「阿蘇」制作ウラ話~カヤネズミの“天空の城”は冬になると〇〇へ移動する?~

NHK
2022年9月4日 午後6:55 公開

◎制作こぼれ話「カヤネズミ、冬はどこに?」

番組でご紹介したカヤネズミは、日本最小の親指サイズで愛らしい姿。「ネズミはちょっと苦手」という方でも、「カヤネズミなら大丈夫」というケースは多いようです。草の上に巣を作る独特の生態も、童話の主人公にぴったりな魅力的な生きものですね。自身の体の大きさから考えると、ずいぶん高い場所に“天空の城”ならぬ、空中巣(くうちゅうそう)をせっせ作って住む高層階の民。番組では、カヤネズミの巣は「生きた植物の葉っぱ」でできているので強い風が吹いても大丈夫、ということを映像でお見せしました。安心で快適なおうち、うらやましい限りですが、季節が変わるとちょっと心配が出てきます。カヤネズミが主に暮らすカヤ場や草原の植物たちは、冬になると枯れてしまうからです。巣は大丈夫なんでしょうか?調べてみると、やはり苦労がありそうでした。

カヤネズミは冬眠をしないため、冬も草原にとどまって地面に落ちた種などを食べて過ごすと考えられています。その時、草の高いところにある空中巣はほとんど見かけなくなります。秋、気温が下がって植物が枯れ始めると、地面の近くに巣を作ることが多くなるようです。“生きたおうち”であれば高い場所でも安心ですが、枯れ草になれば強度が格段に下がってしまいますから、安全性を求めてのことでしょうか。もう1つ重要なのは温度。寒い時期は風通しの良い場所よりも、地面に近い場所の巣・地表巣(ちひょうそう)の方が温度を保てるはずです。その面でも低い方が有利。高層階から低層階へ、住み替えの理由はまだ研究中で、はっきりとは分かっていないそうですが、その時その時に一番快適なすまいへと引っ越していることは間違いなさそうです。カヤネズミの巣は、草の中に草を使って作られるので見つけるのが難しく、まして地面近くの巣となると、見つけるのはまさに至難の業。私は運良く秋に1度だけ地表巣を見る機会がありました。カヤネズミは体があまりに小さく、冬はどうやって生き延びているのか心配していましたが、季節に合わせてたくましく暮らしている様子を実感できて、ちょっと安心しました。

カヤネズミの顔画像

カヤネズミ

◎撮影の現場から 「炎を撮る!」

撮影の中で一番苦労したのは、なんと言っても野焼きの撮影。迫力のある炎の映像を撮るために、炎の中にカメラを設置することにしました。でも、普通にやれば当然、カメラも燃えてしまいます。どうやったらカメラを燃やさずに撮影できるのか?手探りで試行錯誤を重ねました。最初は水を満タンにした水槽に小型の防水カメラを沈めてみたのですが、火が回ってくる前にバッテリー切れに。そこでブリキ缶と冷却材を組み合わせた特製の耐火ケースを作り、バッテリーが長持ちするカメラを使うことに。今度こそ!と意気込んでいたのですが、風向きによって野焼きの炎が想定したようにはならず失敗続き。経験を重ね、3年越しで10回以上撮影して、ようやく炎に包まれる迫力ある映像の撮影に成功しました。

工夫をこらして撮影した「野焼き」の映像はこちら(※許可を得て撮影しています。)

※配信は終了しています↑

特製の耐火ケースでカメラを保護

◎ディレクターのお気に入り 「阿蘇にそよぐ風」

阿蘇の草原では、心地良い風がそよぎます。そして、風に吹かれた草がこすれる音もまた格別です。「やっぱり自然の中にいるのはいいなあ」そんな思いをかみしめながらの撮影でした。阿蘇地域は国立公園にも指定されている日本有数の“自然”です。でも、この場所は“手つかずの自然”ではなく、人々が1000年以上にわたって野焼きと放牧を続けることで初めて成り立っている“里山”の自然です。もし人々が草原を利用しなくなったら、きっとこの心地よい風は吹かなくなってしまうでしょう。人間の活動が引き起こす環境問題が世界中で取り沙汰される中、「自然とはなにか?」を改めて考えさせられた取材でした。

ディレクター髙木勇輔

阿蘇の風景画像

風そよぐ阿蘇の草原

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