世の中のふつうをアップデートするシリーズ企画「#ふつうアップデート」。「俳優編」の最終回をお届け。「俳優になれるのは心身ともに健康」という業界のふつうはアップデートできるのか!?
<番組の内容>
▶︎障害のある人とない人がいっしょに作品を作るのはたいへん!?
▶︎ろう者・難聴者専門の俳優養成講座「デフアクターズ・コース」
▶︎神戸塾「卒業公演」塾生たちによる1年半の集大成!
<出演者>
栗原類さん(俳優・モデル)
深田晃司さん(映画監督)
神戸浩さん(俳優)
佐藤慎哉さん(演出家・脚本家)
今井ミカさん(映画監督)
レモンさん(番組MC)
玉木幸則(番組ご意見番)
あずみん(番組コメンテーター)
<VTR>
神戸「続けて、カメラ気にするな」
藤原「いつか、いらない存在って思われるんじゃないかなって、それがすごい怖くて」
関岡「車椅子って理由で、歩けないって理由で、全部、全部ダメになったんだ」
おととし始まった障害者専門の俳優養成塾「神戸塾」。
鴻上「演技っていうのは自分の願望を表すものではなくて、自分の一番、実感を表現するもの」
9人の塾生たちは、「俳優になれるのは心身ともに健康な人」という業界のふつうをアップデートしようと挑戦してきた。
前田「(オーディション選考の)書類に車いすってこと書いていたんですけど。それで書類自体も通らなくなったので」
Nyanko「聞こえない人には芝居ができないと思われていて」
「障害のある人も俳優になれることを証明したい」今日は、1年半に渡るシリーズの集大成! 「神戸塾」卒業公演!
前田「演技力がまだまだなのは分かるけど、チャンスがあるならやりたい」
さまざまな障害のある9人が主人公の最初で最後の晴れ舞台。ところが、いっしょに劇を作るのは、想像以上にたいへん!!
佐藤「それ以上言うのは、わがままだよ」
Nyanko「『ざんまい』ってなんだろう、ざんまいだから『すし』か?」
障害のある人も、ふつうに俳優になれる社会って、なに??スタジオで徹底討論! バリバラ「#ふつうアップデート俳優編ファイナル」開幕!
<VTR>
太田「雨大丈夫だった?」
藤原「うん大丈夫」
大塚「俺ちょっと濡れちゃった」
去年11月から始まった、卒業公演の稽古。脚本、演出を務めたのは、佐藤慎哉さん。東京の劇場を中心に活動する気鋭の演劇人だ。佐藤さんは、神戸塾で実際に起きた出来事をもとに、オリジナルの脚本を書いた。
物語の主人公は、本人役で登場する9人の塾生たち。あるドラマの主演1人を「話し合いで決めて欲しい」と、ディレクターから告げられる。
「主演にふさわしいのは誰か」たった1つの椅子を巡り、9人の本音が浮き彫りとなる!
佐藤「手話通訳の人に、居てもらった方がいいので。なので、偶然手話通訳の人が隣にいるようにしたい」
神戸塾の集大成となる卒業公演。しかし、9人全員が共演するのは今回が初めて。
大城(手話通訳)「こんな言い方したくないんだけど、これからも俳優を続けるつもりがない人は降りてほしい」
Nyanko(手話通訳)「…どうして?」
さらに、佐藤さんも障害のある俳優を9人同時に稽古した経験はない。耳が聞こえないNyankoさん。会話のタイミングや、脚本を読むのに苦労していた。
Nyanko(通訳)「そこ『いじる』の『いじる』って何かな」
“いじる”という言葉が、“こばかにする”という意味であることを初めて知ったNyankoさん。
さらに…
Nyanko(通訳)「たとえば『仕事ざんまい』ってどういう意味か分からなくて、『ざんまい』ってなんなんだ?って。ざんまいだから『すし』か?でも、すしとバイトざんまいってどういうことなんだろう?って」
佐藤「そのことに熱中するということですね。『読書三昧』とか」
実は、Nyankoさんが使う「日本手話(にほんしゅわ)」は、独自の文法を持つ、日本語とは異なる言語。そのため、脚本のセリフを一つ一つ、日本手話に翻訳していた!
Nyanko(通訳)「わからないまま進んでいる感じがして、どこを読んでいるんだろうとか、(日本語のセリフが)入り込んでこない感じがします」
佐藤「バックボーンが全然違う俳優が集まっているっていうのと、コミュニケーションの取り方がみんな違うので、僕ら(聴者)が、なんとなくで通じあっている価値観っていうか、空気感みたいなものが、翻訳しないといけないときに、大変なんだなと感じましたね」
障害のある人とない人が、いっしょに作品をつくるのはたいへん!? スタジオでじっくり考えよう!
コミュニケーションがたいへん!?
<スタジオ>
レモン:「#ふつうアップデート俳優編ファイナル」! 前回に続き、NHK大阪放送局のスタジオから公開収録でみんなで考えていきます。どうですか?類ちゃん見て。
栗原:僕らが何を言っているのかとか、大勢の中で、会話を覚えていくっていう、その人ならではの苦労ってのが、改めてこの映像を見て現実的に感じました。
あずみん:スタジオには神戸塾卒業公演の脚本・演出を務めた佐藤慎哉さんにお越しいただいています。
レモン:佐藤さん、今回の稽古大変やったんですか。
佐藤:大変でしたね。
レモン:どういうところが?
佐藤:何かを伝えた時に、このニュアンスっていうのは、手話じゃうまく表現できないんだなって思ったりするタイミングとか、あと、僕が伝えようとした言葉の概念がもうないみたいな。
レモン:ズバリ、塾生のNyankoさん、今回のこの稽古でね、何が一番大変でした?
Nyanko(通訳):佐藤さんは手話がわからないので、私の手話の演技ですね。見ておられて、評価がない、難しくないのかなって。私の演技はいいのか、それがわからないんですね。
レモン:「それいいね!』とかないの?佐藤さん。ない?
Nyanko(通訳):全くない。
佐藤:いや、僕笑ってます、笑ってます。結構Nyankoさんが面白いことやった時は。見てますよね?僕が笑ってる顔ね?
Nyanko:・・・
レモン:ちょっと待って。これね、笑い事じゃない皆さん。気づきます? ここにもうすでにコミュニケーションのミスが起こってるわけですよ。
あずみん:確かに。
レモン:すごいですね。今日この収録で知ったんでしょ?
佐藤:そうですね、そんなさみしい思いしてると思ってなかったですね。
レモン:今のやりとり見て深田監督いかがですか?
映画監督・深田晃司さん。2022年公開の映画「LOVE LIFE」が、ベネチア国際映画祭
コンペティション部門に出品されるなど、国際的に活躍している!
深田:私たちは分かり合えることはできるけど、簡単に分かり合えるもんでもないぞっていうことを、いろいろと知るんですよね。こんなにズレがあるんだってことは、実際に同じ空間にいて、同じ仕事をするから初めて気がつくことだと思うので。
レモン:ちょっと佐藤さん、ふだんろう者の方とか、障害のある人とのおつきあいってありました?
佐藤:ないですね。
レモン:友達もいらっしゃらない?
佐藤:ろうの方との交流関係はないですね。
神戸塾の塾生と出会うまで、障害のある人とほとんど接点がなかったという佐藤さん。これに対し、番組のご意見番・玉木さんは・・・
玉木:そもそも障害者といわゆる健常者、障害のない人が地域とか学校で、分けられてんのが「ふつう」なんね。だからコミュニケーションもないまま、今回演劇で「監督やって、はいどうぞ』って、それは、難しいと思うねんね。
なんかうまいことバリバラにハメられたよな。
レモン:確かに利用されてるわ。
障害のある人とない人は、子どもの頃から分けられているのが、「ふつう」。“まぜこぜで暮らすのが大事”という玉木さんの意見、あなたはどう思いますか?
デフアクターズ・コース
<VTR>
聞こえない ろうの俳優を、聞こえる演出家が指導していた神戸塾の稽古。一方で、ろう者や難聴者の俳優を養成する専門プログラムが去年秋、東京で開かれた。演劇講座「デフアクターズ・コース」。受講生は12人で、全員、ろう者か難聴者。神戸塾のNyankoさんもその一人。講座は、聴者とろう者がペアで講師を務めるのが特徴。
この日は、深田晃司さんとろうの映画監督・今井ミカさんが担当した。主催者の1人で、ろうの映画作家・牧原依里さんに、ねらいを聞いてみた。
牧原「今は舞台とあとは映画、ドラマ、幅広い分野で、やはり当事者ももっと入って行かなければいけない。今後社会を変えるためには養成が必要だということで、さまざまなタイミングが重なって、今回立ち上げの経緯になると思います」
この日、受講生はグループ別で即興劇を演じることに。
深田「ある程度、芝居の中が固まってきたら、後は動きながら作っていくといい」
聴者の深田さんは、手話通訳者を介して、受講生に演技のアドバイスを伝える。一方、ろう者の今井さんは…。
今井「『いただきます』は文化としてなのか、手話としてなのか?」
演技に加え、日本手話のリズムやテンポなど、表現の指導も行う。
さらに、受講生と話すとき、行うのが…。
今井「どういう立ち位置や動きにするとおもしろいか、他のグループにコメントすることにもチャレンジしてもらいたい。分かった?みなさん質問ない?大丈夫ですか?」
受講生「ありがとうございます」
話し終わりに出す「OKサイン」。受講生に話の内容が伝わっているか、必ず確認をとる。
今井「一回止まって話をして、みんながわかってから、質問がないかどうかを確認する、わからない人がいれば遠慮なく言っていただいて、実際にわかったところから次に進める」
参加した受講生の感想は・・・?
平井「なぜこういう感情を表すのか、説明してくれるので、きちんと授業として教えてもらっていると今、感じています」
奥村「ろう者、難聴者のための手話通訳者がついていたり、ろう者の講師がいたり、そういうのは今までなかったので、演技の経験はあるけれども、学ぶ場所がなかったので、新しい学びがたくさんありました」
制作者の多様性がもたらすもの
<スタジオ>
レモン:深田監督、これ授業されてみていかがだったですか?
深田:はい。えーもうめっちゃくちゃおもしろかったですね。
レモン:あーそうですか!
深田:聴者である自分が、ろう者の聞こえない人の手話の芝居を、簡単に演出なんてできないんですよね。とても自分ではできないような、きめ細かいその手話に対する、手話言語に対する指導、その言語に対する指摘とかを聞けて、自分にとってもすごく、学びが多かった。
レモン:スタジオには今井ミカさんもお越しいただいています。よろしくお願いします。
今井:よろしくお願いいたします。
レモン:ろう者の今井さんと、聴者の映画監督と一緒に講師をされまして、どういう発見がありましたか?
今井:例えば 聴者は「あの~すみません」ってよく言いません? 「すみません」は「ちょっといいですか」 という意味を指していますよね。台本に「あの すみません」があると、ろう者は“謝罪”の意味に捉えてしまいます。手話の「すみません」には“謝罪”の意味しかないからです。そのため、謝罪の意味として セリフを言ってしまったろう者がいたんですが、このような“セリフの解釈”にズレが起きることがありました。そこを深田監督と相談して“謝罪”の意味ではない手話に変えました。(ろう者と聴者は)背景と文化が違うからこそ、こうしたズレが生じるのであり、私にとって興味深い発見でした。
「ろう者が安心して学べる場がほとんどない」という今井さん。2年前、映画を学ぶ学校へ通っていたとき、こんな苦労が……
今井:結局 手話通訳が必要になるわけです。「手話通訳料は誰が払うべきか」 そこも学校側と相談しましたが、学校側からできるサポートをしてもらいながら手話通訳料は自分たちで負担する形で受講した現状があります。
深田:ろう者も聴者も学べる環境をちゃんとありつつも、やっぱり今後は混ざって一緒に学ぶ機会っていうのが増えると良いなとは思います。今後ろう者のあの俳優さんがどんどんどんどん進出していくとなっても、聴者とろう者が一緒に仕事をするという場になるはずなのでそういった場もきちんと作っていかないといけないなというふうに思います。
制作現場に、いろんな人が“まぜこぜ”でいたほうがいいという深田さん。改めて、「俳優になれるのは心身ともに健康な人」という業界のふつうを、どうすればアップデートできるか考える!
栗原:障害者の人たちは、その人たちだからこそできる表現っていうのがあると思うんですね。だから、ある意味そういう人たちがより活躍しやすい場だったり、題材だったりが増えていったりするのは大事かなって思うんです。
今井:私も映画制作をやっている立場の映画監督ですので、当事者だから作れる、書ける脚本もいっぱいありますので、(当事者が作り、出てくる)作品を見たいし、違う世界を知る作品が増えることでアップデートできるんじゃないかなと思います。
佐藤:テレビにしろ映画にしろ、露出が増えることがすごく大事かなと思っていて。後々に、子どもたちが見たときに健常者しか映ってなくて、「いや、こんな世界ウソだよ」っていう気持ちが芽生える世界がくれば、障害のある人も当たり前に出れる世界がやってくるんじゃないかな。
あずみん:障害あるなし関係なく、「将来の夢って何ですか?」って聞かれたときに、胸をはってなんでも答えられる世の中になって欲しいって思いました。
玉木:諦めるんじゃなくて、「これがしたい」って思えるような、環境やと思うんやね。それはいろんな人がまぜこぜで生きていくことで、実現していくん違うかな。
神戸:去年からさ〜民放のドラマでろう者の役がバズってるけど、きれいな女優さんがやってるよな〜。神戸塾長、もうダメだな〜頑張るぞ!お芝居。
レモン:神戸ちゃんらしい
演劇 神戸塾「卒業公演」
「俳優になれるのは心身ともに健康な人」という業界のふつうと1年半、向き合ってきた
神戸塾の9人の塾生たち。この先、自分たちはどんな俳優になりたいのか? みんなで考えた答えを卒業公演で披露します。
俳優のふつうアップデートは、まだまだ続きますが、神戸塾の物語は、いったんここまで。1年半おつきあいいただき、ありがとうございました!
次に9人と出会うのが、みなさんがたまたま見る映画やドラマでありますように……。
※この記事は2023年1月27日放送「#ふつうアップデート・俳優編②」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。