子どもの声を聴いてみよう

NHK
2023年4月14日 午後11:00 公開

「塾に行きたくない」「スマホの利用時間を増やしたい」といった何気ない子どもの声。でもその声を聴かずにいると、いじめや虐待など本当に困ったときに子どもがSOSを出せなくなることも・・・。施設で育った若者たちが語る「本音を聴いてもらえなかった経験」とその影響とは?国も後押しする、声を聴くための新たな取り組み「子どもアドボカシー」の活動に密着!どうすれば子どもの声を聴き、権利を守ることができるのか考える!

<番組の内容>

▶︎「子どもの声を聴く」ってなんで大事なの?

▶︎児童養護施設での経験

▶︎「聴いてくれている」と感じられないもやもや

▶︎子どもアドボカシーの取り組み

▶︎子どもが助けてと言える環境を作るために

<出演者>

大島美幸さん(森三中)

谷口由希子さん(名古屋市立大学大学院 准教授)

ひろきさん(仮名/児童養護施設で生活)

渡辺睦美さん(児童養護施設での生活を経験)

三好史子さん(身体障害児が暮らす施設での生活を経験/脊髄性筋萎縮症)

山下大希さん(身体障害児が暮らす施設での生活を経験/脳性まひ)

木戸勝也さん(NPOで活動)

レモンさん(番組MC)

玉木幸則(番組ご意見番) 

あずみん(番組コメンテーター)

<VTR>

きょうは、子どもの声を聴いてみよ~!

質問! 大人に話しても、聴いてもらえないことってありますか? 

男子高校生「塾に行かされてたんですけど、行きたくないときには行けない」

塾に行きたくなーい!

女子高校生「(髪の毛を)結びたいけどね」

女子高校生「ボブで(髪の長さが)中途半端なときがあって、ハーフアップがちょうどいいんですけど、それも(校則で)できなくて、ちょっと困ってました」

好きな髪型で、学校に行きたーい!

小学生「スマホの利用時間をもう少し増やしてほしい」

スマホを使う時間を増やした~い!

大人の皆さん、子どもたちの声、聴いていますか?

「子どもの声を聴く」ってなんで大事なの?

<スタジオ>

レモン:今日のテーマは「子どもの声を聴いてみよう」。ゲストは7歳の息子さんと一緒に暮らしてる大島さん。息子さんの声、聴けてますか?

大島:聞いてるつもりではあります。「洗い物してる、掃除してる、うん、なんとかだー」っていう。「ちょっと待ってて、後で聞く」って言って聞いてるんですけど。

大島:でもさっきもねVTRに出てた、「塾に行きたくない」とか「スマホを自由に使いたい」とかうちの息子だったら「課金したい」とか。「ゲームの課金したい」とかそういうことはこれわがままっていうか欲望ですよね。

たしかに、大人からすると「そこまでして聴かなきゃいけないの?」と思ってしまうことも。でも、子どもの権利について研究する谷口由希子さんによると、わがままに思える子どもの声であっても、話を聴くことは実は大事なことだという。

谷口:「わかったわかった」とか、「あとで聞くから」っていうような反応は心で聞いてもらえてるっていうふうに子どもが感じにくいんですね。こういうことが積み重なると、子どもは「もうどうせ言ってもしょうがないんだ」というような形で諦めてしまうようなことがあるんです。    

谷口:大人に認められないというような経験が積み重なってしまうと、例えばいじめとか虐待とかとても深刻な問題が起きたときにも、子どもは大人に相談してもいいかなということをためらってしまうことがあるんですね。それでひとりでSOSを出せずに悩んでしまうということがあります。    

そういう事態にならないためにも大切なのが、子どもの意見を尊重し、話を聴くこと。実はこれ、長年、国際条約でもうたわれてきたグローバルスタンダードな子どもの権利。でも日本ではなかなか浸透してこなかった。

そんななか、ことし4月に施行されたのが「こども基本法」。法律では「すべてのこどもに意見を表明する機会が確保されること」。そして「その意見が尊重されること」が、大切な理念として掲げられている。

レモン:さあ、子どもの声ちゃんと聞いていかなあかんなと改めて思いましたけれども、中でも今回バリバラが注目するのが、施設に暮らす子どもたちの声なんですよね。

あずみん:親と離れて暮らす環境で、声を聞いてもらいにくい状態にあると言われている、その実情を取材しました。

児童養護施設での経験

<VTR>

訪ねたのは、福岡県にある小規模の児童養護施設。

ひろき「いま僕の部屋はここです」

ひろきさん(仮名)、19歳。生後まもないころから施設で育ってきた。

ひろき「小学生のとき(にいた施設)は大きいところなんでこんな感じです」

ひろき「これ食堂です」

ディレクター「何人くらいで生活していたの?」

ひろき「全部で50から60(人)くらい。このときは結構多くいたんじゃないかな」    

児童養護施設とは、親の病気や貧困、虐待などを理由に、保護が必要な子どもたちが暮らす場所。

ここで暮らす子どもは、全国におよそ2万3000人いる。

ディレクター「中を案内してもらってもいいですか?」

ひろき「こっちがリビングになります。これが朝ごはんです」

番組スタッフ「まだ食べてないの?」

ひろき「食べてないです」

19年間、施設で暮らしてきたひろきさん。施設のスタッフに、自分の本音を聴いてもらうのは難しいと感じてきた。

ひろきさんが中学生のころのこと。仲のいい友達から「家に泊まりに来ない?」と誘われた。でも、施設のスタッフに伝えると…

ひろき「ルールみたいなのでダメってなったりとか…自分たちが預けられているとか、責任が施設にあるっていうのはよく分かるんですけど、結局、高校を出るまで一度も泊まりにいくことはできなかった」

ほかにも、施設の人に相談しても、スマホを自由に使えないこともあった。自分の希望を伝えても、手ごたえが得られない。そんなもやもやが、ひろきさんの中にたまっていった。

ひろき「聴いてくれてないっていうか受け流されているのもわかるし、ちょっとは向き合ってほしいなっていうのはありました、ずっと…」

ひろきさんを幼いころから見てきた、スタッフの荒巻さんは…

荒巻「日常の生活に流されてしまって、それぞれの話をゆっくり聴く時間はなかったなって 当時振り返ってですね。すごく難しいなって。施設は施設の枠というかルールもあって、そこと子どもが納得できるような説明っていうのもできていなかった」

ひろきさんは、そんな施設側の事情も敏感に感じ取っていた。

ひろき「施設の中の人は、(職員の)忙しさがわかるので、(施設の人が)ゆっくり話を聴けるかっていわれると、やっぱり忙しい部分はあって。声が届きにくい、出しにくい状況ではあったので」

ひろき「やっぱり言っても変わらないなって思うと、やっぱり言う気もなくなるというか、話す気もなくなるので。(話をするのを)諦めちゃいますね」

ことしで二十歳を迎えるひろきさん。自分の気持ちを言葉にして伝えるのが苦手だという。

ひろき「自分のことになるとちょっと話せない。結構影響はしていると思う。なかなか弱いところを伝えられないというか、頼れないというか」

「聴いてくれている」と感じられないもやもや

<スタジオ>

レモン:いやーよくね、出てくださいました。ひろきくん。大島ちゃんどうでした? 

大島:たわいないことをしゃべれる人って、信頼関係にそこからつながってきてたんだなっていうのを、自分もそうでしたしなんかやっぱり苦しいなと思いました。

あずみん:わかる~。

レモン:なるほどね~。

あずみん:ここからは、児童養護施設や里親家庭で暮らした経験があり、現在は施設などで暮らす子どもの権利擁護に関する情報発信などをされている、渡辺睦美さんにも加わってもらいます。渡辺さん、よろしくお願いします。

渡辺:よろしくお願いします。

レモン:みんなから、むっちゃんって呼ばれてるらしいね。

渡辺:むっちゃんって呼んでください。

むっちゃんの話を聴いてもらえなかった経験は、高校卒業を控え、施設を出なければいけないというタイミングで起きたそう。

渡辺:不安な気持ちがなかなか話せなかったり、自分よりもケアの必要な子たちと一緒に私は共同生活をしてたので、その子たちの進路の方がすごく、先生たちも大変で、どうにかしなきゃみたいなのが結構強くって。自分が(施設を)出た後の不安がなかなか伝えられなくて、ずっとモヤモヤしたまま18歳を迎え、そのまま3月なんで(施設を)出るみたいな感じでした。

レモン:なるほどね。

児童養護施設などで暮らしている子どもたちの「話を聴いてもらえなかった」という経験。厚生労働省では2年前、児童養護施設などで暮らしている子どもたちへのヒアリングを行い、こんな声が寄せられた。

外出するときにアクセサリーをつけたかったのに聴いてもらえなかった。

意見箱はあるけど、1階の職員室の近くにあるからそこまで行かないといけない。

自分に関わるルールを作るときには意見を聴いてほしい。大人が仕事しやすいようにルールが変わる。

レモン:むっちゃんこれ気持ち分かりますか?

渡辺:そうですね。どれも気持ちがわかります。自分に関わるルールをってところも、なんか自分がこういうふうに、今のうちにやりたいみたいなのがいっぱいあったとしても、「いやいやそれは周りの子たちに説明がつかないからできない」とかっていうふうに言われたりとか、結局は集団生活になるので、その集団をどうやって保って生活していくかみたいなところにどうしても視点がなりがちなので、なかなかその子自身に特別なルールっていうのは作るのが難しいっていうふうによく言われていましたね。

レモン:いや、谷口さん。すべての施設がこうだったとは当然思いませんけど、でもこうなってしまう事情というのも、当然あるんでしょうね。

谷口:ひとつは施設の職員さんや、施設自体をとりまく社会構造上の問題があって、職員さんたちも子どもの話を聴きたくないなんて思ってないんですよね。ただ、忙しさや他の仕事に追われたりして、結果的に子どもの声を十分に受け止めることができないというような問題があるのかなと思います。

玉木:でも人手不足とか構造上の問題があるから、子どものことをないがしろにしてええっていうことじゃないっていうことは、ちょっと、押さえときたいなと。

レモン:ところで玉木さんも子どもの頃、なんと同じような経験をしたことがあるという。

玉木:肢体不自由児の施設やったんやけど、やっぱしさびしい思いはいっぱいしてて。たとえば月2回しか親に会えへんかったけど、電話できたかっていうと電話もできんかったし。

あずみん:ということで、ここからは身体障害児の施設で暮らした経験のあるお2人にリモートで加わってもらいます!

レモン:はーい!まずは三好さんよろしくお願いしまーす!

三好:よろしくお願いしまーす。

三好史子さんは脊髄性筋萎縮症で、24時間の介助を受けながらひとり暮らしをしている。

6歳のときから15年間暮らした身体障害児などが暮らす施設で、大人に声を聴いてもらえなかったという経験がある。

三好:私がいちばんつらいなと思ったのは、トイレのことで、トイレ介助が必要なんですけど、トイレに行きたいと伝えても、人手が少ないときとか忙しい時間帯だと、今ちょっと無理とかって言われて、数時間待つときもときどきあったりしました。

レモン:えー、ちょっと大島ちゃんどうですか?

大島:これは、待ってって言えない自然現象ですよね。

レモン:その経験で、やっぱり今も影響しているっていうこととかあります?

三好:今はひとり暮らしで、家にヘルパーさんに来てもらってるんですけど、何かを頼むときに、相手がどう思うかっていうか、顔色が気になるというか。

レモン:あ〜。

三好:ということはあったりしてます。こうしたいっていう思いを強くなんか持てなかったり、言うのが苦手だなと思ったりします。

続いて、山下大希さん。脳性まひがあり、幼いころから18歳まで、身体障害児などが暮らす施設で生活していた。

山下さんの趣味は、音楽。そのことで、施設の人に声を聴いてもらえないと感じた経験があった。

山下:CDを買いに行きたくて、1週間前から外出届を出さないとダメで。すぐ行けなかったんですね。当時はCD を買いに行きたくても、「順番やから待ってください」っていうことを言われて、自分の番がなかなかこなかった感じですね。

玉木:僕もね、これ経験してるからわかるんやけど、大人が「これはルールやから」って一方的に言っちゃうと、子どもはそれ以上に、もうなんにも言えなくなってしまうってことがあるんよね。そういうのが減るだけでもずいぶん違うと思うんやけど、きちんと子どもと確認しあいながら「このルールはこうなんやけど、どう思う?」とかって、やりとりがすごい大事なことなんかなって思った。

レモン:さあ!ここからはどうすれば子どもの声を聴けるようになるのか、みんなで考えていきたいと思います!

あずみん:実は今、子どもの声を聴くために注目されている取り組みがあるんです。それがこちら!子どもアドボカシー。

レモン:アドボカシー。

子どもアドボカシーとは、施設で暮らすなど、自分で声をあげるのが難しい子どもの話を聴き、意見や要望を伝えるサポートをする取り組みのこと。

例えば、施設のスタッフなど、身近な大人に言いたいことがあるけど、納得するまで声を聴いてもらえず困っている子どもがいるとき。その子どもをサポートするのが、「アドボケイト」と呼ばれる人。専門的な知識をもったアドボケイトの大切な役割は、子どもの立場だけに立って、話を聴くこと。子どもが望めば、一緒に伝えたり、意見を代弁したりすることで、その声を理解してもらえるよう、周りの人に働きかける。

あずみん:それでは、実際のアドボケイトの取り組みとはどんなものなのか、行政とNPOが連携した取り組みの様子を取材してきました!

子どもアドボカシーの取り組み

<VTR>

福岡にあるNPOでアドボケイトとして活動する、木戸勝也さん。あだ名は、かっつん。

木戸「未就学児の子たちもいるので、難しい漢字とかじゃなくてわかりやすい感じで、呼びやすい感じの名前をつけて呼んでもらうようにしてもらっています」

ディレクター「かっつんって呼ばれているんですか?」

木戸「そうですね」

福岡市からの委託を受けて、去年5月から、毎週 市内の児童養護施設を訪問している。木戸さんがいるのは、施設内にあるフリースペース。ここで、遊びなどを通して子どもたちとの信頼関係を築いていく。その様子を、今回、特別に見せてもらった。

子ども「かっつーん」

木戸「(施設の)中ではこうやってわちゃわちゃしないの?こうやってみんなで話したりとかあんまりないの?」

子ども「するけど、うるさい」

木戸「そうね人数も多いしね。全員おるもんね」

子ども「騒ぎたい時期の子たちが多いし」

木戸「あ~なるほどね」

一見すると、何気ないやりとり。でも、そのひと言ひと言を聴くことで、子どもたちの本音に近づけるという。

木戸「魔法使えるようになったら何がしたい?」

子ども「モノを出したい」

木戸「例えば?」

子ども「ドーナツ」

木戸「ドーナツ? そんなにドーナツ好きなんや」

子ども「弟が好き。俺も好きやけど」

木戸「なるほどね 2人とも好きやからってことね」

「弟」という言葉を聞いた木戸さんは「弟についてもっと話したいことがあるのかもしれない」と受け止めた。

木戸「内に思うことがあるけど外には出していない。言いたいけど言わないのか。やっぱり自分は言いたくないからそっとしておいてほしいってことなのか、でも本当にそっとしてほしかったら隠してることを言わなければいいので。だからどこかちょっと扉を開けようとか閉めようとか揺れてるのかなというところもあったので」

木戸「もしなんかお話したいことがあったら、ゆっくりお話聞けるんで。気が向いたらまた来て」

子ども「はーい」

子ども「私も来たい」

ここに来れば、ただ話を聞いてくれる人がいる。

木戸「“いつでも来ていいんだ”って“好きなことをやっていいんだ”とか“話していいんだ”って感じてもらえる、そういう場をつくらなければいけないんだと思ってここはやっています」

子どもたちとの信頼関係ができたら、次のステップは、1対1で話を聴くこと。

施設の一角に設置されたポスト。ここに、子どもからカードが投かんされると、アドボケイトと2人きりで話ができる仕組みだ。

一体、どんなことが話し合われるのか?よくあるエピソードが、こちら。

「施設の門限を延ばしてほしい」という、子どもからの声。それに対してアドボケイトは、どうして門限を延ばしてほしいのか子どもの話を否定せず、時間をかけて聴き、意見をまとめるサポートをする。

ちなみにここでの話は、施設のスタッフなど、別の人に勝手に話さないことが、子どもとの約束。その上で、もし誰かに伝えたい場合には、次の方法がある。

1つは、アドボケイトが付き添い、子ども自身が施設のスタッフに「門限を延ばしてほしい」と伝える方法。もう1つは、アドボケイトが子どものかわりに施設のスタッフに伝える方法。

大事なのは、どんな結果になったとしても、子どもが納得できるまで、声に向き合うこと。

木戸「自分(子ども)が言いたいとき、ひとりで言うのもなんだから、ってちょっと呼んでもらって一緒に言える。そのくらい身近にある存在だと思って僕らを使ってもらえたらうれしいなと思います」

木戸さんが活動する福岡市では、国のモデル事業として、去年から子どもアドボカシーに取り組んできた。福岡市では、現在 児童養護施設など、5か所で行われているこの取り組みを、さらに広げていきたいと考えている。

福井「まだ(アドボケイトが)行けていない社会的養護関連の施設、障害児施設とか母子生活支援施設は訪問の対象になってくるかなと思います。その先に、社会的養護にいる子どもたち以外の子どもたちの声っていうのも当然拾っていく」

福井「子どもたちが言いたいことを言える社会になっていく必要があると思うので。そこは将来の目標ではあります」

子どもが助けてと言える環境を作るために

<スタジオ>

レモン:大事なのは、子どもの願いを全てかなえましょうってことではないんですよ。誤解のないようにね。たとえかなえられなくても、子どもがちょっと納得するっていうか、折り合いをつけられる場所、着地点、そういうところまでちゃんと話し合うっていうね。解決策を一緒に考える姿勢のことですよね。これが大事なんでしょうね。渡辺ちゃん、どうですか、この取り組み?    

渡辺:私がまだ施設にいたころだったら、第三者の大人がこう入ってくれるっていうのは、すごくあってほしかったなっていうのは思いますね。

レモン:これまでずーっと子どもたちにね、寄り添ってきた施設の側からしたら、こういう人がいきなり入ってきたら、ちょっと僕やったら、「えぇ〜?」って思うんちゃうかなって、ぶっちゃけ思うんですけどね。

谷口:正直、施設の職員さんたちからは、「自分たちも一生懸命声を聞いているのに」という声が聞かれることはあります。

谷口:職員とアドボケイトというのはやっぱり役割が違うんですよね。アドボケイトというのは職員ではなくて、専門的な教育を受けた第三者としての役割がある。

渡辺:第三者にしか言えないことって、施設にいる子たちはいっぱいあるんですよね。例えば、「親に会いたい」っていう気持ちもあれば、「親と暮らしたい」っていう気持ちもあれば、でも「今この安定した生活を手放したくない」っていう思い、両方あったり。そういうときに、施設の先生に、「親のところに帰りたい」って言ったら、安定した生活をすぐ手放さなきゃいけないんじゃないかみたいなところがあって、なかなか言えない。第三者の人たちで、そういうのになっていただけると、子どもたちの本音って言いやすくなるし、自分の本当の気持ちってどんどん認識していけるようになるんですよね。

レモン:うんうん。

渡辺:そうしたときに初めて自分がどう生きていきたいかっていうのが見えてくる、どうなりたいのかっていうのが見えてくる。その積み重ねなんですよね。

一方で、この取り組みを普及させるには、まだまだやらなきゃいけないことがある。ひとつは専門性のある人材を育成していくこと。もうひとつは、アドボケイトを受け入れる施設などに、取り組みへの理解を広げていくこと。

玉木:今回いちばん大事なのは、本来子どもの権利って、施設とか障害とか関係なく子どもみんなにあるもんなんよね。すべての子どもが、ちゃんと自分のこと言うていいとか、しんどいときは「しんどい」とか、助けてほしいときは「助けて」って言っても大丈夫やでっていうことを子ども自身が、当事者として権利を主張できる世の中に、変わっていかなあかんっていうことで。

レモン:大島ちゃん、どうでした?

大島:これセミアボドケイター(※)はどうでしょう? みんなわかっていれば朝の通学時とかに声がけとか。(※:正しくは「アドボケイト」)

レモン:どうですか?

谷口:(笑)正直初めて聞きましたけれども、サブアドボケイトというのもアドボケイトの導入が進んだあとにまた広がっていくと、さらに子どもの声を聞く大人が出るかもしれないですね。

大島:みんな大人がなったらすごくいいなと思います。

バリバラ、きょうはここまで。子どもの声、みんなで聴いていこうね~。

※この記事は2023年4月14日放送「子どもの声を聴いてみよう」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。