米・バイデン大統領が自動車ストライキの現場に

NHK
2023年9月29日 午後5:37 公開

バイデン大統領が労働組合のストライキの現場を訪れました。現職の大統領としては初めてとみられます。アメリカのUAW(全米自動車労働組合)が大手自動車メーカー3社に対するストライキを続ける中、組合員を支持する姿勢を強調しました。

来年(2024年)秋の大統領選挙に向けて労働者の支持を固める狙いがあるとみられます。別府正一郎キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で9月27日に放送した内容です)
 

・賃上げと雇用を求め1万8,300人が参加

今回のストライキが始まったのは、9月15日。最初は、3つの工場で行われていましたが、1週間後には部品を配送する施設にも拡大し、あわせて41か所に増えました。
 

この図は、ニューヨークタイムズが22日付けでまとめた、ストライキ現場の場所を示す地図ですが、広い範囲に広がっています。この段階で、3つのメーカーで働く、UAW(全米自動車労働組合)の15万人の組合員のおよそ12%にあたる1万8,300人がストライキに参加していたということです。
 

組合員が求めているのは賃上げと雇用です。フォードで28年間働いているという労働者は、BBCの取材で、「時給は32ドルであり、25年間で4ドルしか上がっていない」と話しています。時給32ドルは、日本円ではおよそ4,700円。日本の感覚からすれば高いと感じる人が多いと思いますが、アメリカではインフレも進んでいます。この労働者は「生活が苦しい」と訴えていて、今回、初めてストライキへの参加を決めたほどだということです。
 

・有権者の動向が揺れる「スイング・ステート」ミシガン州

雇用で言えば、ガソリン車に比べて、部品の数が少ないEV(電気自動車)の普及によって、雇用の縮小につながることへの懸念があります。こうした中で、組合員を支持する姿勢を強調したバイデン大統領ですが、この動きは当然、来年(2024年)秋の大統領選挙を意識したものです。
 

大統領が訪れた中西部ミシガン州は、選挙のたびに有権者の動向が揺れる「スイング・ステート」のひとつです。2016年の大統領選挙では、共和党のトランプ氏が勝利しましたが、2020年は民主党のバイデン氏が勝利しました。

来年秋の大統領選挙でも激戦州になるのは間違いありません。そこを訪れて、勝敗のカギを握ると見られる労働者にアピールしたいと考えるのは当然のことでしょう。しかも、大統領選挙への立候補を表明している共和党のトランプ前大統領も、27日に同じミシガン州内で組合員を前に演説を行う予定です。
 

一方で、バイデン大統領の行動について矛盾を指摘する声もあります。というのも、ストライキの背景にあるEV普及による雇用縮小への懸念ですが、バイデン大統領こそが温暖化対策としても、EVの普及を強く後押しているのです。トランプ前大統領は、このことを攻撃材料にしています。
 

大統領選挙を前にした労働者の支持をめぐるアピール合戦は、今後も激しさを増すことが予想されます。

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