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#ふつうアップデート 「俳優になれるのは心身ともに健康な人?(前編)」

NHK
2021年7月15日 午後8:29 公開

世の中のさまざまな“ふつう”をアップデートしていく、番組内シリーズ。今回のテーマは“俳優”。「俳優になれるのは心身とも健康な人」という世の中の「ふつう」を前に、可能性を狭められてきた俳優を目指す障害のある人たちが集まり、バリバラ俳優養成塾を作り、ワークショップ形式でその可能性を探っていく。

障害のあるマイノリティーは俳優にはなれない?

俳優オーディションやタレント事務所の募集要項によく書かれている「心身ともに健康な方」という条件が。当事者たちからは「車いす利用と書いたら書類が通らなくなった」「耳が聞こえない人には、お芝居はできないと言われた」などの声もある。障害のある人は、俳優になりたくても実力を試せる場が非常に限られているのが現状なのだ。

今回のゲストは、ドラマで車いすに乗った図書館司書を演じたこともある俳優の常盤貴子さん、映画監督の三島有紀子さん。そしてバリバラのナレーションでもおなじみ、障害のある俳優のパイオニア、神戸浩さんだ。

「心身ともに健康な方」について三島監督はこう話す。「心身ともに健康な人って、逆にどこにいるのかな?っていう感じですよね。表現したい人って、みんないろんなものを抱えている。 いろんな経験、傷ついたり、嫌な思いもしてきて、それを発信したい人たち。オーディションの募集に、そんな文言が書かれていることにちょっと衝撃」。

周りと同じ土俵に立つことはできない?

車いすに乗って暮らす関岡勇人さんは小さい頃から俳優や声優に憧れてきた。7年前に声優を目指し専門学校に入った関岡さん。「事務所のオーディションを受けたい」と講師に伝えた際、演技のことではなく「段差があるから難しい」など、車いすのことだけしか言われなかったという。「車いすだとどうしてタレントや声優にはなれないのか?」

大学2年生の藤原ももなさんは、筋力が徐々に弱くなる進行性の難病だ。高校で演劇部に入ったものの、当初は練習に参加させてもらえなかった。しかし演劇部の部長たちとともに交渉を重ね、練習に参加できるように。その後、舞台に立ち演技ができることを周りに証明してみせた。「社会の壁を知っていくうちに、だんだん壊したいなっていう思いが募ってきた。俳優の世界でも多様な人がいるのが当たり前の世界を目指して、自分ができることをやっていきたい」

職業全般に通じる、負のループ。

バリバラのご意見番、玉木幸則さんはこう語る。「今回は“俳優”がテーマだけど、これは職業全般に通じる話。障害者は俳優になるのが難しい、という社会の価値観は障害者を受け入れる事業所が少ないという話と通じる。そうした世の中の空気の中、当事者自身も始める前から諦めている。負のループがずっとある」。

これまで自身の障害について「繰り返し言われた」と振り返る神戸さんは、俳優になりたい参加者に、こんなアドバイスをする。「別に他の監督がいるじゃん? 他の現場があるじゃん? 自分を認めてくれるところに行けばいい。ダメな人は見返せばいいんだよ」。

俳優養成所をスタート!

バリバラは神戸さんとともにプロジェクトを立ち上げた。これまで十分なチャンスを得られなかった障害のあるマイノリティーたちから、俳優の卵を発掘し、育てていく。エントリーしたのはおよそ70人、その中から事前審査を通過したのは9人。そこには車いすユーザーや耳の聞こえない人、コニュニケーションが苦手な人など多様なメンバーが選ばれた。さらにそこから選抜するため、演技審査のワークショップを実施。神戸さん、常盤さん、三島監督も審査で参加する。

ワークショップ前半を終え、メンバーの演技を見た常盤さんはこう話す。「単純にお芝居に慣れている、慣れていないとかを超えたものが見たい。 だから個性を出されると、ただの俳優にはお手上げっていうものを結構見ることができので、たまらないものがある」。

続いて三島監督は「今日の皆さんの演技を見ていても、“ふつう”ってひとつもないなって感じた。その人だけの表現があって、それが“ふつう”。こういうものが“ふつう”って世の中にないって思う」と話してくれた。

表現の可能性

スタジオで常盤さん、三島監督にワークショップ前半の感想をあらためて聞いてみた。

「本当に面白い時間でした。正直、演技はもうちょっと苦戦するかなと思っていたんですけど、やっぱり演技をやってみたいと思うその気持ちから、セリフはみんなちゃんと入っていた。いろいろ勉強になりました。すごい楽しかった。」と常盤さん。

三島監督は「全部見てやるぞ」という気合で今回の審査に臨んだそうだ。「今まで見たことない筋肉の動かし方とか、手の動かし方だったりとか。身体の使い方がすごく新鮮だったんですよ。もっとドラマとか映画にいろんな人が出てきて欲しい。車いすの方とか、トランスジェンダーの方とか、もう当たり前のようにドラマや映画に出るようになって欲しい。キャラクターとして、まず出て欲しいな、っていつも思うんです」。

来週も引き続き、ふつうアップデートの俳優編。ワークショップの後編をお届けします。マイノリティーたちの個性溢れる演技の魅力が爆発!? 乞うご期待!