“生理”を語ろう! (2)「障害×生理」本当にあったコワイ話」

NHK
2021年11月22日 午後8:30 公開

先週に引き続き、テーマは「生理(月経)」。前回、障害のある女性たちは生理のことで悩んでいるにも関わらず、お互いに話す機会はほとんどないということが分かった。障害者が生理を語りづらくする、社会の分厚いバリアとは一体何なのか?

そんな生理の語りづらさを明らかにするために用意した企画が、題して「本当にあった生理のコワイ話」。生理のケアにヘルパーの介助が必要な人たちが体験したコワ~イ話をご紹介。

その裏には障害者と女性、二重の生きづらさが潜んでいる!

みかちゃんのコワイ話……「生理を止めなさい」

みかちゃんは全身の筋肉が徐々に動かなくなる病気で、ヘルパー制度を利用して埼玉で暮らしている。趣味はスイーツ店めぐりで、「毎日なにか1個はスイーツを食べてます!」と話す彼女。現在は一人暮らしを満喫しているが、以前は障害者施設で入所生活を送っていた。

12歳から28歳まで施設で過ごしたみかちゃん。4人部屋でプライバシーは無く、トイレの時間まで細かく決められていた。15歳のとき、みかちゃんの身にコワ〜イ事件が。それは入浴のときのこと、介助に現れたのは、なんと男性の職員だったのだ。その後も男性職員は定期的にみかちゃんの入浴やトイレの介助を、ときには生理のときにも行うようになったという。

みかちゃんは「すごい嫌だったし、“何で分かってくれないの?”って思ったし。“あっち行って!”って突き飛ばしたかった。私はみかちゃんっていう人間だけど、そのときは人間じゃないっていうか。女の子でもない」と感じていた。

そして女性職員からもコワ〜イ言葉が。月に1回、生理が訪れるみかちゃんに「面倒くさいから生理を止めなさい。みんな手術しているんだから」という言葉を投げかけられたのだという。

みかちゃんは当時を振り返り、「“生理なんて無くてもいいじゃん”とか“子宮もどうせ使わないんだから取ったら?”みたいな。文句言われるし、男の人が生理のときも介助にやってくるし。生理があった方が良いと思える環境ではなかった。“自分が女性であるとは考えない方がいいんだろうな”って思っていたかもしれない」と語る。

異性介助は虐待

障害のある女性の抱える問題を研究し、介助者としても20年以上の経験がある社会学者の瀬山紀子さんは、みかちゃんの話を受けて、こう話す。「過去、“生理の始末が自分でできない人は、障害者入所施設に入れない”って言われて。子宮摘出や月経を無くすことを目的とした放射線照射を受けさせられた時代があったんです」。

異性介助に関して瀬山さんは、「国も障害者虐待の類型のひとつとして本人の意思に反した異性介助を繰り返すことは虐待にあたると言っている。でも残念なことに今も身体障害のある人の入所施設で、『排泄の際の介助は同性介助に限定されている』という施設は6割。それ以外は異性介助が行われる可能性がある。施設に暮らしている中では自分の希望を声に出せないっていう人がいる可能性もある」と話す。(同性介助に限られている61.2%、希望すれば同性介助を受けられる24%、同性介助に限定されていない13.2%、無回答8%)

ゲストの安藤なつさん「“(人間としての)尊厳とは?”っていうことでしかない。生理の話自体、友達同士でしゃべることもちょっと恥ずかしかったりとかするのに、異性の人が入ってきて介助ってなると、どれだけ高いハードルを越えなきゃいけないの? 我慢しなきゃいけないの?って思う」。

「異性による風呂やトイレの介助は人権侵害」だと話すのは、番組のご意見番である玉木幸則さん。「高齢者施設でもおばあちゃんを力のある男性職員が入浴介助するという場面があるが、これ年齢とか関係なく、個人の尊厳の話。人権侵害だということをみんなと確認しておきたい」。

28歳で施設を出たみかちゃん。その後、生理に対する思いは変わったか、聞いてみた。

「自分で選んだ介助者の人たちがいて、サポートしてもらえているので、自分を守るすべをもつようになれた。今、更年期ですけど、更年期の体験をみんなと話もできる。施設を出られて、よかった」。

まいさんのコワ~イ話……「くさい。汚い」

まいさんはヘルパー制度を使いながらアパートで暮らしている。脳性まひで手足が動かしづらく言語障害もあるが、一人暮らしを始めて11年、日常生活で介助をどう取り入れるか熟知し、ヘルパーとの関係も良く快適に暮らしている。ただ、唯一介助を受けたくないと感じる場面がある。

それは生理のとき。一人でナプキンを取り替えることが難しく、介助を必要とするまいさんだが、トイレでヘルパーと二人きりになると「もう逃げ出したいっていうか。とにかく一人になりたい」と思うのだそう。

「生理介助を避けたい」と思うようになったのには理由がある。13歳、学校にいたときに初めて生理が来た。学校に派遣された介助員と二人きりのトイレで、生涯忘れられない、コワ~イ一言を聞いてしまったのだ。

「くさい。汚い」。

思わずつぶやいた介助員のことばに、生理介助を他人にさせるということは悪いことなのだと思ってしまったまいさん。「生理になった自分が悪いし、生理になったらトイレ介助を受けてはいけないものなのかなと」。そして「誰かに相談しても、“生理になったあなたが悪い”って言われるんじゃないか」と怖くて相談できなかったそうだ。

それから16年、今も、まいさんはヘルパーに生理ケアを頼みにくいという。介助の数をなるべく減らそうとナプキンの交換は1日1回だけ。下着の中がかぶれ、かゆみがあっても我慢するのが当たり前になってしまった。

まいさんの話を受け、大学院生で車椅子ユーザーの油田優衣さんはこう話す。「まいさんの介助員さんって、きっと学校に雇われた人で、力関係的にも対等ではない関係だったんではないかなと思いました。そういう状況の中でクレームを言うとか、“これはヤダ”って言うのは本当に難しい」。

玉木さんは「学校にはメンタルケアなどの仕組みが必要では?」と話す。「保健室の先生とか大人が“介助使ってみてどうだった?”とかきちんと聞く、そんな仕組みがあった方がいい」。

まいさんがこの体験を他人に話せたのは事件から10年後。旅行先で生理ケアの介助を頼むことになった友達に「ごめんなさい」と口にした際、「生理になるのは当たり前のことだからそんなに謝らないで」と言われたことで気が楽になったそう。その友達に、中学校時代の体験を打ち明けることができた。

まずは話してみることが大事

生理の話しづらさの背景には、世間にある女性と障害者に対する偏った見方がある、と瀬山さんは考えている。「生理(月経)は汚いとか恥ずかしいという感覚。それを多くの女性たちが持たされている。そこに“女性は子どもを産んで一人前”といった見方が加わって、そうじゃない女性がすごく肩身の狭い思いを持たされて生きている。障害がある女性に対するすごく否定的な見方があるような気がしますね」。

安藤なつさんは、「男性と女性の体の仕組みの違いで溝がある。プラス(障害者が抱く) “生理の介助が申し訳ないな、頼まなきゃいけないな”っていうのが重なっちゃってるのって、やっぱりしんどいでしょうし、そこの溝がどうやったら埋められるかを、こういうふうにみんなで話すことがすごく大事な気がしました」と語った。

これまで生理についてオープンに話せなかったというあずみんも、「生理だけでなく、いろんな困り事をオープンにできるような世の中になったら、障害者も健常者ももっと生きやすい社会になるだろうなって思いましたね」と話した。

生理×障害のなやみ②本当にあったコワイ話