「アナダコ」制作ウラ話~タコは陸でも息ができるのか?~

NHK
2022年10月2日 午後7:55 公開

◎制作こぼれ話「タコは陸で息をしてる?」

番組でご紹介した、陸で狩りをするアナダコ。不思議に思ったのは、陸上を動き回っている間、呼吸はどうしているのか?インターネットには「タコは胴体(マンガで頭のように描かれる部分)にエラが入っていて、そのエラが湿っていれば陸上でも呼吸できる」などの情報が出ています。なるほど、そんなもんかと思いつつ、頭足類の行動を研究する琉球大学教授の池田譲さんに聞いてみると、意外な答えが!じつは、タコが陸でエラ呼吸しているという科学的根拠はないそうで、「あえて例えると、私たちが息を止めて行動するようなものでしょうか。ヒトが海に潜った状態とでも言いましょうか」とのこと。息を止めて陸を疾走しているとは、かなり身を削った手段ですね。皮膚呼吸などの可能性もあるようなのですが、アナダコについて調べた詳しい研究はありません。頻繁に陸に上がるアナダコならではの、なにか特別な能力が備わっているのかもしれませんね。

陸を歩くアナダコ

陸を歩くアナダコ

◎撮影の現場から「“ウネリ”が流行語大賞に!?」

皆さん、ふだん“ウネリ”という言葉を使うことはあるでしょうか?遠くに台風などがあると、海面には風が吹いていなくても「波の山から山の間隔が大きな波」、ウネリが発生します。アナダコの取材では、このウネリにかなり悩まされました。外洋から遮るものがない小笠原は、ウネリの影響をもろに受けます。天気は快晴、完全な無風、普段なら最高の撮影コンディションのはずが、いざ船で磯まで行ってみると大荒れ。時折くる大ウネリで目的の磯が完全に水沈し、うかつに上陸すれば命の危険すらあります。自然相手で思いどおりにならないのはいつものことですが、そんな日が何日も続くと、さすがにまいってしまいました。スタッフの間では、皮肉を込めてウネリという言葉が大流行。口を開けば、ウネリ、ウネリと言っていたので、みんなで「今年の言葉は、ウネリだ!」と一致しました。ようやくウネリが収まり、やっと磯に上がれた時には、それまでの鬱憤(うっぷん)をはらすかのように、全力で撮影に集中しました。

◎ディレクターのお気に入り「感じる視線」

アナダコで一番気に入ったのは、その特徴的な目。撮影していると、何やら背後から刺すような視線を感じます。振り返ると、穴の中から潜望鏡のように目だけを出したアナダコが、ジッと凝視しているではありませんか。こちらがビックリして急に動くと、サッと穴の中に逃げてしまうのですが、我慢して動かないでいると、穴から出てきて歩き回ったり、狩りをしたり。時には撮影機材に興味を持ったのか、近くまで歩いてきて三脚を引っ張ることもありました。好奇心旺盛なアナダコ、獲物のカニだけでなく我々撮影スタッフの動きも、その大きな目で見ているんですね。

ディレクター 矢野 晴隆

アナダコの視線の先は・・・

アナダコの視線の先は・・・

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