◎制作こぼれ話「新品サンダルを盗むイタチの特異な行動の謎」
全国で起きている動物によるサンダル泥棒。犯人はタヌキ、キツネ、イタチだと突き止めましたが犯行の動機はさまざまでした。特に新品のサンダルを盗むイタチに関しては現場を調査した専門家の筑紫女学園大学の佐々木浩博士も「聞いたことがない」と驚くばかり。とにかく犯行の動機が不可思議です。番組の中では「サンダルを巣材として利用している」ことと、「あのシベリアイタチの個性で、コレクションとして集めた」と考えられることを紹介しました。にわかには信じられない、という方もいるかもしれませんが、もう少し掘り下げてみましょう。
一匹のイタチが集めたサンダルコレクション
イタチは毛皮が薄く、胴長短足で完全に丸くなって眠ることができないため、熱を失いやすい体型をしています。巣の中を保温するための材料としてサンダルを使っているのではないか、と佐々木博士は考えています。また、そもそもこのイタチがなぜサンダルに興味を持ったのか?についても仮説があります。佐々木博士が着目したのがたくさんの歯形が刻まれたサンダルです。巣に持ち込んでいた150個ほどのサンダルの中から見つかったものです。
かみあとが無数についたサンダル
ネコやイヌと同様に、乳歯から永久歯に生え変わるときに歯茎がムズムズするため、サンダルをかんでいるうちに快感をおぼえ、集める習慣がついたのではないか、という仮説です。確かにありそうですね。さらに、ニオイも関係していると考えています。イタチが集めていた新品のサンダルを番組にも登場した分析会社で調べてもらうと、「アセトフェノン」という香料などに使われる甘い香りのニオイ物質が含まれていることが判明しました。ちょっとフルーティーな感じですから、生きものが好きになる可能性はあると思われます。このように、いろいろな理由があってあの行動に結びついたと考えられますが、それにしても、まだまだ謎だらけですね。
◎撮影の現場から「サンダル泥棒の犯人は私ではありません」
イタチによるサンダル泥棒で取材に協力してくださった、愛知県からの投稿者・近藤さんご夫妻。「新品のサンダルが何者かに盗まれる」というお話を聞きロケを敢行しましたが、じつは取材中、思いがけない展開があったんです。
サンダルが盗まれる被害は近藤さん以外にも少なくともご近所6軒で発生。人間の仕業ではないかと疑う声もありました。犯人の特定が急がれます。ところが、いざ取材にうかがうとなった時期、近藤さんの家では1か月ほどもサンダルが盗まれなくなっていたんです。タイミングを逸してしまったか・・・。とにかく自動撮影カメラを設置して様子をみることにしました。すると翌朝、妻の真美さんから「サンダルが無くなった!」との一報。はやる気持ちをおさえて現場にかけつけ、お話を聞こうとしましたが・・・、何やら微妙な空気を感じます。これは一体?
長丁場になることを覚悟で自動カメラを設置したら、翌日に!?
どうやら真美さんは、犯人が夫の俊行さんか、私、山田ではないかという疑念をもっておられたようなんです。それもそうです。1か月もの間、全く動きがなかったのに、取材班が来た翌日にサンダルがなくなるというのは、あまりにもタイミングが良すぎです。でも、もちろん犯人は私ではありません。まさか、俊行さん・・・?いや、そんなはずは。疑心暗鬼です。ドキドキしながら設置したカメラの映像を確認すると、そこには早朝に現れた俊行さんの姿が!?いえいえ、真美さんからサンダルが盗まれていると知らされ、見にきただけでした。さらにさかのぼって映像を確認していくと、サンダルを持ち去るイタチの姿がバッチリと映っていました!犯人はイタチ。ようやく特定できて、ほっとしました~。皆さまのご協力に感謝いたします。
サンダルをくわえて持ち去るイタチ
◎ディレクターのお気に入り「記憶がよみがえる・・・」
イタチは盗んだサンダルをどこに持ち運ぶのか?その疑問を解明するため、サンダルにGPS発信機を装着して足取りを追跡すると、とんでもない動きをしていることが判明しました。移動するのは数百メートルだろうと思っていたら何と8キロも離れた場所に、しかも時速50キロのスピードで移動しています。全くの予想外。最初はカラスが持ち運んだのかと疑いましたが、ふとある記憶がよみがえりました。以前、私は今回と同じく「ダーウィンが来ちゃったスペシャル」を担当し、テンが車のボンネットの中にカキの実を隠すという奇妙な事件を取材しました。その経験から「イタチが車にサンダルを隠したのではないか?」と推測しました。
ボンネットにはなかったが、車の下に!
入れられた可能性のある車のボンネットを確認しますが、見当たらず。そこで車の下も探してみると、何とわずかな隙間から見つかりました!まさかこんな場所に隠しているとは思いませんでした。後日、その映像を試写室で見せたときのこと、もう1つの記憶がよみがえることになります。プロデューサーがはなった衝撃のひと言。「まさか、山田さんが隠したんじゃないでしょうねぇ?」絶対、違いますからっ!!本当に動物の行動は不可思議です。イタチのサンダル泥棒の謎は、まだまだ新展開があるかもしれませんね。
ディレクター 山田 武志
車の下に隠されていたサンダル
☆ブログ担当スタッフから☆
まじめに番組作りしていただけなのに2度も疑われてしまった山田ディレクター。それぐらい意外で、興味深い生態が撮れたという証拠で、ある意味、勲章ですね!こんな展開はフィクションで作ろうと思ってもなかなか難しいんじゃないでしょうか。台本のないドラマが日々進行するのが、生きもの番組づくりの現場ですね。「サンダル泥棒」だけで番組を一本、丸々作ってしまうという偉業を成し遂げた山田さんには、今後も視聴者の皆さまの疑問にどんどんお答えしてもらいたいと思います!
ブログ担当スタッフ
関連ブログ
山田ディレクターが担当した番組です。