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#ふつうアップデート Vol.5

NHK
2021年9月9日 午後8:29 公開

世の中のさまざまな“ふつう”をアップデートしていくシリーズ企画。今回は “ファッション”のアップデート第3弾!流行の服を紹介するファッション誌では、ほとんどのモデルが立ってポーズをきめるのが“ふつう”だ。その“ふつう”をアップデートする!

車いすユーザーのモデル・レナさんの悩み

東京で一人暮らしをしている曽塚レナさんは5年前、事故で下半身麻痺に。シンガーソングライターの活動とともに、彼女が力を入れているのがファッションモデル。モデルは立ち姿が“ふつう”だが、レナさんは車いすを武器にした“すわりポーズ”が売り。例えば、浅く腰掛けて、足を出すことで座った状態でパンツのラインをはっきりとキレイに見せるなど、自分流のポージングで服の魅力を引き出している。

「障害のある人向け」のモデルしか声がかからない!

しかし、レナさんにはモヤモヤしていることが。それは「障害のある人に向けた」広告のモデルでしか声がかからないこと。車いすユーザー向けのオーダースーツのモデルなどはあっても、いわゆる“ふつう”のファッション誌の仕事は一度もないという。車いすの姿を「見ていただけるところまでいかない」のが現状。ファッションの世界は「やっぱり限定されている」と感じている。

ファッション誌は参考にならない?

車いすユーザーのあずみんは、いわゆる“ふつう”のファッション誌は立ち姿のモデルばかりで参考にならず、オシャレ自体に関心が向かなかったという。モデルは立ってポーズをきめる、この“ふつう”では取り残される人たちがいるのだ。

番組のご意見番、玉木さんは「負の連鎖」が起きているとコメント。障害者がモデルとして載っていないため、オシャレは自分に関係ないことだと思い、興味を持てない人たちが出てくる。その結果服を買わず、ファッション業界が障害者をターゲットとして見なさなくなってしまうというものだ。

「新しい風を吹き込みたい!」レナさんの挑戦!

そんな「負の連鎖」を断ち切ろうと、レナさんはアクションを起こした。女性ファッション誌に自身をモデルとして起用してほしいと売り込みに。 面接に応じてくれたのは編集長とデスク、ライターの3名。

「障害者を起用する発想がなかった」

まず、レナさんは「これまで車いすのモデルを起用したことがあるのか?」と尋ねるも、編集部は「過去に売り込みがまったくなく、起用するキッカケがなかった」という。そこからレナさんは「障害のある人たちもファッションを楽しみたい、人生を輝かせたいと思っている。わたしを起用すれば新しい風を吹き込むことができる」と猛アピール。熱意が通じ、起用されることが決定!

これまで編集部は、「そもそも立っている方を起用するのが当たり前になっていた。発想がなかった、というのが正直なところ」だったそう。起用した理由は多様性の観点から、そしてなにより「車いすユーザーどうこうではなく、レナさんのパワフルさ」が決め手になったという。

「どう記事を書いてよいのか、分からない…」

レナさんがモデルを務めるのは、1か月間の着回しコーデを、物語仕立てで紹介する雑誌の目玉企画。これまで将棋の棋士や、料理を届ける配達員など、世相を反映した女性を描くことで話題を集めてきた。

しかし記事を担当するライターの野田さんにはある悩みが。「どう記事を書いてよいのか分からない」のだという。「小学校以来、障害者と関わる機会がなかった」そうで、「何から(ストーリーを)書いていいのか、発想が生まれなかった」。つまり、レナさんがどんな生活を送っているのか、想像だけで物語を書くことに限界を感じていたという。

その話を聞いたレナさんは、自分のことを知ってもらおうと野田さんたちを自宅に招待。障害のある人の生活を初めて見た野田さんはこう話してくれた。「レナちゃんのお家、ちょっとギャル感があって、パーソナリティをすごく感じられるお部屋で。勝手な偏見ですけど(想像していた障害者の生活は)すごく地味な生活をしているとか」。レナさんとの距離を縮めた野田さんは、彼女の人物像を知ったことで「本当にただただふつうの女の子の話を書けばいい」のだと悩みが解消されたのだった。

車いすも自分を表現する武器

野田さんは、当初「あんまり障害に関することに触れちゃだめだみたいな感じで。だからストーリーでも車いすを前面に押し出した話は書かない方がいいと思った」そう。しかし、レナさんの話を聞き、“車いすも自分を表現する武器になる”という彼女の信念を知ったことで、「車いすアーティスト」として活動する女性の物語を書くことができた。そして路上ライブを行うシーン、ライブハウスでのシーンなど計30カットの撮影が無事終了。

レナさんは今回の撮影を通し思ったことを、過去の経験を引き合いに語ってくれた。事故の後に写真を撮る際、母から車いすが写らないよう撮ることを提案されたという。「提案に対し、『なんで!?』と思った。車いすのおかげでようやく移動できるようになったから、車いすが大好き。一緒に格好よく映りたいと思っていた。今回それが伝わってうれしい」

ひとりひとり違う存在

今回の撮影を見て、玉木さんはこう話す。「障害者と言ってもひとりひとりみんな違う。経験も考え方も違っているのが当たり前。(「車いすは個性」と考えるのも)あくまでレナさんのケース」。そして、階段のある撮影現場で、手すりを持つレナさんの手が震えていたことに気付いた玉木さん。「無理をして頑張り過ぎたことが原因で、二次障害を引き起こしてしまう恐れもある。(編集部のみなさんは)その辺りも分かったうえでコミュニケーションをとってもらえたら」と注意点を話してくれた。

ファッションの世界に新風を吹き込んだレナさん。これからもバリバラは、さまざまな観点から“ふつう”を見直し、アップデートに挑みます!