ヒマラヤの山々に囲まれた人跡未踏の大渓谷“セティ・ゴルジュ”
皆さん、こんにちは!6月10日にご報告した人跡未踏のヒマラヤの大峡谷探検の続報です。前回の記事はこちら↓↓↓
ブログ担当スタッフ:さあ、ついに探検の全貌をお話いただける時が来たのですね?
香川ディレクター:
はい。探検隊や科学者と確認しながら入念に映像を解析した結果、谷の深さや大渓谷の規模や地形などが明らかになったんです。まさに人跡未踏の大秘境と呼ぶにふさわしい谷、驚きに満ちた絶景の地ですよ~。セティ・ゴルジュとはどんな場所で、探検家や研究者が何を発見したのか。以下の番組で、詳しくお伝えします。
7月30日(日)よる9時00分(G)
NHKスペシャル「ヒマラヤ“悪魔の谷”~人跡未踏の秘境に挑む~」
NHKスペシャルはNHKプラスで配信します。配信期限 8/6(日) 午後9:49 まで※別タブで開きます
NHKスペシャル公式Twitterはこちら (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます
<番組の内容>
ヒマラヤに人類未踏の“深い谷”がある。ネパール中央部、アンナプルナ山群に囲まれた「セティ・ゴルジュ」。幅わずか十数メートルに対して、深さが200メートル以上という、世界的にも極めて特異な地形で、上空からも谷底をうかがい知ることはできない。周辺は絶壁の連続で、地質図でも空白地帯となっており、谷に入って調査した者はいなかった。科学者も注目するこの谷に、今回、2人の日本人探検家が世界初挑戦。地底に潜む未知の大滝を発見するなど、大きな成果を上げた。さらに、科学調査で谷が生まれた原因を探ると、驚きの事実が浮かび上がる。なんと、アンナプルナにはかつて、もう1つの8000m峰がそびえていた可能性が高く、その山の存在がセティ・ゴルジュの谷を深くすることにつながったというのだ。一体、どういうことか?もう探検しつくされたともいわれる地球上だが、まだフロンティアはある。未知に挑んだ探検の記録だ。
世界初!セティ・ゴルジュを探検する渓谷探検家・田中彰氏
田中氏の“最強バディ” 渓谷探検家・大西良治氏
◎科学者も注目!人跡未踏の“悪魔の谷”を初探検
舞台となる「セティ・ゴルジュ」は、ネパール中央部、“豊穣の女神” アンナプルナ山群の懐に刻まれた大峡谷です。狭いところでは幅が数メートルしかないですが、深さは200メートル以上あるとされています。これほど狭く深い谷は世界でも極めて珍しく、地元の人からは、近づく者を殺す“悪魔の谷”として恐れられてきました。
まるで地球の割れ目!“悪魔の谷” セティ・ゴルジュ
今回、世界的な渓谷探検家、田中彰さん(50)と大西良治さん(46)がセティ・ゴルジュの初踏破に挑戦することとなりました。さらに、探検に合わせて科学調査も行われます。半世紀にわたりヒマラヤの地質を研究してきた京都大学名誉教授の酒井治孝さん(70)が谷の成り立ちに迫ることとなりました。NHKも同行し、探検隊と科学者の挑戦を記録しました。
◎次々と世界初のスクープ撮影に成功!
探検と科学調査は、真冬の2023年2月から3月にかけて行われました。セティ・ゴルジュを取り囲むように標高7000メートル級のアンナプルナ山群がそびえます。
探検の玄関口となった標高3900m地点
美しい白銀の峰々の麓には、鋭くとがった針山が並ぶ異様な地形。高さ200メートルを超える奇岩が延々と続きます。そして、その足元が深く切れ込み、漆黒の闇がのぞいていました。これが「セティ・ゴルジュ」です。
針山の下に深く落ち込むセティ・ゴルジュ
探検隊は、ロープ一本に身を託して谷底を目指すと、ついに誰も見たことがなかった谷底に人類で初めて降り立ちました。さらに、3.5キロにわたって谷底の踏破にも挑戦。高さ400メートルを超える岩壁や、地底に潜む巨大な滝を発見、すさまじい落石にも見舞われながらまさに命がけの冒険で新たな地図を刻んでいきます。
大迫力!ゴルジュ内でみつかった未知の巨大滝
◎世紀の大発見!セティ・ゴルジュを生んだ“超巨大山体崩壊”
一方、ヒマラヤ研究の第一人者、酒井治孝さんは、念願だったセティ・ゴルジュの成り立ちの解明に乗り出しました。酒井さんは、まず深い谷が刻まれる原因となったアンナプルナ周辺の「地質」と「気候」の特徴を指摘。しかし、現地調査を進めると、そうした通常の谷の成り立ちに加えて、この場所ならではの“ある大事件”が起きていたことがわかってきます。それは、とてつもないスケールの地球の営みでした。
念願のセティ・ゴルジュ調査に挑む酒井治孝さん
酒井さんが注目したのは、セティ・ゴルジュの源流にある、アンナプルナⅢ峰とⅣ峰の間。コルと呼ばれるくぼんだ地形の横に、ぽっかりと山がない“謎の空間”がありました。酒井さんは周囲の地形の特徴から考えて、この空間にはかつてもう1つの山があったと推測しました。ヒマラヤ山脈はインド亜大陸がアジア大陸にぶつかる大陸衝突によって海底が隆起して生まれましたが、その後も押し合う大地は巨大地震を発生させてきました。こうした地震で、山は崩壊。ヒマラヤを形成する石灰質の岩石が砕け、600mもの厚さでセティ・ゴルジュ周辺を埋め尽くしたといいます。これがアンナプルナで起きた大事件、“超巨大山体崩壊”です。
アンナプルナⅢ峰とⅣ峰の間の“謎の空間”
砕けた石灰質の岩石は水に溶けやすい性質があります。アンナプルナ周辺には、季節風がもたらす大量の降水があるため、年月を経た結果、次第に針山が並ぶような特異な地形になったといいます。そして、これが谷を深くすることにつながりました。セティ・ゴルジュは、元々あった岩盤の上に、水に溶けやすい山体崩壊による岩石が積み重なったことで、通常よりも深い谷ができやすくなりました。こうして世界でも類をみない、狭く深い大峡谷が誕生したというのです。
砕けた岩石の量から計算すると、かつてあった山は8000mを超えており、アンナプルナ山群の最高峰だった可能性があるといいます。この“世紀の大発見”は、近々、酒井さんが科学誌に発表予定とのことです。
高さ400mを超える岩壁!谷底は深すぎて見えない
NHK取材班は人類で初めて「セティ・ゴルジュ」の完全踏破を目指す探検隊の挑戦を追いました。人間の限界に挑み、自らの足で谷底を歩くことにこだわり続ける探検家・田中さん、大西さんには、次々と困難が襲いかかります。果たして、谷底を完全踏破することはできるのでしょうか?近年、まれにみる“本気の冒険”を番組でご覧ください!
ディレクター香川史郎
関連リンク
↓絶景報告!その1です↓
↓香川ディレクターが過去に担当したブログです↓