ひとたび始まった戦争は、たとえ終わったとしても、深い傷跡を残し、生き残った人々に喪失感、徒労感を与えます。とりわけ第2次世界大戦後のドイツ、ヒトラー亡き後の首都ベルリンを記録した映像には、凄まじい姿が刻まれていました。絶望、破壊、暴力、秩序を失った社会のカオス。ドイツ人とユダヤ人の立場の逆転。
一方で、終わりは、始まりでもありました。ドイツでは、敗戦後の空白の時間を「Stunde Null(ゼロ時)」と表現するそうです。その言葉にヒントを得た今回の番組では、悲劇を描くだけでなく、民主主義、国際協調に価値を置き、移民受け入れに積極的な今のドイツ・ベルリンにつながるような希望の芽を探すことも重要であると考えました。
「戦後ゼロ年」は、すべてを失った「絶望」であると同時に、すべてをリセットして再出発できる「希望」でもあったのではないでしょうか。(担当ディレクター)