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見た目の常識をアップデート2

NHK
2021年7月8日 午後8:29 公開

「ふつうの見た目」ということばから、あなたが思い浮かべるのは? 指は5本が「ふつう」? もしくは肌の色が「ベージュ」なのが「ふつう」? 先週に引き続き、見た目の常識(略して“MJ”)を見た目マイノリティーの視点からみんなで考えてみる!

ストーリー背負わされがち問題

顔や体に特徴のある「見た目マイノリティー」のゲストを迎えてのトーク。最初のテーマは「ストーリー背負わされがち問題」。

話の口火を切ったのは車いすダンサーのかんばらけんたさん。二分脊椎症で下半身が変形している。かんばらさんは「車いすの人が映画やドラマに出てくるときは『障害者になって絶望していたが、恋愛やスポーツによって救われる』みたいなストーリーが多い」と語る。マイノリティーが出てくる作品はいわゆる「感動ポルノ」とよばれるものが多いのではないかという指摘だ。

「街に出れば、障害のある人を見かけるはずなのに、映画やドラマには健常者しか出演していないことが多い。エキストラでも障害のある人とか、身体の形が違う人は出演していない」と話すのは、俳優・ダンサーの森田かずよさんだ。森田さんは二分脊椎症で胸や腰などが変形していて左右の足の長さも違う。

口唇口蓋裂と呼ばれる、上あごと唇が裂けた状態で生まれてきた、ことみんさんは、今も唇に治療の跡がある。ことみんさんは高校生YouTuberとして活動しており、「毎日毎日、障害にすごい悩んでいて、嫌だなーって思っているわけでもない」と語る。さらに「ネット上で『かなしい子』とか『可哀想な子』とか書かれているのを見ると、私たちは『可哀想な子』として生きなきゃいけないのかな?それはちょっと違うんじゃないかな、って思います。全然、『可哀想な子』じゃないっしょ、って思います」とも語った。

タレントの副島淳さんも同じような体験があるという。副島さんは、母親が日本人で父親がアメリカ人だ。「インタビューなどを受けると、『すごく大変な環境だったのに、ここまで明るく前向きに育って』と勝手にストーリーを作られて、背負わされ過ぎちゃう部分はありましたね」

「保育所に息子を迎えに行くと、子どもたちが集まってきて『その顔どうしたん?』『気持ち悪い顔やな』といろいろ言われていた」と語るのは、血管の異常で赤紫のあざが顔にある氏家志穂さん。「はじめの頃は、病気のことを説明しても園児たちには伝わらなかった」そうだが、主人公の顔にアザ(やけど痕)のような特徴がある人気漫画『鬼滅の刃』を例に出し、「選ばれた存在」だと言ったところ、みんな信じて、誰もあざのことを言わなくなったと笑う。

なぜステレオタイプなストーリーを背負わされる?

なぜ見た目マイノリティーは、映画やドラマなどで、ステレオタイプなストーリーを背負わされがちなのか? 自身もアルビノで、見た目の問題を研究している矢吹康夫さんに聞いた。

「何らかの意味をつけないと作品に登場させてもらえないという状況は、この社会の中で『見た目マイノリティー』がすごく特殊なものに見られていて、出てくるだけでびっくりされる、という現実を反映していると思うんですよね。ただ、作品の中での『見た目マイノリティー』の描かれ方が偏っていて、ステレオタイプだったとしても、『どうやって生きていけばいいか分からない』と思っている当事者にとってはロールモデルとなる可能性もなくはないし、その病気や障害の存在すら知らない人にとっては、知るきっかけになるわけですよね。悪いことばかりでもないとは思うんですよ」。

矢吹さんは、イギリスのBBCが障害のある人をどう描くかというガイドラインを作ったことを例に出した上で、「作り手側に、もっと当事者が増えていけば、色んな見た目の人たちがいることが社会に認識されていくのではないか」と話した。

個人の発信で伝わっていけば

最近は動画やSNSで発信する『見た目マイノリティー』も増えている。YouTuberのことみんさんも、その1人だ。動画を上げ始めたきっかけを聞いてみると、ことみんさんは「『口唇口蓋裂』って(ネット上で)調べたときに、情報がそもそも少ないと感じて。これは私の使命だなって思って始めました」と答えた。

バリバラのご意見番、玉木幸則さんは、ことみんさんの話を受けて、こう語る。「『見た目マイノリティー』の存在を知らず、話したこともないからこそ、ステレオタイプのイメージがひとり歩きしてしまう怖さがある。でも最近は、個人が発信できるメディアも増えたから、障害ひとつとっても、いろんな人がいて、ひとりひとり違う暮らしをしていることが伝わっていけばいいなって思う。ことみんが発信してることも、『ことみんという個人の中に、たまたま口唇口蓋裂っていう特性があるだけのことやなぁ』っていうふうに見て欲しい」

「慣れのパワー」を実験

続いては見た目の常識“MJ”をアップデートする実験! 玉木幸則自ら体をはって「慣れのパワー」についての実験企画をすることに。脳性まひがあり、身体の動きや話し方に特徴がある玉木と初対面の小学生が一緒に遊び、子どもたちが玉木の「見た目に慣れる」ことができるのか、を検証してみる。 題して『玉木さんといっしょ』がスタート。

集まってくれたのは、ふだん障害者と関わることがない4人の小学生だ。まずは「だるまさんがころんだ」をやってみる。オニが振り向いたとき体を動かしてしまうとアウトになるのがルール。玉木はまひがあるため、体が勝手に動いてしまうが、なぜかアウトにならない。子どもたちは玉木に気をつかっているようだ。その理由を聞いてみる。

「タマちゃん(玉木)はずっと止まったりすることができないから、アウトにするのは、かわいそうかな?って」さらに「ふつうの人ではないと思った。姿勢や、ちゃんと歩けてなかったりするところが、私たちとは違うのかな」「うまくしゃべれない」など子どもたちは初対面の玉木への気遣いのワケを話してくれた。

玉木は「生まれてからこの体だから、これがタマちゃんにとってのふつう」と子どもたちに説明。それを受けて、小学生のひとりはこう答えた。「あらためて考えると『ふつう』ってことばを、今までずっと言ってきたのは不思議だな?って思う」。

続いてドッジボールを始めるにあたって、子どもたちは、足がふらつく玉木のために、どんな配慮があればいいか相談。玉木の意見を取り入れて、膝から下はアウトにならないルールを決めると、本気のぶつかりあいの遊びが続いた。

最後に、子どもたちは「お互いのことをよく知れたから、また会ったときは遊んだりしてみたいなと思った」。「喋ってみないとその人の気持ちは分からないから、『見た目』で判断するのはあんまりよくないと思いました」と話した。「玉木さんといっしょ」は大成功。「慣れのパワー」がうまれたのだ。

その場で話し合っていくことに意味がある

玉木は今回の「慣れのパワー」の意味、そして共生社会についてこう話す。「子どもが小さいうちは、異なる見た目や障害のある人に対して『気持ち悪い』とか『あっちいけ』と言うこともあるが、問題が起きたときに、その場で話し合っていくことに意味がある。そういった話し合いが大変だから、と別々の環境に分けてしまい、それで大人になってから『共生社会だ』と言われてもそんな虫のいい話はない」。

最後に、副島淳さんはこう締めくくった。「少年少女の頃から、『ふつうってなんだろう』って考える人が、もっと増えていけば、多分“MJ”、『見た目の常識』も変わっていくと思う」。

バリバラは、これからもみんなが生きやすい世の中を目指して、さまざまな『ふつう』を検証し、アップデートしていきます!