「身体障害者補助犬法」の成立から今年で20年。しかし今も補助犬の数は少なく、普及が進んでいないのが現状。そこで今回、補助犬のなかでも、知られざる聴導犬と介助犬ユーザーの日常に密着!障害者の暮らしを支える犬たちのスゴ技と、犬がもたらした自立生活とは?普及を阻むバリアについても調査!どうすれば必要とする障害者が補助犬を利用できる世の中になるのか考える。
<番組の内容>
▶︎知られざる「補助犬」の世界
▶︎“自立”をサポート 聴導犬・介助犬との暮らし
▶︎介助犬を利用するには?
<出演者>
平祐奈さん(タレント)
安藤美紀さん(聴導犬ユーザー/聴覚障害)
江口雄司さん(介助犬ユーザー/けい椎損傷)
山本真理子さん(帝京科学大学講師)
レモンさん(番組MC)
**玉木幸則(番組ご意見番) **
あずみん(番組コメンテーター)
知られざる「補助犬」の世界
今日のバリバラは、かわいいだけじゃないワンちゃんたちを大特集!
耳が聞こえない女性に、タイマーの音を知らせる犬。握力が弱い男性の代わりに、駐車券を受け取る犬。雪道にはまった車いすを引っ張る犬。
障害のある人たちの暮らしをサポートする犬、「補助犬(ほじょけん)」だ。
「盲導犬(もうどうけん)」は、視覚に障害のある人に、曲がり角や段差などを教え、歩行をサポートしている。
一方、聴覚に障害のある人をサポートする「聴導犬(ちょうどうけん)」。生活に必要なさまざまな音を知らせる。
そして、手や足に障害のある人をサポートするのが、「介助犬(かいじょけん)」。靴下を脱がせたり、落とした物を拾ったりする。
補助犬との暮らしは、まさに「ノードッグ、ノーライフ」!
介助犬ユーザー「アイスが来る前と生活が変わって、本当に助かったっていう」
盲導犬ユーザー「もう あうんの呼吸って言ったらいいんですか。なくてはならない存在ですね」
でもみなさん、補助犬のこと知っていますか?
男性「いや、全然知らないですね」
男性「いやー、分からない」
女性「ワンちゃんがいるのは、存在は知っていたんですけど、やっぱ聞くだけだったりとか」
今日は、そんなあなたを、知られざる補助犬の世界にご案内。
<スタジオ>
レモン:わんわんわん!ワンちゃん特集!今日は障害のある人たちを支えるワンちゃんを大特集でございます。
ということで、ゲストはワンちゃん大好きの平祐奈ちゃん!
平:よろしくお願いしますー。
レモン:補助犬のこと知ってましたか?
平:盲導犬は街で見かけたりとか、テレビの特集で見たことあったんですけど、聴導犬とか介助犬、他にもたくさんいることは知らなかったですね。
レモン:ここからは補助犬と暮らすおふたりにも加わってもらいましょう!どうぞ、お越しください!
平:かわいい!
レモン:まずはですね。江口雄司さんと介助犬のアイスです!よろしくお願いしまーす!
江口:はい。よろしくお願いします。
レモン:続いては、安藤美紀さんと聴導犬のアーミです!よろしくお願いします。
安藤:今日は、よろしくお願いしまーす!
レモン:あずみん!改めてね、補助犬について教えてもらえますか?
あずみん:補助犬には、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種類あります。補助犬の位置づけを法的に定めたのが、今年制定から20年を迎える「身体障害者補助犬法」です。この法律の目的は、補助犬の育成と社会での受け入れを通して、身体障害者の自立と社会参加を促進することにあるんです。
レモン:ポイントは自立と社会参加なんですね。今日はこの補助犬の中でも、皆さんにあまり知られていない介助犬と聴導犬について深掘りしていきたいと思います。まずは江口さんと安藤さんの犬との暮らしをご覧ください。
江口&安藤:どうぞ!
“自立”をサポート 聴導犬・介助犬との暮らし
<VTR>
大阪で暮らす、安藤美紀さん。生まれたときから、耳が聞こえない。聴導犬と暮らし始めて14年になる安藤さん。現在のパートナーアーミとの、ある日の様子を見せてもらった。
安藤「なんの音?」
安藤さんに目覚ましの音を知らせることが、アーミの1日のスタート。起きた後は、白湯を飲むのが日課。電子レンジで水を温めると…
安藤「ありがとう、ありがとう。終わってる。ありがとう、ありがとう。」
生活に欠かせない「音」が鳴っている場所へと安藤さんを導くのが、聴導犬・アーミの仕事だ。
聴導犬と暮らす前の安藤さん。生活は、今のように心穏やかなものではなかった。音を知るためには、いつも息子に頼らざるをえなかったのだ。
安藤「家族だから、やっぱり家族は負担になってしまうんじゃないか。息子は私のために生まれてきたわけでもない。やっぱり聞こえないから、息子に、『あなたが私をサポートしなければならない』っていうのもちょっと酷かなって思いまして」
そんなとき頭に浮かんだのが、知り合いから話を聞いていた「聴導犬」だ。
興味を抱いた安藤さん。2009年、犬との訓練や認定試験などを経て、最初の聴導犬を迎えた。
以来、生活は一変。音に神経をとがらせずに、自分の時間を楽しめるようになった。
安藤「前はピリピリしてたけど、音に対して気をつかう、それが気をつかわなくなって。聴導犬が来てからは、テレビを見たり、どこにいても犬が教えてくれる、その安心感はできました」
安藤「アーミ、何? あっ、こんにちは~。ちょっと待ってくださいね。今から開けまーす」
続いては、岡山に住む江口雄司さん。
江口「アイちゃん、おかお(ケープ通す)しましょ」
パートナーは、介助犬のアイス。4年前から一緒に暮らしている。
10代の頃にけい椎を損傷した影響で、握力が弱い江口さん。物をつかもうとすると、落としてしまうことが多いという。
すると…
江口「アイちゃん、また落ちた。いいですか?テイクお願いします」
落としたUSBメモリを拾い上げ、江口さんの手元へ。
江口「グッド、お利口。グッボーイ」
ほかにも、携帯電話、薬、食器、ペットボトルなど…。
落とした物を自力で拾うのが難しい江口さんの、手の代わりになっている。
江口「アイスが来る前はちょっと長い棒だったりとか、そういうのを取りに行って、時間をかけてたぐり寄せて、拾ってっていう作業をしてたんですけども。拾うっていう行為も、無理をしてしまうと転倒してしまう恐れとかがあったりするので」
江口さんの妻、珠美さん。介助犬のアイスが来る前は、落とした物を珠美さんに拾ってもらうことも多かった。
江口「『ちょっと落ちたのでちょっと取って』っていう、そのたびに呼んで。3回目、4回目になってくると、どんどん顔が険しくなっていくんですよね。そうなってくると、なんか自然と人に頼むのって、なんか顔色をうかがうようになるというか」
珠美「『えー、今?』みたいな気持ちが結構…。『今、忙しいのに。ちょっと後でいい?』みたいなこともあったりして、ちょっとイライラしながら、『はい』って取るみたいな」
今はアイスのおかげで、珠美さんのイライラも減ったという。
珠美「今はアイスが拾ってくれて、私は行かなくてもいいのにわざわざ見に行くとか、もう楽しんでます」
さらに、アイスと暮らし始めて変化したことが。それは、安心して1人で外出できるようになったこと。
江口「アイスがいれば、ぱっと拾ってもらえる。(自分だと)30分かかっていたのが、数分でぱっと終わってしまう。グッド。できたね。グッボーイ」
今まで諦めていたことが、ひとつひとつできるようになっていく。江口さんとアイス、共に歩む、自立生活だ。
<スタジオ>
レモン:祐奈ちゃん、どうでしたか?
平:いやー素晴らしいですね。こうワンちゃんが支えてくれて、最高のパートナーだなと思って。
レモン:ねー、江口さん。
江口:ものを落としてしまったときとかもう数秒で取ってくれるので、安心して外に出かけられるようになりました。
安藤:聴覚障害者は、パッと見たときに、どこが悪いかわからないので、アーミちゃんと一緒に歩いていると、ケープに聴導犬って書かれているのを見て、「あ! 一緒にいるこの人は耳が聞こえないんだ」っていうのを分かってもらえる。
レモン:でもさ、ワンちゃん連れてたら、目が見えないのかなっていう方向に、ついついいきそうじゃない?
平:そうですよね。
安藤:でもね、いいことあるよ。交差点で止まって信号が青になるのを待ってたら、めっちゃかっこいいイケメンの男の人が私のところ来て、「僕の腕につかまってください」って。もうね、手が出そうになりました。「私は目が見えるんです」って言った。「え? そうなんですか?」って言って、その方に説明して「そうなんですか、勉強になりました」って。
平:安藤さん、おもしろい。
介助犬と聴導犬は、まだまだ数も少なく、なかなか知られていないのが現実。全国でも、介助犬は58頭、聴導犬は63頭しかいない。普及が進まない理由について、補助犬の研究をしている、山本真理子さんに教えてもらう。
山本:盲導犬以外の介助犬と聴導犬に関しては、どのような役割をするのかっていうのも分かりづらいですし。特に介助犬は、障害のある方の障害の種類だとか、程度によってサポートの内容が本当にバリエーションに富んでいるので、理解がやっぱり難しいっていうのは、普及が進まないことの理由のひとつかもしれないですね。
平:でも、これだけ素敵なワンちゃんだから、これからどんどん増えていくじゃないですかね?
でも現実はなかなか厳しい。
番組で補助犬ユーザーにアンケートしたところ、外出先で補助犬の同伴を拒否されたことがある人は、なんと9割以上にのぼった。
介助犬ユーザーのMさん。レストランで「犬はダメ」と断られた。介助犬の説明をしても、「本部の指示なので」と門前払いされた。
聴導犬ユーザーのTさん。大手チェーンのカフェで、「テラス席しか案内できない」と言われた。外は暑かったので、お店の利用を断念した。
介助犬ユーザーのNさん。タクシーに乗ろうとしたら、「小さい犬はいいけど、大型犬はダメ」と乗車拒否された。
山本:これは問題ですね。不特定多数の方が利用するような病院とか飲食店とか、商業施設、普通の人が使うような施設っていうのは補助犬の同伴の受け入れが義務化されています。補助犬自体のことを知らなくって、犬を見ただけでアレルギーの問題とか衛生面がっていう不安が先に来てしまって断ってしまうようなことが、まだまだあって、社会のバリアはまだありますね。
あずみん:私、実は犬アレルギーで。
レモン:まじ!知らんかった。
あずみん:そうなんです。私、犬大好きだからかわいいなと思えるんやけど、めちゃ近くで、お店とかですぐ隣にワンちゃんがおったら、ちょっとドキッとしちゃうと思うなと。
レモン:ドキっとするよね~。江口さんはどうですか?
江口:そうですね。結構気をつかって、お家とかで毎日のブラッシングをしたりとか、毛が飛び散らないようにケープも着せたりとか心掛けているっていうのはあるんですけれども。
あずみん:私、そうやって今の話聞いて、あ、なんかちゃんとブラッシングとかして、気をつけている部分があるんだなって知れたのでよかったです。
レモン:なるほどね。いろんなことがね、事情が分かってきたんですけど、山本さん、ぶっちゃけ聞いていいですか?犬じゃなくても、ヘルパーさんを利用すればいいんじゃないのって思う人もいると思うんですけど。
山本:思い立った時に自由に行動できるっていうのは、本当に大きなメリットですし、自分がやっているっていうような、あの意識で行えるという意味では、補助犬との生活、自立とか社会参加っていうのは、ヘルパーさんにやってもらうっていうのと、ちょっと意味あいが違うかなというふうに思います。
続いては、普及が進まないもうひとつの事情。利用するためのハードルについて。
介助犬を利用するには?
<VTR>
今回、集まってくれたのは、手や足に障害のある4人の車いすユーザー。
まずは、介助犬を知っているか聞いてみると…
ともみ「名前も知らなかったです」
ディレクター「何できる犬かっていうのもあまり…?」
ともみ「分からないですね」
きさ「聞いたことはありましたが、盲導犬とかよりメジャーではないのかなと思っていました」
そこで、介助犬をよく知る助っとが登場!
吉村和馬さん。介助犬と9年間暮らしている、ベテランユーザーだ。筋肉が徐々に動かなくなる難病の影響で、自分で体を動かすのが難しい。そんな吉村さん、介助犬と暮らす仲間を増やしたいと、今回協力してくれた。
吉村「介助犬のことを広めていく機会を増やしていきたいなっていうのも、考えています」
さっそく、介助犬がどんな場面で役に立つのか、ふだんの様子を見せてもらうことに。
男性「携帯っていうのをちゃんと認識してくれていて、取ってきてくれる」
VTRを見て、下半身が動かないというともみさんは…
ともみ「下にものを、落としたものをやっぱりひとりで拾えないので。今は、物をつかむモノを使って取ってるんですけど、それを介助犬がやってくれたらすごい助かるなって思いました」
さらに、筋ジストロフィーの影響で体が動かしづらい今村さんは…
今村「介助者がいても、ドアを開け忘れて、そのときに開けてもらえたらすごい楽になるなと思いました」
介助犬の役割を知って、みんな興味を示してくれた。ところが、犬との生活にはこんな心配の声も…
今村「(介助犬に)指示を出したり、覚えることがいっぱいあって、大変そうだなと」
自分に介助犬を使いこなせるか心配。
男性「自分に(障害福祉の)ヘルパーさん入っていて、ヘルパーさんに、自分でできない介助犬の分のサポートをしてもらえるのか。ひとりで出来ないだろうなと。」
ヘルパーに介助犬の世話を頼んでいいの?
ともみ「今住んでいるところが賃貸で、ペットがだめなんですね。なんで、今すぐはちょっと難しいなと思ってて」
ペット禁止の家では介助犬を利用できないの?
さらに、こんな声も…
きさ「四六時中、一緒にいる存在になると思うので、『かわいい、便利そう、だからほしい』とかいう感じには、難しいかなと思いました」
どうすれば介助犬と暮らせるの?
<スタジオ>
平:これって介助犬と一緒に暮らすためにも、やっぱり自分の身の回りの条件が必要なんですかね?
レモン:これ見て、そう思ってるんちゃうかなと思いまして!ここからは、介助犬と暮らしたいと思ったときどんなステップを踏まないといけないのか、どんなバリアがあるのか、 こちらこの「すごろく風ボード」を使って見ていきたいと思います。
まずはこちら!「訓練事業者に問い合わせる」。介助犬を育成している団体に、気になることいろいろ聞きましょうよ!
あずみん:なるほど。
レモン:ところがここで早速心配事がございます!ペット禁止の家では介助犬を利用できないんじゃないの?山本さん、これいかがですか?
山本:身体障害者補助犬法では、公営の住宅では補助犬の受け入れが義務化されてますし。
レモン:あ、そうなんや。
山本:民間の住宅でも、受け入れは努力義務となっているんですね。やはりちゃんと説明してみるっていうことがいちばんですね。
レモン:なるほどね。それでは続いて、事業者から状況調査を受けますよ!介助犬を利用するのが適切か、事業者が判断するために障害の種類や、収入の有無、犬の管理能力など、さまざまな質問を受けます!またまたこちらで心配事が〜!ヘルパーさんに介助犬の世話を頼んでいいの?
あずみん:うん、気になるこれ。
山本:(ヘルパーが介助犬の世話をするのは)グレーゾーンです。どこかにそれが明文化されているわけではなく、ヘルパーの事業所や自治体の判断に委ねられるかなというふうには思います。
さらに、パートナーとなる犬を決めるマッチング。そして、犬との合同訓練を経て…認定試験に合格!晴れて介助犬ユーザーに。
レモン:そしてついに一緒に暮らし始めます!しかし、早速ここで心配事が!自分に介助犬を使いこなせるのかしんぱ〜い!
山本:生き物である補助犬ですので、すぐに息が合うっていうことはやっぱり難しくて、少しずつ時間をかけながら、あうんの呼吸っていうものを手に入れていきます。その中でなにか困ったことがあったり、問題が生じた場合は、訓練事業者は、ユーザーさんのフォローアップ、アフターフォローをするっていうことも法律で義務づけられているので。
ここで、お金について補足。補助犬は、寄付や自治体の補助で運営されている訓練事業者から、無料で貸与される。でも、えさ代や予防接種の費用など、犬の飼育に必要なお金はユーザーの負担。その額は、年間10万から20万円ぐらいとされている。
レモン:いろんな壁を乗り越えて、ついにゴール!介助犬のサポートを得てですね、自立と社会参加が実現されました!でもこれは、なかなか大変だなあって思っちゃいましたけどね〜。
江口:いろんな経験を経てというか、大変なところもあるかもしれませんが、それをどんどん楽しんでいってほしいなという。
安藤:ペットはかわいいかわいいって思うけど、聴導犬は一緒に社会で生きるパートナー。だからそれなりに、覚悟が必要。
平:みなさんの意見を聞いてると、ユーザーさんと補助犬のちゃんとそれぞれの形を作りあげていってるじゃないですか。だからそれがすごいなと。私たちの知らないこともどんどんこう広めていって、補助犬を受け入れてくれる場が広がっていたらいいなって思いましたね。
玉木:今回のは、みんなが補助犬を利用しましょうっていう話ではなくて、こういう選択肢もあるんやでっていう話で。その上で大事なのは、補助犬と生きていくことを選んだ人たちが困らんようにしたり、いろんな気を使わんでも補助犬を使いたい人が使える社会になっていくことが大事なんやと思うけどな。
レモン:皆さん、今日はありがとうございました。テレビの前のあなたも、ぜひおせっかいに広めてください。お願いします。ありがとうございました。
※この記事は2022年11月11日放送「わん!ダフルワールド ~知られざる補助犬の世界~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。