半数以上が「自分に自信を持てない」と答えた。
30歳 全身の筋力が低下する進行性の難病の方「さまざまな分野での経験のなさを勝手に感じてしまっていることで、女性としての自信が持てません」
27歳 精神疾患の方「自己肯定感が低く、気持ちが不安定なので、パートナーに釣り合う女性でいられるか、不安になります」
あずみん:恋愛って、相手ありきの話なんで、相手が受け入れてくれなかったら、そもそも恋愛に発展しないっていうところで、常に「自分の障害も含めて、相手が受け入れてくれるかな?」って、不安になるのかなって思いました。
相手に受け入れられるか不安で、自分に自信を持てない障害のある女性たち。玉木さんは、そもそも障害者と健常者が一緒に過ごす機会が少ないことが、バリアを作っていると感じている。
玉木:小さいときからみんな一緒の社会に生きとったら、「車いすやから」とか言わんでええのに。やっぱり恋愛の前に、人間関係の距離感っていうのが、見えてくるんかなって思って。
あずみん:いっしょに生きるっていうのがまだまだこの世の中では足りてない部分があるからこそ、バリアになってる部分ってやっぱりまだ多いんかなあって思います。
お悩み#2 -「私って、恋人というより“妹”?」
<VTR>
あずみん:次は、私の悩みなんだけど、恋人とつきあってから起きた出来事っていうのがあって。
あずみんは29歳、大阪でひとり暮らしをしている。毎日、朝と夜に計5時間、ヘルパーが来て生活の介助を受けている。身長は96センチ。ずっと、体型のことで悩んできた。
あずみん「かわいいとかもよく言われますね。マスコット的な、子どもに対してかける、かわいい。大人の、ひとりの女性として見てもらえるから、キレイのほうがいい。」
そんなあずみんに恋人ができたのは、5年前。相手はマッチングアプリで出会った同い年の男性だった。好きなゲームの話題で意気投合。障害があることを伝えても、すぐに理解してくれた。
あずみん「初めて会ったときも接し方がまったく変わらんかったし。腫れ物に触る感じでもないし。ふつうのデートみたいな感じにしてくれた。」
5回目のデートで、あずみんから告白!2人はつきあうことに。旅行したり、家でお泊まりしたり。キスやハグで愛を伝えあった。ところが、いつまでたってもセックスの話が出ない。気づけば7か月が過ぎていた。
あずみん「性の話、全く出なかったんで彼からも。どうやったらいけるかなとは考えようと思ってたし、(彼が)我慢してたりするんかなって思ってた」
あずみんは、思い切って彼に聞いてみた。
あずみん「セックスしてないけど、大丈夫?」
彼「…うーん…大丈夫」
3週間後、彼から連絡が。こんな言葉で別れを告げられた。
彼「やっぱり、妹にしか見れなくなった」
あずみん「一緒にいるうちに、女性としてというより、妹とか。恋人という感覚じゃなくなってきたと言われて。あぁ、何で妹になっちゃうんやろうって思いましたね」
あずみんの悩みについて、さらにみんなで語りあうことに。
セナ:妹として見られちゃうっていうのは、なんか女性として、「うっ…」て、なっちゃうなって思いますね。
あずみん:彼が、本当にセックスを私とできなかったからなのかが、いまだに分からないから、謎のままって感じです。
まめん:あずみんは別にセックスがなくても、このまま彼と続いていったのかな?もし話さなかったら。
あずみん:一緒に泊まったときも、添い寝とかはするんだけど、そういうことは別に私的にはしなくても、満たされとったんよ。私は満足できてるけど、向こうはもしかしたら違うかもしれないなって、思ったのがきっかけね。
ぷっか:ひとりでもんもんと悩むのもキツいよね。
まめん:きついよね。
あずみん:私、すごく彼の負担になってたんよ。当時、毎週泊まりに来てくれてたんだけど、ヘルパーさんを入れたくなくて。2人で一緒にいたいから、彼と一緒にいるときはヘルパーをキャンセルするってことがすごく多くって。そうなると必然的に私の介護は彼がずっと全部することになっちゃう。「できることはやるし、全然言ってね」っていうのは、毎回言ってくれてたんだけど。私自身は、「やっぱりそういうのも少なからず負担にはなってたんでしょ」って、思っちゃうし。
ぷっか:切ないなぁ。
まめん:切ないね。そんなに悪い関係ではきっとなかったんだと思うんだよね。
あずみん:障害が原因だったんだろうなって。心と心は通じ合ってたのに。
まめん:そうね、そうだよ。
あずみん:心では解決できなかったっていうのが、やっぱりいまだにちょっと悔いが残るというか。私、ずっと人のことを考えて、人のために自分はこうしたほうがいいって、ひくことが多かったから。そのときも相手を思って、相手が泣くから、自分はひいたほうがいいんだなって。
つきあってからの悩みの背景
<スタジオ>
サーヤ:障害がない人ですら、セックスレスとかで悩む部分もあると思うんですけど、さらに向こうも気を遣って、ちょっとそういう話題を振りづらかったりとか、こっちから(話すのも)たぶん相当勇気いったと思うんですよ。
玉木:自分にどうしても自信がないから、向こうが「ちょっともうごめん」って言い出したら、「あ、もうしゃあないんかなあ」って思っちゃう気持ちはよくわかる。
アンケートでも、つきあってからの悩みが多く寄せられた。
26歳 脊髄損傷の方「下半身の感覚がありません。行為中、体位を変更できず、失禁したこともあるため、相手を楽しませられているとは思えません。」
27歳 脳性まひで介助が必要な方「いつかパートナーに、『子どもの面倒を見ているみたい』と嫌がられないか心配です。24時間ヘルパーさんを頼むのも、ふたりの時間がなくなるようで不安です。」
武子さんは、つきあってからも、女性障害者にとって、さまざまな恋愛のハードルがあると語る。
武子:障害のない方同士でおつきあいするよりも、関係を深めていくのに時間がかかる。ひとつめが、身体的な制約ってありますよね。性的関係を築きにくかったりするのかなと。女性障害者のほうから、「私はしたいんだけど」って言うのも結構難しいですよね。
もうひとつは、介助をする人・される人っていうことになってくると、トイレ介助であったりとか、お着替えだったりとか、身体に触っていくわけですよね。日常的にプライベートゾーンに足を踏み入れていくので、性的対象にならなくなっていく、捉えにくくなっていくと思うんですよね。
”恋愛はプライベートな問題”のため相談できない
パートナーとの関係について、相談できる人がいない、そもそも相談できないという悩みも。「恋愛はプラベートな問題」という社会の認識が、語りにくくしていると武子さんは考える。
あずみん:私みたいな人がもっと相談できる場が増えてほしいなあと思いました。
レモン:そういうところがあれば、今やったら相談する?
あずみん:するかもしれないですね、逆に私のことをあんまり知らない人のほうが相談しやすいのかもしれない。身近な人よりは。
サーヤ:セックスに関して、よくパートナーとしっかり相談しろって言われるじゃないですか。でも、そんな簡単な話でもないと思うんですよね。
サーヤ:さらに、「自分はこういう障害があってこういうふうにしたい」とか、よりまた入り組んだ話になってくるわけじゃないですか。だから、本当にパートナー以外にも相談する人がいるっていうのは大事だなって思いましたね。
あずみん:「あ、当時こんなに私、傷ついてたんだ」って知ったっていうか。だから、自分がしんどいんだって思ってるときは、自分に対して優しくしてあげれたらいいなと思ったのと、そういうときにこそ、当事者と話すとか、話を聞いてもらうというのが、いちばんの薬になるのかなって思いました。
※この記事は2022年4月8日放送「女性障害者の恋愛のなやみ」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。