「研究お助けスペシャル」~季節の移ろいがさらに楽しめる!~

NHK
2023年5月7日 午後7:55 公開

◎制作こぼれ話①「セミの寿命は7年7日はウソ?」

今回、謎多き外来ゼミ・タケオオツクツク大繁殖の秘密を探るべく、地中の幼虫探しを行いました。「それじゃない?違うな・・・あ!イター!!」。みんなで顔中土まみれになり一喜一憂する姿は、何も知らずに通りがかった人が見たら、ちょっと異様だったかもしれません。そして、掘り出した幼虫が元気に動く姿を見ていると、セミの一生が思い浮かんできました。「土の中で7年間を過ごし、地上に出てからたった1週間で死んでしまうのか・・・」と少し感慨深いものが・・・。しかし、日本セミの会の碓井徹さんに聞くと「これまでセミ7年生存説が言われてきましたが、実はよくわかっていません」とのこと。え?地中で7年というのはウソかも?どこまでわかっているんでしょう。

タケオオオツクツクの幼虫 左:終齢(5年目)右:4齢または3齢

改めて調べてみると・・・、ありました。今からおよそ90年ほど前、東北大学の佐藤隼夫さんの研究です。「1933年にセミの飼育室に208匹のアブラゼミと123匹のミンミンゼミを放し、1939年に羽化した2種の死体が見つかった。しかし翌年以降は発生しなかった。よって幼虫期間は丸5年であることが初めて確認された」とのこと。あれ、1933年から1939年だと、幼虫期間は6年じゃないの?と思われるかも知れませんが、そうではありません。セミは木に産卵しますが、産みつけられた卵はすぐにはかえらず、1年間は卵のまま木の中にいて(1年目)、翌年の春に地中に入り、丸5年は幼虫として過ごし(2年目から6年目)、7年目の夏に成虫として地上に現れた、というわけです。しかし、最近の研究では、幼虫が地中にいるのは丸5年とは限らず、気温や食べ物などの状況によって地上に出るのが数年も前後すること、さらに成虫になってもおよそ40日も生存することが分かってきました。ではなぜ7年生存説がずっと言われてきたのでしょうか?

アブラセミ「地中で7年、地上で7日」とよく言われるが・・・

碓井さんは「7年間辛抱強く過ごし、たった1週間で死んでしまうというセミのはかなさが、日本人のメンタリティーに受け入れられ、ずっと語り継がれてきたのかもしれませんね」とおっしゃっていました。一方、今回のタケオオツクツクは6年生存と考えられています。つまり、産卵から1年は樹上(竹上?)、地中で丸4年、6年目の夏に地上に出てくるというサイクルです。日本セミの会ではこの説を実証するために、幼虫を採取し、現在会員の飼育施設で育てているそうです。果たして結果はどうなるのか?夏が待ち遠しいです。

ディレクター 松尾 知明

日本セミの会のみなさん

↓↓タケオオツクツクの調査を進めていきます。よろしくお願いします↓↓

◎制作こぼれ話②「ビワって種が大きくて食べられる部分が少ないですよね、はウソ?」

ビワ、おいしいですよね。私も大好きで、ハクビシンほどではないですが、たくさん食べてしまいます。ビワの特徴のひとつがタネの大きさ。食べられるところがたくさんあった方がうれしいのですが、大きなタネが中心にあるビワは、果肉が少ないな~という印象がありました。そこで、果実の食べられる部分の重量割合「可食率」を調べてみると面白いことがわかりました。

「ビワの実」タネが大きくて食べられるところが少ない?

品種によっても違いますが、ビワの可食率はおよそ65~70%。さあこれを多いと思うか、少ないと思うか?リンゴ、モモ、カキなどの可食率は80%以上。まるまる食べられるトマトやイチゴなどは100%。これらに比べれば、はるかに少ないと言えます。ところが。じつはミカン類やバナナと比べれば見劣りしないというんです。バナナの可食率は67%、なんとビワとほぼ同じ。え?どういうこと?バナナってまるまる一本食べられるじゃないですか、と一瞬混乱。あ!皮だ。バナナの皮ってけっこう分厚くて重量もあります。言われてみればたしかに食べられるのは7割くらいかも。さらに温州ミカンの可食率は70%で、これもビワとほぼ同じ。夏ミカンなど外側の果皮が厚い晩柑類(ばんかんるい)では可食率50%を切るものもたくさんあります。そう考えると、ビワは食べられる部分がわりと多い果物とも言えるかもしれません。甘くおいしくて意外と可食率も高いビワ。生きものたちが集まってくるのもわかりますね。(ハクビシンのようにタネまで飲んでしまえば可食率は90%以上か・・・?いや、タネは食べても栄養にできないから、どうなんでしょう。)果実の柔らかさや皮の薄さも、生きものたちから人気が高い理由かも。

 人間にとってのビワは、古くから“薬用”としての利用が盛んで、中国や日本でもいろんな書物に記録が残っているそうです。主として葉を利用しているものが多いようです。江戸時代に京都烏丸通りでは、ビワの葉の煎じ薬「枇杷葉湯」(びわようとう)を売り歩いていたと伝えられています。東京でも明治期には町なかで売っていたそうです。夏バテや食中毒予防の効果を期待していたんだとか。

ビワは病害虫が少なく、農薬を使わなくても比較的容易に栽培できるので、つくりやすい家庭果樹と言えます。ビワの実は、生食用はもちろん、シロップ漬けにしてビン詰めや缶詰めにしてもおいしいですし、ビワ酒、リキュールなどにも利用されます。

熟したビワは、収穫、荷造り、輸送などの過程で傷みやすく、日持ちも悪いので非常にデリケートな果物といわれています。近所においしいビワの木があるとラッキー!お庭に誰かが運んできたビワが生えてきたら、これ幸いと育てて、果実がなったらもぎたてを是非味わってみたいですね。(おいしい果実がなるまでにはそれなりに時間がかかるそうですが・・・)そんなことを考えながらビワの映像を眺めていると、どんどん食べたくなってきます。ビワの季節ももうすぐです。

ディレクター 山田 武志

ビワの調査でも大活躍した市民科学のサイト「シチズンラボ」。その他の調査もぜひご覧ください。

☆ブログ担当スタッフから☆

番組の放送は5月、もうすぐビワの季節、その後は、セミの季節がやってきますね。番組とブログで得た情報を知っているだけで、いろいろ楽しめそうです。街なかでビワの木を見たら「お、これは誰が植えたのかな?」セミが鳴いているのを聞けば「これはまさか、タケオオツクツクか?」なんて、考えながら歩けそうです。

さて、今回の番組は4人のディレクターが協力して作り上げました。そのためブログも、「セミ」パート担当の松尾ディレクターと「ビワ」パート担当の山田ディレクターの2人に書いてもらいました。あとの2人は誰かというと、ロケの映像をどうまとめるか考え、編集して、番組を完成させた石垣竜ディレクター。そして、ミニコーナーの「学会」パートと自由研究おたすけ企画を担当している野口大心ディレクターです。それぞれのディレクターが過去に書いた記事のリンクも下においておきますので、ぜひご覧ください。

関連ブログ記事

石垣竜ディレクター担当↓

山田武志ディレクター担当↓

松尾知明ディレクター担当↓

野口大心ディレクター担当↓

番組の最後にご紹介した自由研究おたすけ企画のページです↓