障害×スポーツ〜WE HAVE いろんなWINGS〜

NHK
2021年12月23日 午後8:30 公開

片翼の飛行機に扮した少女が飛び立つ。そんな開会式での演出も話題を呼び、盛り上がったパラリンピック2020。しかし自分は飛べない、と諦めている障害者はたくさんいる。翼の形は人それぞれ、その人なりの飛び方があるのでは? 今回のテーマは障害×スポーツ。障害のある人たちがスポーツを楽しむには何が必要なのだろう? みんなで考えていく。

楽しみたいけれど「どうせできないし」。

スポーツを楽しみたい気持ちはあるけれど、楽しめないという二人のお悩みを紹介する。まず、は中学2年生の坂上遼くんのお悩み。脳性まひで手足をうまく動かせない彼。地元の普通学校に通う遼くんはみんなと一つだけ一緒に受けられない授業がある。それは体育だ。

「みんなが体育している時間、僕は特別支援学級の部屋で歩行器で歩いたり、勉強したりしてます」と遼くん。現在、美術部に入っている彼、本当はテニス部に入りたかった。というのも、小学校のとき、特別支援学級の担任の先生とプレイしたテニスが楽しかった、という思い出があるのだ。

しかし中学校でのテニスは「みんなと一緒にできないから。もうどうせできないし、いいやと思って」と諦めた遼くん。そんな彼のために、新しいテニスを考えてみる。一緒に考えるのは中学校の同級生のゆめちゃんと、入院先で知り合った高校一年生のたけちゃんだ。たけちゃんには遼くんと同じく手足にまひがある。

まずは通常のテニスラケットで挑戦するも、手足のまひのため、重いラケットを握ったまま車椅子をうまく操作できない。そこで彼らが使いやすいラケットとボールの代わりを考えてみる。選んだのは軽くて持ちやすいバドミントンのラケット、そしてボール代わりの風船だ。しかし、スポーツとして動きを楽しむにはもう一工夫必要。そこで、ゆめちゃんがキャスター付きのイスを発見! ネットも低く設定し、みんなで考えたテニスを満喫することができたのだった。

学校教育に問題がある?

本音では「できれば、みんなと一緒に体育の授業を受けたい」と思っている遼くんだが、小学校の頃からずっと体育の授業とみんなと受けていない。一体どうしてなのか? 障害のある子どものスポーツや教育に詳しい曽根裕二さんに聞いてみる。

「今、カリキュラムの中で特別支援学級、障害のある子どもたちに、いろんなことを教えるための授業がひとつだけなんですね。だから、例えば体育の授業は障害のある子どもたちにどんな風に配慮するのか?など、教科ごとのカリキュラムが必須科目として無い状態。先生の手探りでやらざるを得ない状況」なのだと曽根さんは語る。

この話に「先生方もどうしていいか分からない状況なんですね」とゲストの本田望結さん。「先生がこうしましょう、っていうよりも実が子どもたち同士で話をした方がアイデアは出てくると思います」と曽根さんは話してくれた。

もう一度サッカーがしたい。

大阪市の障害者活動センターを利用している安井悠馬さん。彼には筋力が徐々に低下していく筋ジストロフィーという難病があり、手足をほとんど動かせない。中学校までは普通学校で過ごした安井さんだが体育の授業はいつも見学だった。そんな時にに出会ったのが電動車椅子サッカーだ。「車椅子で走り回ってボールを蹴るのはとても楽しかったですね」と語る安井さん。しかし病気が進行し、18歳の時にドクターストップ。サッカーを諦め、それから4年、現在に至るまでスポーツをまったくしなくなったのだそうだ。しかしパラリンピックを見て、また「体を動かしたい」と思い始めた。

そこで、指先以外は動かない障害者でも楽しめるスポーツができる施設を探してみることに。しかし、どの施設でも重度の障害者がスポーツをすることを想定していないのか? なかなか見つからない。しかし、探し続けると利用できそうな施設がひとつが見つかった。続いて、安井さんは一緒にスポーツを楽しむ仲間を障害者活動センターで探す。だが、みんなスポーツの経験が無く、自分たちにスポーツが楽しめるとは思っていないようだ。そこでバリバラのご意見番・玉木幸則さんが助っ人に。指導員として参加し、仲間も連れて来てくれたのだった。

彼らが訪れたのは、全国に展開するスポーツアミューズメント施設で、30種類以上スポーツが用意されている。まず向かったのは卓球場。握力がほとんどない安井さんは手にラケットを固定するなど工夫するが、なかなかボールがネットを越えられない。次に向かったのはボウリング場。ボールを投げることができない安井さんは、店員さんに相談してみる。すると、キッズ用の補助器具である、すべり台を持って来てくれ、無事にボウリングの玉を投げることができた。ボウリングを楽しむことができたのだった。

最後に向かったのはフットサル場。もう一度サッカーがしたい、という安井さんたっての希望だ。しかし3人だけではゲームができない。玉木さんが「周りにいっぱい人がいるから自分から声をかけてきて」と安井さんに指導。これまで見知らぬ人に声をかけた経験がほとんどない安井さんだが、運良く隣のコートで遊んでいた理学療法士を目指す学生たちを誘うことに成功! みんなでフットサルを楽しむことができたのだった。試合を終えた、安井さんいわく「ここ最近の中で一番楽しかったです」。

自分だけの工夫ではなく、みんなで考えることが大事。

生涯スポーツを楽しむ、とはよく言われている。しかし誰もが参加でき楽しむことができるスポーツはどんなものだろう? 曽根さんはこう話す。

「障害の有無や年齢、性別に関わらず、それに勝ちたいとか、上手くなりたいだけではなくて、仲間と一緒にワイワイするのが楽しいからスポーツをやるのか?スポーツの後にみんなで食べにいくご飯が美味しいからやってるのか?色んな立場の人が色んな目的でやるのがスポーツだと思うんですよね。本当に小学校の段階、もっと言えば幼稚園の段階から、障害のある子もない子も一緒に活動をする、それを繰り返していくことで、一緒に楽しむ雰囲気が身についてくるのかなっていう風に思います」

続いて玉木さんはこう話してくれた。「楽しみ方、工夫を自分だけで考えるのではなく、一緒に仲間で、どうやったら楽しめるか?を考えていくことが大事。スポーツ以外だけでなく、一緒に楽しめるような社会に近づいて行ったらいいなって思うね」。

バリバラはこれからもスポーツのみならず、いろんなことをみんな楽しむ方法を、みんなと一緒に考えていきます!

53歳・脳性まひがボウリングやってみた