◎制作こぼれ話「サルは海藻グルメ?」
番組では、海岸で海苔(のり)を採っていた金華山のニホンザル。年間通じて10種類以上の海藻類を食べていて、サルの仲間としては世界的にも珍しい行動です。アマノリ、ヒジキ、ワカメ、チガイソなど、多くは日本人が日頃から食用にするものですが、サルたちはとてもグルメ(?)なようで、海岸でコンブやワカメをたくさん採っても、いわゆる“めかぶ”にあたる、ごくわずかな部分しか食べません。全国各地で、その地域ならではの食べ物を見出しているニホンザル。食へのこだわりに驚かされます。
◎撮影の現場から「サルを追う者は足元を見よ!」
最近では、ハイキングコースが再整備され、親しみやすい場所となった金華山ですが、撮影時には原生の森に分け入る必要があります(許可を得ています)。アザミやメギの木など、かたくて鋭い棘(とげ)を持つ植物がいっぱい、うかつに藪に入ると、ズボンに引っかかって破れたり、転倒したり。いつの間にか靴もズボンもボロボロです。さらに、悩まされたのは「ヒル」。雨上がりの湿った森の中を歩くと、足首辺りまで、びっしり張り付いています!サルやシカがたくさん生息しているため、その血を吸う生きものもたくさんいるんです。足元にはとにかく用心しながら、サルたちを追う日々でした。
◎ディレクターのお気に入り 「忘れられない顔」
“お気に入り”と言っていいのか少し迷いますが、番組の主人公「キール」の印象深い顔があります。春先、群れのトップ「タイヨウ」との直接対決で大敗を喫し、メスからも目の敵にされてしまったキール。その後、数匹のメスに囲まれ威嚇されているシーンが番組にありますが、実は20分近くもメスたちの攻撃を受けていたんです。ケガをした体で、途方にくれたキール。まるで、助けを求めるかのような眼差しを向けた相手は、カメラマンでした。半年近く追跡して、あんな行動を私たちに見せたのは初めて。本当にせっぱつまっていたのかもしれません。
ディレクター 髙橋 健太