オムツ替えでの拭き残しは?外遊びはどうするの?視覚に障害のあるパパやママが直面する子育ての“あるある”と、乗り切るための意外な工夫、バリア解消のヒントを紹介!どうすれば、みんなが子育てしやすい世の中になるのか考える。
<番組の内容>
▶︎密着!新米パパの子育て“あるある”
▶︎外遊び“あるある” 公園遊びに潜むバリア
▶︎安心して子どもを遊ばせるには?
<出演者>
菊地亜美さん(タレント)
菊地美由紀さん(視覚障害のある親の会代表)
谷口真大さん(視覚障害)
レモンさん(番組MC)
玉木幸則(番組ご意見番)
あずみん(番組コメンテーター)
<VTR>
今日のバリバラは・・・視覚に障害のある親の子育て。
見えないパパやママはどうやって子育てしているのか、皆さん、知っていますか?
女性「なんも見えへんかったら、逆にどうやって育てていくんかなっておもっちゃいます」
男性「かなり難しいんじゃないかなと思いますよね。オムツ交換ひとつにしてもどこに汚れがついてるかとか」
実際は・・・
ミルクを作るときは音声案内つきの測りを活用。オムツを替えるときには・・・とっておきのアイデアも~。
一方で、見えないことでぶつかるバリアも!
視覚障害のあるママ「どこいくの? 待ってママと行かなきゃだめ」
今回は、視覚に障害のある親の「子育てあるある」。どうすれば、みんなが子育てしやすい世の中になるのか考えます。
<スタジオ>
レモン:今回は視覚に障害のある、見えない・見えにくいパパやママの子育てについて2週にわたってお届けします。まずは、「あるある編」、当事者の皆さんから見えない親ならではの”子育てあるある”を教えていただきたいと思います!ゲストは菊地亜美ちゃーん。
亜美:お願いします。
レモン:目が見えない、見えにくい人たちの子育てって聞いてどんなんかイメージがわく?
亜美:私もすごい目が悪くて、子どもが新生児の頃とかは、メガネをかけながら寝てたんです。いつ泣いて起きてもいいように。そのぐらい寝るときひとつにしても不安だったから、すごい今日お話聞きたいなって。
話をしてくれるのは、視覚障害のある親の会の代表を務める菊地美由紀さん。さらに、今年9月に第1子が生まれたばかりの谷口真大さん。まずは、新米パパ・真大さんの子育てに密着。どんな”あるある”があるのか。
密着!新米パパの子育て“あるある”
<VTR>
大阪に暮らす、谷口真大さん。生まれたばかりの娘、ひなちゃんの子育てに奮闘中。
真大さんは3年前、視覚障害のある、はるかさんと結婚。夫婦水入らずの結婚生活を楽しんで来た。
そして・・・
真大「ひなちゃん、これからママとパパをよろしくね」
今年9月、待望の赤ちゃんが誕生した!
そこで今回は、新米パパ・真大さんの子育てに密着することに。
子育てを始めて1か月がたった頃。あることに気がついた。それは、赤ちゃんの顔色や表情の変化など、目で見てわかる情報が子育てには欠かせないということ。
それを象徴するのが・・・。
真大「これは点字版の母子手帳です」
真大さんも安心!と思いきや、ここに、見えない親が直面するバリア「子育てあるある」が。
真大「うんちの色に注意しましょう。明るいところで1番から7番までのカードの色と見比べてください」
点字には、赤ちゃんの健康状態を知るために、うんちの色の変化を見て確認するよう書かれていた。
見えない子育てあるある。「母子手帳は、見えることを前提に作られている」。
そんな「あるある」も、真大さんは、親や友人にサポートを頼みながら、乗り切っている。
でも、多くの「あるある」は、知恵と工夫でどうにかなっている。
真大「ぐずぐず言って・・・」
お昼過ぎ。なかなか泣きやまないひなちゃん。
真大「あかんのか。おむつかな」
大急ぎでおむつを替える真大さん。ここで、見えない子育てあるあるが。
真大「汚れを拭いても残ってたり、わからないので」
お尻をふいた後、拭き残しがあるか、見て判断できない。そんなとき活躍するのが、霧吹き。
真大「あんまりごしごしやると可哀そうやから、霧吹きで最初に濡らしてからやると全体的に取れやすいですし、まあひと工夫といった感じで」
おむつ替えは、無事完了。でも・・・ひなちゃん、泣きやんでくれない。
真大「飲みますか」
そこで真大さん、今度はミルクを飲ませる事に。ここでも、見えない子育てあるあるが。
真大「よう飲むね」
ひなちゃんがどれくらいミルクを飲んだか、目で見て確認できない。
真大「必死に飲んで」
そんなとき、真大さんは、飲んだ量を、哺乳瓶の重さの変化で確認している。
真大「どれくらい入ってるか、重さがわかりやすい」
ここで、さらに一工夫。哺乳瓶は、軽いプラスチック製を使い、微妙な量の変化にも気づけるようにしているのだ。
真大「はい、げっぷしよう」
ひなちゃん、ようやく泣きやんでくれた。
夕方、お風呂の時間。
真大「ここ狭いからね、ひなちゃんぶつけんように気をつけなあかんねんな、よいしょ」
ここでも、見えない子育てあるあるが。ベビーバスで体を洗う時、へりの位置がわからず、赤ちゃんをぶつけてしまう心配があるのだ。
そこで、万が一ぶつけても安全なように、やわらかいベビーバスを使っている。
真大「中は空気なのでぷにぷにです。頭をぶつけても痛くない。大人しいひなちゃん。気持ちいんかな」
見えない子育てあるあるを、さまざまな工夫で乗り切る真大さん。
真大「両親が視覚障害であることでぶつかる課題っていうのはもちろん出てくるとは思うんですけど、その都度何らかの形では乗り越えていけるかなと思っているんですよね。ドキドキもしながらワクワクもしてるって感じですかね」
<スタジオ>
レモン:亜美ちゃん、どうでしたか?
亜美:これは目が見える、見えないにかぎらず、普通にいいパパだなと思って。新生児、だっこするだけでも怖いですからね。
レモン:どうなん?真大くん。これ、生まれる前かなり準備とかしてたん?
真大:はい。妻が出産をした病院で生まれる前に、抱っこの仕方だったりとか、あと着替えの仕方ですね。あとお風呂の入れ方なんかも、お人形を使って実践をさせてもらって。私たちどうしても見たものを真似するっていうことができないので、実際にやりながら教えていただきました。
レモン:VTRで親御さんとか友人にもサポートを受けてるってちょっと出てたけれども、今はどうしてんの?
真大:ヘルパーさんに定期的に入っていただいたりとか、あとはもうお互いの友人をしょっちゅう家に招いてですね、「ご飯ご馳走するから、ちょっと赤ちゃんお世話見てて」みたいな感じで。今はもう、毎日人が出入りしてる状態ですね。
亜美:みんなでやろうって言った方が楽しいし、なんか子育てもいいですよね、そっちの方が。
真大:そうですね。
レモン:ちなみに、自分でやれることと人に頼ることってどういう基準で分けてるんですか?
真大:私たちの場合は結構単純でですね。2人とも全く目が見えないので、目が必要なことに関してはサポートを依頼するっていうふうに、2人で話し合って決めてますね。
レモン:玉木さんここまでどうですか?
玉木:0か100じゃないから、塩梅っていうか、どうやれば自分の負担が軽減され、子どももストレスが減っていくかってこと。そういうことも、やっぱり両方考えておくことは大事やし。
ここからは、子どもとおうちで遊ぶときの”あるある”。
見えないと、絵本を読んであげるのも難しいという声が。そこで、見えなくても一緒に楽しめる点字つき絵本を用意した。
美由紀:「ぐりとぐら」と、文章も書いてあって、長い尻尾がここに伸びてますね。左側が「ぐり」みたいで、右側が「ぐら」ですね。
レモン:めくっためくった。
美由紀:これは、「のねずみのぐりとぐらは大きなカゴを持って森の奥に出かけました」(てんじつきさわるえほん『ぐりとぐら』なかがわりえこ作/おおむらゆりこ絵・福音館書店)。
レモン:読み聞かせできる。
美由紀:全部やってきましたから。
レモン:亜美ちゃんの前にも点字つきき、触る絵本を手に取っていただきたいと思います。
亜美:「しろくまちゃんのホットケーキ」っていうところに全部ありますね、点字が。これ全部の絵本にやってほしいですね。
レモン:いやそらそうですよね。
美由紀:ただやっぱりこういうのって高いんですよね。一般の書店にはなかなか並んでいなかったりするので、自分では手にいれにくいんですけど。幸いにも点字図書館なんかがいっぱい触れる絵本を作ってくださってて。で、そこから定期的に取り寄せることもできたり、自分の読みたいものをリクエストしたり、ってことができて、それにすごくお世話になってました。
レモン:続いては子連れのお出かけに関するあるあるでございますよー。それは公園遊び。どんなあるあるがあるのか、美由紀さん親子の公園遊びの様子をどうぞ!
外遊び“あるある” 公園遊びに潜むバリア
<VTR>
美由紀さんの4歳の娘、凛花ちゃん。外遊びが大好き。でも、夫婦ともに視覚障害があるため、なかなか凛花ちゃんを連れて行ってあげられない。
この日は、久しぶりに近所の公園にお出かけだ。
ディレクター「何して遊ぶのが好き?」
凛花「ブランコとか、いろんなのが好き」
今回は、ママ美由紀さんと凛花ちゃんの、公園遊びに密着。
やってきたのは、長年地域で親しまれてきた児童公園。広々としていて、子どもが走り回るのには、ぴったり!でも・・・。
美由紀「どこ行くの。待って、ママと行かなきゃダメ」
うれしさのあまり、突然走り出した凛花ちゃん。美由紀さん、凛花ちゃんがどこにいるか分からなくなってしまった。
美由紀「あ!りんちゃん行かない!」
美由紀「こわいですね。一歩間違えるとほんとどこか行っちゃう。車のほうに飛び出していかないかなとか危ないところでつまずいてないかなとか。わからないので。いろんなこと考え始めるときりがないんですけど」
あるあるその1。動き回る子どもが公園の外に出ないか心配
おんぶをねだられた美由紀さん。園内をお散歩することに。
凛花「左で、ちょっと右いって」
美由紀「どっち?」
すると・・・凛花ちゃんの言うがままに歩いているうちに、自分の位置を見失ってしまった。
美由紀「わかんないです。だだっ広いからですね。空間認知がすごく難しくて、自分も精神的に疲れてきちゃいますし」
あるあるその2。自分たちの位置が分からなくなる。
ようやく、お目当てのブランコにも乗れた凛花ちゃん。どんどん気持ちが盛り上がり、美由紀さんをあちこち引っ張っていく。
美由紀「ほらこの縁石も嫌なんだって」
さらに・・・
美由紀「切り株がいっぱいだよ」
あるあるその3。障害物が多く子どもの動きについていきづらい。
凛花ちゃんを思い切り遊ばせてあげたい。でも、現実には難しい。美由紀さんは、もどかしさを感じている。
美由紀「やっぱり子どもは自由にいっぱい駆けずり回ってほしいですからね。親の障害が原因で狭めてしまうのはもったいないし、かわいそうだし。申し訳ないし」
<スタジオ>
レモン:あるあるーって感じやね、亜美ちゃん。
亜美:本当ですね。子どもがいきなり走っていったりとか。バーって行ったらこわいですしね。それを無言でされてしまうと、美由紀さんは何が起こったんだってなっちゃうから。
レモン:バリアだらけやったね。
安心して子どもを遊ばせるには?
<VTR>
そこで、どうすれば安心して子どもを遊ばせられるのか、ある場所で検証することに。
やってきたのは、東京・世田谷にある都立公園。
今回、美由紀さんの友人家族にも参加してもらうことに。夫婦ともに視覚障害のある今野さん一家だ。実は、まだ遊具で親子一緒に遊んだことがないという。
泰博「我々もそこに踏みだせていないっていう部分でハードルも感じてます。一緒に滑り台、滑れたら楽しいかなとは思います」
体験してもらうのは、2年前にできたばかりの「みんなの広場」。体幹が弱くても遊べるよう、背もたれのついたブランコに・・・。
車いすでも上れるようスロープのついた遊具など、障害のある人もない人も遊べる、さまざまな工夫がされている。
神林「こんにちは」
案内してくれるのは、神林俊一さん。
ふだんは、障害のある子とない子が交流するイベントを開くなど、みんなが一緒に公園を楽しめるよう活動している。はたして、親子で公園を楽しむことはできるのか。
まずは、動き回る子どもが外に出てしまわないのか、検証。神林さんが案内してくれたのは、公園のはしっこ。
神林「この公園自体が、全部フェンスで囲われているんですよね」
外周190メートルほどを、高さ1.2メートルのフェンスがぐるり。出入口には開閉式の門がついている。
美由紀「遠くに行くのがすごく心配になっちゃうので、柵や門があることはとてもありがたいなと思いました」
裕子「安心感につながるなと思います」
最初のあるあるは、フェンスで解消。
続いてのあるあるは、「自分たちの位置がわからなくなる」。この公園には、その解消につながる工夫がある。
美由紀「柔らかくなったんですね、素材が」
神林「さすが、よくお気づきで」
それは、場所ごとに地面の素材を変えること。通路は硬いアスファルト、遊具のエリアはやわらかいゴムで覆われている。そのため、足の裏の感触から、どのエリアにいるかがすぐにわかるのだ。
裕子「違うね~」
裕子「自分がどこにいるのかっていうのを少しでも把握できる材料になるっていうのは、すごく安心感になるなというのは感じました」
ここなら遊具遊びをしても大丈夫と感じた今野さん夫婦。親子で、初めての滑り台に挑戦できた。
一方で、広い園内で、自分たちのいる位置を正確に把握するには限界も。
美由紀「私たちの場合、いま自分がいるところしか情報が入ってこないんですよね。遊具の位置をいきなり把握するのは難しいんです」
最後のあるあるは「障害物が多く子どもの動きについていきづらい」。広くて歩きやすい、この公園。
でも・・・、意外と障害物が多い。
スタッフ「危ない危ない。前にポールがあります」
美由紀「ありがとうございます」
間一髪、周囲の声かけでぶつかることは避けられた。
でも、あるあるは、解消できず。
設備のバリアフリーを進めても、限界はあるようだ。
美由紀「りんちゃん、遊具で遊ぼう」
課題もあるが、安心して遊ばせられたみたい。
美由紀「すごく楽しくて、思い切り遊ばせることができました。使いやすさを考えた公園っていうのが少しずつ広がっていけるきっかけになるのかなと。気持ちの面で安心感はありました」
<スタジオ>
亜美:ああいう公園あるのまず知らなかったし。でもフェンスで囲まれてるっていうのは私も安心できるなって思いましたね。本当ぴゅーって走って行っちゃったりとかするので。
レモン:あんな工夫されている便利な公園があるって知らんかったけど、どうですか、玉木さん。
玉木:あの遊具、結構ええと僕思ってて。ただ、あれを作るにはお金いっぱいかかる。だから全国各地に、しかも近くの公園にっていうのは時間がかかると思うねんな。理想的なことをいえば、ああいう公園が広がっていけばええと思うんやけど。でもできることは、公園に来てくれてる人たちが声をかけあって助けていくっていう、助け合うっていうそんなことが実は大事。
ハード面だけでなく、ソフト面も大事ということ。
この広場を設置した東京都が去年作成した、広場の整備に関するガイドラインにも、「可能な限り人と人が関わりとふれあいを持って運営していく姿勢が必要」と書かれている。
公園を案内してくれた神林さんも、「利用者同士が声をかけあい、困っている人を助けられる関係性が大切」と感じている。障害のある子とない子が一緒に遊ぶイベントでは、子どもだけでなく親同士も顔見知りになれる関係作りを目指しているそう。
亜美:でもたしかに声をかけるのって障害あるとか関係なしに、ちょっと勇気いるんですよね。
レモン:美由紀さん、どういう声かけがあったらうれしいですか?
美由紀:「ブランコ空いてます」とか、「ブランコこちらです」とか、そういう情報を言ってくださるだけで、位置関係もすぐわかるようになりますし、(遊具の)順番を奪い取ってしまうこともないですよね。あとはやっぱり「今、子どもさん何してますよ」って自分の子どもがしてることを実況中継してくださることもすごくありがたいです。
亜美:でも「今、美由紀さんのお子さん順番抜かしましたよ」とは言いづらいです。
美由紀:ほかのお母さん方は自分の子どもをしかっちゃうときがあるんですよ。「いいのいいの、行かないの」とか「こっちに来てなさい」とか。だけど「いいんです、いいんです」って、子ども同士自由に遊ばせてほしいから、「いいんです、うちの子をしかってください」って思うんで。
レモン:玉木さんどうですか?
玉木:声かけさえあれば、近所に児童公園いっぱいあるけど、その気になれば児童公園でもできるやんな。公園以外にも、児童館とか、図書館とか、子育てで利用する場所は、街にいっぱい最近あるから。そこが子どもの使いやすさだけじゃなくて、親の障害とか、事情に合わせた形でどんな人でも使いやすい場所にしていくことが、広まっていく(きっかけになる)。
レモン:皆さんもぜひ声かけ、お願いしますね。
※この記事は2022年12月9日放送「見えないパパ・ママの子育て あるある編」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。