「想像力を大切にして見て欲しい」中央アフリカ “忘れ去られた紛争”を写真に

NHK
2023年4月11日 午後5:39 公開

アフリカの内戦で撮影された、戦闘で片目を失った男性や、武装勢力に襲われた少年。そして、家を焼かれた一家の写真。

日本人写真家の青木弘さんが撮影した、レンズを向けた先にある“戦場に生きる人々”の姿をみつめます。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で4月10日に放送した内容です)
 

・中央アフリカ共和国という国とは

高橋キャスター:写真家の青木さんは、アフリカの中でも中央アフリカ共和国にこだわって撮影を続けているとそうですね。別府さんは、ことし(2023年)1月まで4年半、アフリカに駐在していましたが、中央アフリカはどういう国ですか?

別府キャスター:中央アフリカは文字通り、アフリカ大陸の真ん中に位置します。
宗教間の対立を背景に激しい内戦が続いてきました。
 

別府キャスター:私は2020年11月に取材しましたが、政府軍のコントロールが及ぶのは首都など一部に限られ、地方では戦闘が続くなど緊迫した情勢でした。その首都でも多くの住宅が破壊されていました。
 

別府キャスター:国際的な関心が十分ではなく、「忘れ去られた紛争」と呼ぶ人もいました。

20代の半ばから、20年にわたり中東やアフリカの紛争地を撮影してきた青木さん。中央アフリカ共和国にこだわる思いを聞いてきました。
 

・紛争被害者を撮ることに、躊躇(ちゅうちょ)したけれど

別府キャスター:現場に入って紛争の被害を受けた当事者を自分の目で見て、そしてそれを写真に収める時はどういうお気持ちですか?

青木さん:できればこんな暴力的なことはしたくないと思っています。(彼らに)レンズを向けてシャッターを切るということは、絶対暴力的で、僕の中ではいまだに慣れないではいます。
 

青木さん: 最初に行った紛争地がパレスチナでした。

傷ついた子どもをシャッターに切ったのを最初で今でも覚えているんですけど、「撮れ」って言ったのがその子のお父さんとお母さんだったんですよ。
 

傷ついた自分の子どもを、しかも外国人に写真を撮られることで一番嫌なのは、本人、もしくは本人以上にお父さんやお母さんだと思うんですけど、「何やってるんだ!ここでシャッターを切るのはお前しかいないんだ。これをシャッターに切って世界に知らして欲しい」って言われて、僕の中で1つスイッチが入った瞬間でした。
 

・「ダイヤモンドが採れなかったら、私たちは幸せに暮らせていけたのに」

青木さんが中央アフリカで撮影を始めたのは6年前。内戦による破壊にとどまらず、その背景にもレンズを向けてきました。

別府キャスター:印象に残ったのが、鉱山で働く大勢の人の姿が映っている鉱山の写真です。
 

青木さん:中央アフリカという国では、表向きは宗教紛争と言われていて、その奥にある背景がダイヤモンドを巡る資源の利権争いだと、現地に行って初めてそれを思い知らされました。
 

青木さん:この現地の人たちを写真撮らせてもらう時に言われたのが、「ダイヤモンドが採れなかったら、私たちは幸せに暮らせていけたのに」という言葉がずっと残っていて。

ダイヤモンドが採れる国がそんなに苦しまなきゃいけないのは、皮肉ですし。
 

・村を焼かれ家族も殺された“リチャード”は僕だったかもしれない

青木さんが偶然出会ったのが、リチャード・ボザンドさんです。

10年ほど前、住んでいた村を焼かれ家族も殺されたあと、戦闘に参加しました。しかしその後、憎しみを乗り越えたいと、自ら武器を捨てたといいます。

厳しい現実の中で、平和への道を選んだリチャードさんに青木さんは興味を抱きました。

青木さん:戦っている真っただ中なのに武器を置いたっていう、そんな覚悟を決められるヤツがいるんだって。彼の話から、村を全部焼き払われたり、家族を全部殺されたり、命からがら自分だけ生き延びてしまったと聞いて、僕の中で、きっと彼はしょく罪というか大きな十字架を背負っているような人間に思えて。
 

リチャードさんを追う中で、一度は武器を捨てた仲間が再び戦地に戻ってしまう現実も知りました。

青木さん:「この写真に写っている8割、9割の人間がもういないんだよ」とリチャードから聞かされて。生きていくために向こう側に戦いに戻る。

見る人の想像力を大切にして欲しいとモノクロの写真を撮る青木さんですが、1枚だけカラーで撮影した写真があります。

森の中で、民族衣装を着たリチャードさんです。

青木さん:「勝手に想像しないでくださいね。もし分からないことがあったら僕が一語一句説明します」っていう覚悟で撮った1枚です。

僕が会ったリチャードという、リアルな戦争の中で生きている彼は、ただの何にも変わらない人間で、たまたまこの時代にああいう背景があって武器を持って戦わなくてはならなかった。もしかしたらリチャードは僕だったかもしれないし。
 

・今、僕にできることを尽くしたい

別府キャスター:「遠いアフリカの、聞いたことがあるのか無いのか分からないような国の紛争は、自分たちと関係がない」と言いきるような人もいないわけじゃないと思うんですけれども。
 

青木さん:「日本人で日本に住んでいて、日本の問題がこんなにあるのに」って言われます。

日本ではもちろん法律も決まってあるし制度もあるし、きちんとした手続きをとれば、ちゃんと子どもが飢えて死ぬっていう国ではないので。
 

青木さん:ただ、アフリカは誰も手を出さなかったら本当に飢えて死んじゃうというのが一番の違いですかね。

僕が今できることと言えば、アフリカなのかなと思って活動しています。
 


高橋キャスター:1枚の写真がどれだけ見る人の想像を広げるのか圧倒されました。青木さんの撮影への覚悟も伝わってきましたが、別府さんは、記者として、中東やアフリカ、それに去年はウクライナと紛争地の取材を長くしていますが、どう感じましたか?

別府キャスター:青木さんが、元戦闘員のリチャードさんについて、「時代や国、状況によっては自分もリチャードさんになっていたかもしれない」と、話していたのが印象的でした。

考えてみれば、世界のことで、自分や日本と完全に無関係なことはないと思うんです。

地理的にも、状況的にも、今の日本の生活とは遠いとしても、どれだけ共感できるか。
国際感覚というとなんだか大げさですが、何もそんなに難しいことではなく、世界の様々な境遇の人に共感できるかどうかってことなのかなとも思いました。以上、特集でした。
 
 

■アフリカに関する記事はこちらにも

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