ゲーム王は俺だ! 第1回バリバカップ

NHK
2022年8月12日 午後5:06 公開

世界中で人気を集めるゲーム。国内のプレイ人口は5000万人を超え、老若男女、誰もが楽しむ国民的娯楽だ。しかし障害のある人たちの中には、「やりたくてもゲームを楽しめない」という声も多い。本当に障害者はゲームを楽しむことはできないのか・・・。そこで4人の障害者ゲーマーたちが登場。驚きのプレイを披露する。さらに、ゲーム愛、知力、身体能力、技術力、伝達力、5つの能力を兼ね備えた、バリバラ・初代ゲーム王が決定!誰もがゲームを楽しむには、どうすればいいか考える。

<番組の内容>

▶︎4人の障害者ゲーマーたち

▶︎ゲームをしたくてもできない障害者たち

▶︎【スゴ技部門】全盲ゲーマーの道を切り開く・なおや/片手のゲーム王子・ガーフィール

▶︎スゴ技 連発!白熱のゲーム対決

【デバイス部門】視線入力の魔術師・本間/寝たきりゲーマーのパイオニア・上虎

<出演者>

佐藤かよさん(モデル)

GENKIモリタさん(プロゲーマー)

なおやさん(全盲ゲーマー

ガーフィールさん(片手のゲーム王子)

本間さん(視線入力の魔術師)

上虎さん(寝たきりゲーマーの伝道師)

レモンさん(番組MC)

玉木幸則(番組ご意見番)

あずみん(番組コメンテーター)

4人の障害者ゲーマーたち

<スタジオ>

今宵、バリバラで負けられない戦いが行われる。

登場するのは、ゲームをこよなく愛する4人の障害者ゲーマーたち。

最強のゲーム王者に選ばれるのは果たして誰なのか。

審査員を務めるのは、玉木幸則、あずみん、そしてゲームを愛するモデル・かよぽりすこと佐藤かよと、プロゲーマー・GENKIモリタ。

ゲーム王は俺だ!第1回バリバカップ

ゲームをしたくてもできない障害者たち

<VTR>

今、世界中で人気を集めるゲーム。国内のプレイ人口は5000万人を超え、老若男女、誰もが楽しむ国民的娯楽だ。

しかし!

障害のある男性「ボタンを押しながら違うボタン押すのができない。」

障害のある男性「リズムゲーム、タイミングが難しい。(障害のある)手の問題。」

番組で障害のある人にアンケートをとったところ、その半数が「やりたいゲームがあるができない」と答えた。

“本当に障害者はゲームを楽しむことはできないのか・・・”

そこで立ち上がった、4人の障害者ゲーマーたち。

ある者はスゴ技を駆使し、またある者はデバイスを操り、ゲームを楽しむ姿を披露する。

ゲーム愛、知力、身体能力、技術力、伝達力、5つの能力を兼ね備えたゲーム王は、果たして誰なのか!

【スゴ技部門】全盲ゲーマーの道を切り開く・なおや/片手のゲーム王子・ガーフィール

<VTR>

なおや「くらえ、俺の昇龍拳!よっしゃ~!」

部屋で1人、何かをつぶやくこの男。スゴ技部門に出場の、なおや。

スタッフ「こんにちは、何してたんですか?」

なおや「今、ストリートファイターのコンボ練習をしていたんですけど…」

なおやは、全盲で目が見えない。しかし、画面が見えなくてもゲームができるという。

スタッフ「見えていらっしゃらない?」

なおや「はい。完全に見えていらっしゃらないです」

スタッフ「後ろ向いてできたりするんですか?」

なおや「斬新なアイディアですね」

スタッフのリクエストに応えて、さまざまな角度でプレイするなおや。でも、どうやってプレイしているの?

なおや「イヤホンに音だけ聞こえればできるので、それでやっていました。」

全盲ゲーマーの道を切り開く!なおや~。

アピールポイントは「身体能力」。

なおやがプレイするのは、さまざまなキャラクターが技を繰り出して戦う格闘ゲーム。キャラクターが移動する音や、技の効果音など、ゲームから出る音を聞き分け、プレイしている。

なおやが金髪の男性キャラとして戦う、この場面。対戦相手がジャンプして、なおやの後ろに回り込もうとする。次の瞬間!なおやが攻撃を繰り出した。

この間、1秒足らず。なおやは音だけを頼りに複雑な判断を行っていた。相手がジャンプした際の音を聞き、なおやの上方向にジャンプしたと判断。相手の落下のタイミングを音の強弱から予測し、攻撃をヒットさせた。

なおや「勝手に指が動く感覚です。見える人と見えない人との格闘ゲームのあり方って違っていて、戦い方が違うんでしょうね。」

今なおやは、ゲームで勝ち負けを競い合う競技、「eスポーツ」の選手としても活躍している。最近では、なおやに続く視覚障害のあるゲーマーが増えるなど、すそ野も広がり始めている~。

なおや「“バリアを楽しむ=ゲームを楽しむ”。俺が一番楽しんでいるんだぜ・・・と伝えたいと思います。だ、大丈夫!?」

続いては、最年少の出場者、ガーフィール。去年、高校を卒業して以来、ひとり暮らしを満喫中。

ガーフィール「全然長さが違うんです。こっちが肘が伸びないので。だいぶ長さが変わっています。(右の)手首は全く動かないです。プランプランの状態。」

生まれたときから、左手の肘から下の神経がないというガーフィール。生活は右手だけで行っている。そしてこの右手こそ、スゴ技ゲーマーを支えるゴッドハンドだ。

片手のゲーム王子!ガーフィール。

アピールポイントは「技術力」。

ガーフィールがその技術を披露するのは、世界で1億人以上がプレイする、今人気のシューティングゲーム。現れる敵を次々と倒していくガーフィール。そのスゴ技とは~?

ガーフィール「人さし指で左スティック、キャラクターコントロールをして、親指で視点移動、右スティックでやって・・・」

なんと、右手だけでコントローラーを使いこなしていた。

すごさが分かるのが、この場面。一見ただの打ち合いにも見えるが・・・、左右に小刻みに動き、敵の弾をよける動作。そして、動き回る敵に狙いを定めて撃つという2つの動作が、複雑に組み合わされている。

本来であれば、両手を使っても高度なテクニックが必要・・・。しかし、ガーフィールは右手だけを巧みに操り、意のままに操作する。

以前、こうしたスゴ技の動画をSNSで投稿したところ、世界中から賞賛の声が。

スタッフ「両手あったらもっと楽だなと思う?」

ガーフィール「ないですね。今さらになってそうかもしれないですね。この操作方法しかやってこなかったので。」

どんなゲーム機でも、右手だけですぐさま使いこなすことができると豪語するガーフィ-ル。そこで、最新のゲーム機を渡してみると・・・。

ガーフィ-ル「あれ? 届かないですね。手が届かないので・・・」

考えること3分…

ガーフィ-ル「この状態なら多分…。近づいたので、どっちも使えるので、練習すればなんとかできそうですね」

とどまることを知らない、ガーフィールの技術力!

ガーフィ-ル「僕と同じような障害を持っている人が(ゲームしているのを)を見て、真似してくれたらうれしいかなって。」

スゴ技 連発!白熱のゲーム対決

<スタジオ>

モリタ:やっぱ、プロゲーマー視点で言うと、なおやさんに関しては、あれを“音だけ”で場所が分かって、(技を)打てるのもすごい。

佐藤:いや、完全にスゴ技2人でしたね。

さあここからは、審査員へのアピールタイムよ~。まずは佐藤かよさんに、なおやさんのプレイスタイルを体感してもらうわ。

レモン:さあ準備はいいでしょうか。それではレディーファイト!

≪格闘ゲームをプレイする、なおやと佐藤かよ≫

佐藤:勝ったけど全然喜ばれてないこの空気感(笑)。すごい気になったのは、その音だけでプレイするときの距離感。私(のキャラ)がどれくらいの距離にいるのかっていうのは把握されてるんですか?

なおや:飛び道具使いながら相手のガードの位置とかで把握していますね。

佐藤:へえ~、その技の何となくの距離感っていうのをインプットして、対決する感じ?

なおや:はい、そうですね。

お次は、ガーフィールくんとGENKIモリタさんによる早撃ち対決!

1分間でどれだけ的に当てられるかを競うわよ。まずはGENKIさん!

レモン:さあそれでは早撃ちスタート!

≪早撃ち対決をする、ガーフィールとGENKIモリタ≫

GENKIモリタさんの結果は37ヒット!

ガーフィールくんの結果は67ヒット!

見事ガーフィールくんの勝利よ~。

一同:オー!

レモン:すごい! ええ。

GENKI:めちゃめちゃ早い!

ガーフィール:ありがとうございます。

レモン:GENKIさん、ガーフィールさんの片手でのプレイご覧になっていかがですか?

GENKI:いやどうやってんのかなって。シンプルに思います。両手でも難しいんですよ、当てるの。

レモン:ところでお二人は、どうしてこんなにゲームにハマったんですか、なおやさん?

なおや:やっぱり、こう、映像を見ずに音だけでゲームをやっているっていうところが逆に楽しい。

レモン、あずみん:あー!

なおや:「見えてないのにこんだけ出来るのすごい」って言われることが多いので。

レモン:あーあーあー。

なおや:自分が見えないこと、バリアそのものを楽しむっていうのが魅力だと思ってます。

レモン:ガーフィールさん、ズバリ聞くけど。「くそ~、悔しいな、自分は片手やからや」っていうようなところはないの?

ガーフィール:ないですね。結構もう、片手でここまで操作できるようになったんで。これでもう負けたら、片手のせいじゃなくて、僕の頭の回転とか、そっちの方かなって思ってきちゃいますね。

あずみん:わー、かっこいい。

レモン:さぁ! 続いては、デバイス部門です。VTRどうぞ!

【デバイス部門】視線入力の魔術師・本間/寝たきりゲーマーの伝道師・上虎

<VTR>

デバイス部門。最初に登場するのは、本間一秀さん。在宅でプログラマーをしている。

本間「ここが作業場で、ふだん仕事とかゲームをしているところです」

脳性まひがある本間さん。最近ハマっているのは、レーシングゲーム。

本間「僕、手が不自由で、普通の一般的なゲームコントローラーは操作ができないんです」

そこで本間さん、なんとコントローラーを使わなくても楽しめる、ある方法をみずから開発してしまった~。

それは、視線入力。目の動きだけで、自由自在に操作する~。

エントリーNo.3、視線入力の魔術師、本間~。

アピールポイントは「知力」。

本間さんが開発した視線入力の方法。モニターの下側に取り付けられている、カメラが本間さんの目の動きを捉え、ゲーム機に信号を送っている。

ゲーム画面には、カメラを経由した本間さんの視線が「緑の点」で表示される。さらに画面には、コントローラーの代わりになる、7つの操作パネルを配置。本間さんは、緑の点を操作パネルに合わせることで、思い通りに操作して楽しんでいる。

でも・・・

本間「最近肩とかこって首とか痛くなってきたので、ちょっとセーブするように、気をつけるようにしています」

でもやっちゃう?

本間「やっちゃう。やりたいんだよね~」

この日は、職場のオンラインミーティング。

実は、本間さんが開発した視線入力のソフトは、2年前、仕事の一環として開発されたもの。1500人にのぼるユーザーたちの声を受け、日々、改良を加えている。

勤務先社長「間違いなく、なくてはならない存在だし、頼りになるプログラマー。」

今本間さんは視線入力のソフトを改良して、音声でも操作できる仕組みを作ろうとしている。

本間「止まれ。止まれ。」

本間「健常者と対戦しても勝てるような操作ができるソフトにしていきたいと思いますね」

最後に登場するのは・・・無数のデバイスに囲まれたこの男。上虎~。

筋肉が徐々に衰えていく難病で、24時間介護を受けている。動かせるのは、手足の指先などわずかな部分だけ。その指先と唇を駆使してゲームを楽しむという上虎。

欠かせないのが・・・壁一面に張り巡らされたデバイスの数々。まるでデバイスジャングル。

上虎「ゲームを操作するための機械で、これがないと僕の場合はゲームができないので」

エントリーNo.4寝たきりゲーマーのパイオニア・上虎。

アピールポイントは「伝達力」。

上虎「コントローラーフル装備で。」

ヘルパー「フルで。わかりました。」

上虎「もうちょい左。」

ヘルパーとの息の合った連携プレイで取りつけられていくデバイスの数々。すべて、市販の機器をカスタムしてあみ出した、上虎オリジナルのコントローラーだ。

今はまっているのは、ゾンビを倒すアクションゲーム。

上虎「攻撃は左クリックでやっています。」

右手の人さし指を使って射撃。ほかにも、右手だけで10種類もの操作ができる設定だ。

上虎「現実世界では体が上手く動かないけど、ゲームの中では自由に動けるので。」

子どもの頃からゲームが大好きだった上虎。しかし、病気の進行で20代半ばで寝たきりに。

ゲームを諦めきれなかった上虎は、大学で学んだデジタルの知識を生かして一念発起。もはや、本人以外には理解できないほどのシステムを構築。

さらに4年前には、ゲームのブログを開設。寝たきりでもゲームを楽しむ方法を発信している。

上虎「誰かの参考になればいいかなと。僕が死んだら誰にも伝わらないので、残しておくべきかなと思いました」

<スタジオ>

佐藤:2人の「ゲーム愛」があふれている。2人の持ってる技術とか開発能力は、世界に求められてると思いました。

ここからは、審査員へのアピールタイムよ~。本間さんは今、視線入力を使ってあるものを操作しているんだって~。それは~?

本間:ドローンです。ドローンの操作って、元々ゲームの操作と似てるところがあるんですよ。

本間:視線入力ソフトを使っているユーザーから、これを使ってドローンも操作してみたいという要望があったんですよ。それで(プログラムを)作ってみました。

本間:新しい分野をどんどん切り開いて開発していくことを、僕自身楽しんでいます。

レモン:続いては上虎さん。何種類もゲームをやられてきたとお伺いしていますが。

上虎:50種類くらいは。

レモン:50種類!

あずみん:えーすご〜。

レモン:いちいち設定とか大変なんじゃないんですか?

上虎:けっこう時間がかかります。

あずみん:どれぐらいかかるんですか?

上虎:早い時で、2〜3日とか。

あずみん:えー! 早くて2〜3日!?

レモン:設定だけで早くて2〜3日ですか!?

佐藤:やばー!

上虎:はい。

ここで、玉木さんから障害者ならではのある悩みが。唯一楽しめるというマージャンゲームについて。

玉木:オンラインのやつでやるんやけど。対戦はね、ようせんのよ。(間違えたら)下手くそや思われるん違うかなって。“こいつ(マージャン)分かってへんなぁ”と思われたり。

あずみん:でもわかる。

玉木:相手の顔が見えないゲームの世界っていう、皆がフラットになれる空間やって思っている人も多いと思うけど、裏を返せば、みんながみんな自分と同じじゃないっていうことも、ちゃんと考えとってほしい。

レモン:ひょっとして俺、今対戦してる人が、障害がある人で、こんな相手になっていてって、繋がってるやん。こんな近くにおるやんっていうことが、ちょっと届いたら嬉しいですね。

佐藤:私がゲームが好きな理由が、やっぱ性別とか国籍とか年齢とか関係なく戦いあえるというか。健常者とか障害のある方とか関係なしに、交わって、(ゲームの)イベントとかもどんどんあったら楽しそうだなぁって。

レモン:かよカップがそろそろ始まるっていうことですね。

佐藤:やっちゃいますか? かよカップ(笑)

一同:(笑)

玉木:今日は、ゲームの話をやってきたんだけど、実は、それの前提としてね。誰でも好きなことを楽しむ、それを探求する権利があるっていうことやから、諦めんとって欲しい。

レモン:ゲーム王は俺だ!第1回バリバカップ。果たして、初代王者は誰か!

佐藤:初代ゲーム王者は・・・上虎さんです。おめでとうございまーす!

佐藤:おめでとうございまーす。皆さん本当に素晴らしいゲーマーで、僅差ではあったんですけど。技術もゲーム愛も、すべて素晴らしかったので、今回ゲーム王ということで、おめでとうございます!上虎さん。

上虎:まさか自分が選ばれるとは思ってなかったので、びっくりしています。

レモン:それでは、またお会いしましょう! さようなら〜。

※この記事は2022年8月5日放送「ゲーム王は俺だ!第1回バリバカップ」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。