女性障害者の体と性のなやみ

NHK
2022年4月15日 午後11:00 公開

これまでほとんど語られてこなかった、女性障害者の体と性の悩み。

今回、体に障害のある女性たちが集まり、ふだんは言えない悩みを語り合いました。

<番組の内容>

語られてこなかった体と性の悩み

セルフプレジャーって、何?

バリバラ女子会#1 セルフプレジャーの悩みを語ろう

お悩み① セルフプレジャーが年々しづらくなっている

お悩み② 介助が必要だけど頼めない

「相談できない・・・」語りづらさ

どうして語りづらい?女性×障害者のバリア

バリバラ女子会#2 悩みに向き合ってくれる助っとが登場!

障害のある女性が自由に性を選べるために

<出演者>

サーヤさん(ラランド お笑い芸人)

坂入悦子さん(身体障害者の性について研究)

レモンさん(番組MC)

玉木幸則(番組ご意見番)

あずみん(番組レギュラー)

語られてこなかった体と性の悩み

<VTR>

参加者:あずみん(捻曲性骨異形成症)、ぷっかさん(脳性まひ)、ゆいさん(脊髄性筋萎縮症)、まめんさん(けい髄損傷)

あずみん:なんか悩みとかあるかな?みんな。

ぷっか:生理のときに、ナプキンの位置が(ヘルパーに)伝わりづらくて。

あずみん:たしかに位置って自分で調整できひんやんか、うちらって。

ゆい:生理が多いときに(ヘルパーに)ナプキンを変えたりとかしてもらってるときに、手についたりとかしないかなっていう、大丈夫かなみたいなのは思いますね。

まめん:私、脱毛を始めたんです最近。VIOの脱毛をしたんです。

あずみん:めっちゃいいな、うらやましい。

ぷっか:すてき。

まめん:どうしても経血が毛に絡まるっていうか、いっぱいつくじゃない?それが全く無くって。拭くのも楽だし。

あずみん:いいな、私もしたい。

ぷっか:したい。

あずみん:そういえば最近、「セルフプレジャー」って言葉が雑誌とかでけっこう取り上げられてるけど、みんなこの言葉知ってる?

ゆい:あんまり親しみはなくって。違う言葉とかでだったら知ってるけど。

あずみん:そうだよね~。

まめん:わりと最近かな知ったの。

あずみん:そもそもこういう話題って、ふだん周りの人とする?

まめん:いやしないな。

ぷっか:しない。

これまで語られてこなかった、障害のある女性たちの悩み。きょうはじっくり語り合う。

<スタジオ>

レモン:今回は自分自身の体や性に関する悩みということでございます。                  

あずみん:すごくディープなお話をみんなでしてきましたよ。

レモン:ラランドのサーヤさんはどうですか。

サーヤ:最近ですよね、このワードになったのっていうか。こういうパッケージにしてくれて、やっと話しやすくなったっていう印象があります。

セルフプレジャーって、何?

ここで、「セルフプレジャー」について解説。

セルフプレジャーとは、自分の体を触って快感を得たり、リラックスしたりする行為のこと。一般的にマスターベーションと呼ばれることが多いけど、この言葉には「手を汚す」という否定的な意味が。一方、セルフプレジャーには「自分を喜ばす」というポジティブな意味が。

最近では、女性誌で「健康」や「ヘルスケア」の特集で取り上げられるなど、“自分の体を愛すること”として前向きに語られ始めている。

バリバラでは、体に障害のある女性118人にアンケートを実施。

「セルフプレジャーの経験がある」と答えた成人女性は60%に対して、障害のある女性は38%。また、「していないけどしたい」と答えたのは20%という結果に。

レモン:あずみん、「していないけどしたい」ってどういうこと?          

あずみん:障害があることが理由で「したい気持ちがあるのにできない人」っていうのがけっこういるんですよね。

レモン:なるほどね。女性の障害者同士でこういう話を聞くことっていうのはあるの?しづらい?

あずみん:いやーない。ないです。しづらいし。私もしないしたことないですね。

ここからは、体に障害のある人の性について研究している、坂入悦子さんも参加。

レモン:女性の障害者が集まって性について語るっていうのはあんまりないんですかね?

坂入:人それぞれだと思うんですけど、まず女性が性を語ること自体がまだまだ好奇の目で見られる社会であるっていうことです。ただ自分の体を知る権利という意味もありますし、「する」「しない」も含めて、自分の性を自分で決めていく。そのような意味でとても大切な行為ではないかと思います。

バリバラ女子会#1 セルフプレジャーの悩みを語ろう

「する」「しない」含めて、誰もが自由に性を決められることが大切。でも、障害のある女性には、切実な悩みがあるんだそう・・・。

あずみん:セルフプレジャーっていう行為自体にどんなイメージがありますか、みんな。                      

まめん:マスターベーションとか自慰行為とか、その言葉ってわりと男の子が使うイメージ。セルフプレジャーっていうのは女の子向けの言葉なのかって。

あずみん:ぷっかちゃん。

ぷっか:私は自分の気持ちいいところを探すっていうイメージがあります。                    

あずみん:ゆいちゃんはどうですか。

ゆい:セックスの話だったらなんか結構気軽に私はできちゃうほうなんですけど。セルフプレジャーについてだと一歩引いちゃうっていうか、話しにくいのがありますね。       

まめん:分かる分かる。

あずみん:そんな中で、ゆいちゃんがみんなにね、相談したいことがあるそうなんですね。

お悩み① セルフプレジャーが年々しづらくなっている

九州で暮らすゆいさんは、全身の筋力が衰えていく進行性の難病がある。6年前から、ヘルパーの介助を受けて1人暮らしをしている。

ゆいさんは、握力も指先の力もほとんどない。お菓子の袋を開けるなど、手の力が必要な作業は、ヘルパーに頼む。

そんなゆいさん。自力でセルフプレジャーをするのもひと苦労なんだそう。

ゆいさん「やっぱ自分でするってなったときに、指がそんなに動かないんで、そこで体力を使って集中できなくなっちゃうんで。そこはきついですね。最終的に残るのが、「あ、疲れたな」みたいない気持ちが残るんですよね」。

病気の進行で筋力が衰えていく中、ハードルは年々上がっている。

ゆいさん「障害が進行してってるなとは思うんで。それが今なんで。どうしたらいいんだろうみたいな。体力も疲れるしっていうのは・・・すごい悩みですね」。

ゆいさんの悩みを聞いて女子会では…。

あずみん:やっぱり年々やりづらくなっているなって感じする?           

ゆい:しますね。

あずみん:そっか。          

あずみん:やっぱりセルフプレジャー自体の回数も減ったりする?

ゆい:減りました。

あずみん:そっかあ。      

あずみん:まめんちゃん。どう思いました?                

まめん:共通する悩みがあるんだなと思って。

まめんさんは、16歳で頸(けい)髄を損傷。胸から下の感覚がなく、握力もほとんど無い。セルフプレジャーがうまくできず、苦労しているんだそう。

まめん:なかなか全然ね、そういうこと人に言えてこなかったんだけど。私も指先力入りにくいから、やりづらいなと思うし。ゆいさん言ってたみたいに、疲れたってなるし。その上、感覚がどうしてもないのはないので、気持ちいいのか気持ちよくないのか、ちょっとよくわからないなっていう。

あずみん:うーん。そっか。

あずみん:ぷっかちゃんどう?  

ぷっか:道具とか使ったことはありますか。              

ゆい:生活をヘルパーさんと一緒にするってなったときに、買いづらい。                      

ぷっか:分かる~。

あずみん:どうしてもだってね、ヘルパーさんに。               

ゆい:開けたりするのもヘルパーさんだし、一緒に外出して買いに行くのもヘルパーさんだし。

まめん:だよね~そっか。

ゆい:そうやって、あ、してるんだなっていうことを知られてるっていう事実が自分の中で、ちょっともどかしいっていうか、恥ずかしいっていうか。 

ぷっか:分かる。

あずみん:どう思われてるんだろうってね。

まめん:思っちゃう。

バリバラが実施したアンケートでも・・・。

24歳・足と腕に障害のある女性「手にまひや拘縮(こうしゅく)があり、手がうまく使えない。やり方が分からないし、あっているのかも分からない」。

31歳・両足にまひがある女性「体に負担のかかりにくいやり方を模索しているのですが、探そうと思って探せる情報でもなく、悩んでいます」といった声が。

「自分にあった方法が見つからない」「わからない」という人が結構いるみたい。

一方、ぷっかさんは介助に関するこんな悩みが・・・。

お悩み② 介助が必要だけど頼めない

ひとり暮らしを始めて7年目になるぷっかさん。

生まれつき脳性まひで、手や足を自分の意思で自由に動かすことが難しい。そのため、食事や着替え、トイレなど、生活のすべてで介助が必要。毎日24時間、13人のヘルパーが交代で訪れ、ぷっかさんを支えている。

ぷっかさん「彼女たちがいなかったら、私は死んでしまうので。大切な人ですね」。

ぷっかさんが、ヘルパーに席を外してもらい語り始めたのは、セルフプレジャーのこと。

ぷっかさん「手を思った通りに動かせないので、いざしたいっていう気持ちがあっても、自分ひとりで

できないことがどうしたらいいんだろうなって」。

今までヘルパーに依頼したことは一度もない。ひとりではできず、ヘルパーに頼むこともできない・・・。どうすればいいか、ぷっかさんは悩んでいる。

ぷっかさん「私はずっとこのまま、もやもやを抱えたまま生きていくんだろうか」。

ぷっかさんの悩みを聞いて女子会では…。

あずみん:重い悩みだよね。ぷっかちゃん。やっぱ頼めない?  

ぷっか:うん、頼めない。介助者の中には、性ってどっか違うものだなって思ってる人もいるんじゃないかと。あとその行為をしてる姿は介助者に見られたくないなって思うので。

あずみん:そうだよね。

自分でするにしても、ヘルパーに頼むにしても、悩みはつきない。

番組アンケートで、「セックスやセルフプレジャーについて、誰かに相談したことがあるか」聞いたところ、62%が「したことがない」と回答。

どうしてこんなに語りづらいの?みんなで話してみた。

「相談できない・・・」語りづらさ

ゆい:世の中的にも女性はそういう(性の)話をしないものっていうのが定着しているから、余計その環境に置かれている当事者は話しづらいっていうのが、女性同士だとあるのかなって。

あずみん:私はね、そもそもセルフプレジャーっていう行為そのものに私自身がすごく嫌悪感があったり、抵抗感がある人間なのね。私がそれをするっていうのがどうしても、想像するのが恥ずかしいっていうのがあって。女性がそういう行為をすること自体があんまりないのに、え?っていうイメージがあるんじゃないかなって思います。                

まめん:私はなんて言えばいいのかな、あったのが健常者女性からね、まるで私がそういうことに興味が無いように扱われたりとか。結局私たちってどうしても誰かの、介助とかケアが必要になってきてるから、暗黙の了解のうちに遠ざけられてる感じってしませんか?                       

あずみん:するするする。

ぷっか:言えない空気をとても感じてて、苦しかったなって思う。

どうして語りづらい?女性×障害者のバリア

<スタジオ>

レモン:その空気っていうのはどうやって作られてきたのかなという。サーヤさん、どう思われましたか?

サーヤ:そもそも、社会全体の性教育って全然進んでないじゃないですか。海外と比べたら。生理とかはぎり教えられるけど、やっぱセックスとかセルフプレジャーに関しては、親の口からちゃんと聞いたことないんですよ。

レモン:坂入さんどうですか、女性障害者のセルフプレジャーの悩みっていうのは。         

坂入:日本では女性が性をオープンに語ることが社会に期待されていない。 そこにさらに障害者だと「かわいそう」とか、あるいは「純粋で性に関心がないんじゃないか」とか、「性的なことはしないんじゃないのか」って思われている。

坂入さんによると、障害のある女性の多くが家庭や学校で、性に関する知識や教育を十分に受けられなかったり、友人や支援者から「性への関心がない」と思われたりするんだそう。その結果、性についてさらに語りづらくなっているんだって。  

レモン:なるほどね。そういうことが積み重なって、ぐっと切り離されてきた。

坂入:そうですね。

レモン:特に女性障害者ならなおさら。

坂入:本当そうだと思います。

坂入:健常者はそれこそひとりになれる場所で、誰にもないしょで自分でできるじゃないですか。ところが障害者の場合は、そこに何らかの支援が介入しないとできない人がいるわけなんですよ。セルフプレジャーの必要性も、声に出さなきゃいけなくなりますよね。

一方で、障害のある女性が性を語ることには深刻なリスクもあるんだそう。

坂入:語りたくないとか興味がないって人もいるんですよね。また、女性が性を語ることが逸脱しているとか、性を欲している存在であるっていうふうに見なされて、性被害になるリスクもある。障害のある女性は特に性暴力の被害が多かったりもするため、こういう問題を語るハードルにもなっていますよね。ただ、それは語った女性が悪いんじゃなくて、社会の歪んだ性の意識が問題ですから、そういった性の知識も変えていく必要があると思います。

玉木:こういう話を女性がすると、男性が近寄ってきて手伝ったろかみたいなこともあり得るから、それは絶対違うでっていう話と。ヘルパーが手伝ったらええやんかっていう、そういう単純な話でもないねんでっていう話で。障害があるゆえに自己完結できていないっていうことに問題があるから、そこはちゃんと確認しておきたいな。

バリバラ女子会#2 悩みに向き合ってくれる助っとが登場!

<VTR>

続いてはバリバラ女子会。セルフプレジャーの悩みを一緒に考えてくれる助っとが登場!

西野さんと本井(もとい)さん。性に関する研究や製品を開発する企業で働いている。

あずみん:きょうはあるものを持ってきてくれたんですよね。

西野:はい。そうです。女性向けのセルフプレジャーアイテムでございます。

こちらは西野さんたち女性社員の手で開発された、女性のためのセルフプレジャーアイテム。従来の「恥ずかしいもの」というイメージを打ち破ろうと、デザインや機能は、女性目線を徹底して作られている。

こうしたアイテムは海外を中心に開発が進んでいて、最近ではショッピングモールやドラッグストアでも販売されている。

早速、アイテムを触ってみる!

あずみん:これ何?リップ?

西野:口紅型の振動アイテムなんですけど、底をくるっと回していただくと。

あずみん:おー。ぶるぶるしている。すごーい。

あずみん:口紅みたい。

まめん:こっそり化粧ポーチとかにも入れとけるかも。

あずみん:確かに。 

「ヘルパーがいるから買いづらい」と言っていたゆいさんは?

ゆい:私的には見た目可愛いなとか。このリップスティック型とかだったらあんま分かんないかなっていう。

まめん:確かにそうだね。

デザインはかわいいと好評!実際使うとしたら、どう?

まめん:手の力が弱かったりとか、まひがあったりするから、ちゃんと持てなかったり滑って落としたりとかするかもしれないなって、ちょっと思いました。

ぷっか:ずっと持っていられないな。自分で思ったところに(アイテムを)持っていけないので。

西野:そういう視点があるんだなっていうのをすごい感じましたね。健常者がこれでオッケーかなって思ったものでも、当事者の人に話を聞くとやっぱ全然違うなと思いました。

西野さんたちの会社では「誰もが性を楽しめる」をモットーに、さまざまな取り組みを続けている。例えば、握力が弱い男性障害者の声を受けて、アイテムを握らずに使用できる補助器具を開発したことも。

今回、握力の弱い女性障害者をイメージして、補助器具付きアイテムをつくってきた。

あずみん:おおーできた。できました。いい感じ。

まめん:いい感じ?

あずみん:うん、楽。

あずみんはいい感じ!でもぷっかさんは…。

ぷっか:くっついた。でも・・・あ~!

あずみん:落ちた~。

障害のある女性が使いやすいアイテムの開発はまだこれから。どんなアイテムだといいか、意見交換することに!

ゆい:肌触りが良くてするするしてたりとかするんですけど、逆にそれが持ちにくかったりするんで。それだったらプラスで指を引っかけられるところがあった方が、使いやすいのかなって思いました。

あずみん:なるほどね。

ぷっか:私はそもそも手に持ってられないし、置いた状態で使えたら嬉しいなって。

本井:例えばなんですけれど、車いすにつけられて、固定できるやつ。こんな感じでできるやつとかあったらどうですか、使いやすいですか。

あずみん:でもそれをする介助がいるから(難しい)。

本井:そっか。

あずみん:おしい、おしい。

西野:女性(障害者)の場合は、今まで相談が来たことが無かったんですね。

あずみん:やっぱそうなんだ。

西野:当事者のみなさんの声を集められる場所ってなかなかないので。きょういただいた意見、めっちゃ貴重ですよね。

本井:いやーほんとうに。セルフプレジャーのハードルが高いって仰ってたのは、本当に私も共感しかないというか。本当にそうだよなって思っていて。何か会社としても取り組めるような土台作りをしていきたいなっていうふうに思いました。

障害のある女性が自由に性を選べるために

<スタジオ>

サーヤ:あんまり女性(障害者)用のものっていうのが無いんだなっていうのが今理解しましたし、物は良くても環境によるんだなっていうのが勉強になりましたね。      

レモン:あずみんはどうですか?                               

あずみん:私たちが無視されてないのがすごく分かってうれしかったし。もっと声を聞かせてください、

って積極的におふたりが言ってくれたのが、すごくうれしかったです。

今、障害のある女性が性を自由に選べるための取り組みが、世界で進んでいる。

例えばドイツでは、握力が弱い人に向けた、指を引っかけて使えるアイテムや、手にマヒがある人でも使える、ハンズフリータイプのアイテムが開発・販売されているの。

サーヤ:よく芸人って売れたら服とか作るじゃないですか。私はこういうグッズ作ろうかなって思いましたね。

レモン:すごーい。

サーヤ:全員が使いやすいやつね。

玉木:今回、女子トークに出てくれた人たちにほんまにありがとうって言いたいって思ってて。今からでいいから、丁寧に丁寧に、性の論議をしていきたいと思ったな。

レモン:あずみん。

あずみん:セルフプレジャーに関しては、私の中ではまだ抵抗感が実際ある側なんですね。私と同じようにそういう人もまだまだたくさんいるし。「する」とか「しない」とかも含めて、全員女性障害者が、自由に自分がしたいような生活を選択できるような社会になってほしいなと、改めて思いました。

※この記事は2022年4月15日放送「女性障害者の体と性のなやみ」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。