ウクライナ まん延する汚職 相次ぐ政府の要人や幹部の解任

NHK
2023年1月26日 午後4:12 公開

ウクライナでは、汚職にかかわったとして政府の要人が解任される事態が相次いでいます。

国防省の次官が前線の兵士に供給する食料の価格を水増ししていた疑いで更迭されたほか、大統領府の副長官は、外国から提供されたSUVを不正に入手したとみられています。

ゼレンスキー大統領は、綱紀粛正の徹底を図る姿勢を示していますが、反転攻勢への影響が懸念されています。望月キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で1月25日に放送した内容です)
 

・ウクライナ 相次ぐ政府の要人や幹部の解任

ウクライナで相次ぐ政府の要人や幹部の解任。イギリスの有力紙ガーディアンは、解任された政府や州の要人は1月21日以降、あわせて15人にのぼると伝えています。

発端となったのは地域発展省の幹部が、前線への物資の調達をめぐって日本円でおよそ5000万円の賄賂を受け取っていた疑いで逮捕されたことでした。この幹部は22日に解任されました。

そして、解任された大統領府のティモシェンコ副長官はゼレンスキー大統領の側近です。

ウクライナ侵攻ではたびたびスポークスパーソンとしての役割も担ってきました。解任の理由は明らかにされていませんが、ウクライナのメディアは去年(2022年)、ティモシェンコ副長官が人道支援に使用する目的で政府に寄付されたSUVを私物化していると報じていました。

また、国防省のシャポワロフ次官については、軍の食料の調達をめぐって市場価格を大幅に上回る高値を支払っていた疑惑が持たれていると、放送局のフランス2が伝えています。

さらに、シモネンコ副検事総長は、現在、成人男性の国外への渡航は原則禁止されている中で2022年12月、スペインで休暇をとっていたことが明らかになっています。

相次ぐ解任を受けてゼレンスキー大統領は、侵攻が終わるまで、政府高官が仕事を除いて国外に出国することを禁止する措置を発表し、綱紀粛正の徹底を図る姿勢を示しました。

ロシアに反転攻勢を続けるウクライナにとって、政府要人の汚職などのスキャンダルは、大きな痛手になりかねません。
 

・信頼を失いかねない汚職という“敵”

ウクライナは欧米から巨額の軍事支援を受けており、春の大規模な攻勢に向けてさらなる支援を求める中で各国からの信頼を失いかねないことになります。

また、念願のEUへの加盟も遠のくことになります。ウクライナでは侵攻開始前から汚職がまん延し、汚職問題を調べている国際的なNGOによりますと、ウクライナの汚職撲滅度は180か国中122位です。

EUは2022年6月、ウクライナに交渉開始の前提となる「加盟候補国」の立場を認めましたが、法の支配や汚職対策などに課題があるとしてウクライナに対応を求めています。何より、長期にわたって激しい攻撃にさらされながら戦意を失わず自国の勝利を信じる兵士や国民に対して顔向けができない行為です。

ゼレンスキー大統領はロシアという外の敵とともに、汚職撲滅という内の敵との闘いも迫られています。
 

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