ロシア西部で戦闘 関与を主張するロシア人組織とは

NHK
2023年5月24日 午後5:35 公開

ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入して戦闘が起き、死傷者が出ていると発表しました。

ウクライナ政府は関与を否定する一方、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織がSNSでロシア領内に入って戦闘を行っていると主張しています。

ロシア西部に侵入したとされる武装組織はいったい何者でしょうか?別府キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で5月24日に放送した内容です)
 

・“ロシア反体制派”の武装グループ、ウクライナとのつながりは?

まず、今回の侵入に関与したと見られているのは、「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」を名乗る、2つの組織です。いずれもメンバーはロシア人などで、ロシアのプーチン政権を批判し、去年(2022年)、ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた後に結成されたと言われています。つまり、“ロシアの反体制派の武装グループ”といえますが、一方でメンバーの人数は分かりません。

2つの組織の政治的な姿勢には違いもあると言われます。「自由ロシア軍」についてBBCは、「侵攻に反対し、政治的には自分たちを中道派だと位置づけている」と伝えています。一方で、「ロシア義勇軍」についてエコノミストは、「極右の政治思想に傾倒し、ロシアのネオナチ主義者も含まれている」としています。
 

気になるのは、ウクライナ政府とのつながりです。組織はウクライナ領内にいて、そこから、国境を超えてロシア領内に侵入したと見られます。これについて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「状況を注視している」としながらも、「ウクライナとは関係がない」として関与を否定しています。

ただ、フィナンシヤル・タイムズは、「ウクライナの国防省情報総局の当局者が、『当然、一定のコミュニケーションはある』と認めた」と伝えています。とはいえ、この当局者にしても、ウクライナ軍の関与は否定しています。一方、ロシア政府は、「ウクライナ軍のテロリスト」だと主張しています。
 

・過去にも“侵入”あり その目的は

さらに気になるのは、今回の侵入の目的です。ことし3月にも「ロシア義勇軍」を名乗るグループがロシア西部の別の州に侵入したとして注目され、こうした侵入が取り沙汰されるのは今回が初めてではありません。ただ、今回はそれよりも規模が大きいと見られます。

ニューヨーク・タイムズは、「ロシアが、ウクライナの戦闘の前線ではなく、国境により多くの兵力を投入せざるを得なくさせる目的や、ロシア国民の間で対立があることを見せる狙いがあるのではないか」とするウクライナの元政府高官の分析を伝えています。一方で、ロシア政府が、「ロシアに戦争が仕掛けられている」というナラティブを主張しやすくなるかもしれません。
 

情報は錯綜し、まだはっきりしないことも多い、武装組織。

ただ、少なくとも、ロシアの国境の管理や防衛が意外にもろいのではないかという印象を与えているとはいえそうです。

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