◎制作こぼれ話「世界初!超・激レア生物」
実は、番組の中で超・激レアな種類をこっそり紹介していたのですが、気がつきました?その名は、「トラフクモヒトデ」。黄色いトゲと白と黒のしま模様が鮮やかで、腕の長~いクモヒトデです。阪神タイガースファンにはたまらない色づかい!1998年に沖縄で採取され新種として記載されました。世界でも標本が10個体ほどしかありません。そして、観察例はほとんど無し!こうして映像が撮影できたのは奇跡とも言える程です。腕の長さが20cmを超える大型種なのに見つからないのは、まずは夜行性のため。そして、洞窟などの暗がりや大きな転石の下などに潜んでいるため、見つかりにくいんです。おそらく世界初撮影の快挙!なんですが、番組ではそうとは言わず、ちらっと映っただけです。この貴重さはなかなかテレビ向きではないですよね・・・。ちなみに、クモヒトデとヒトデは同じ棘皮動物の仲間で、見た目の姿・形は似ていますが、分類学的にはまったく別のグループ。は虫類と両生類くらい離れているんだそうです。
実は超・激レア生物のお宝映像を見たい方は・・・(※見つけるの大変です!8/8追記)
→ここをクリック 放送後 1 週間 NHK プラスで見られます!(該当箇所から再生)
※配信は終了しています↑
◎撮影の現場から「分裂するまで忍耐10か月」
ヒトデの再生能力のスゴさを映像化しようと挑んだ今回の番組。「協力しましょう」と快く引き受けてくださったのは、筑波大学下田臨海実験センターの柴田大輔先生。でも先生にとって、これが悪夢?の始まり。実験対象に分裂しやすいヤツデヒトデを選んだものの、専門家といえどもいつ分裂するかは予測不能。そこで、ヤツデヒトデを11匹、特注の実験水槽を8式と、24時間収録できるカメラを3台用意して、長期撮影を開始!でも、ヒトデはもちろん食事もしますし、排せつもします。餌をあげたり、水槽の水を替えたり、柴田先生の苦労は増すばかり。しかも、せっかく分裂したけど、水槽の隅にいたので撮影できなかった!なんてことが何度もあったそう。さらに、ちょうど良い場所で、いざ分裂が始まった!と思っても、そこはのんびり屋のヒトデ。完全に2つに分かれるまで、なんと8時間もかかります。撮影に成功したときは、夜8時から午前4時までそばにつきっきり。最終的に1匹が4匹へと増えていく姿を捉えることができた頃には、実験を始めてなんと10か月も経っていました。本当にお疲れ様でした。
◎ディレクターのお気に入り「深海の赤ちゃん!」
たった1種類のクモヒトデ、「キタクシノハクモヒトデ」が4兆匹もいて、日本の深海をぐる~っと取り囲んでいるという、驚きの光景を撮影していた時のこと。じゅうたんの模様のように密集するクモヒトデたちの腕と腕の隙間に、ぽつんといたのは、わずか3㎜ほどのキタクシノハクモヒトデの“赤ちゃん”でした。4兆匹の中でも、きっと最小クラスに違いないと大喜びする一方で、深海の底でひっそりと暮らすクモヒトデが次の世代へと命をバトンタッチしていることを実感したのでした。さまざまな生きものたちが、人知れず、たくましく生きているんですね。ところで、船の上から200~300m下を撮影するのはホントに大変です。潜水艇からあがってくる映像を見て、潜水艇を前後・左右・上下と動かすだけでなく、母船の方も適切な位置に動かし続けなければいけません。それを実現するには、チームプレーが一番大事。今回、協力してもらった船はダーウィンが来た!で「クロマグロ」を撮影した際などにも何度もお世話になっている水産大学校の実習船です。また水中ロボットと無人潜水艇を動かすのは、「シャチ対シロナガスクジラ」「西之島」「孀婦(そうふ)岩」などでも協力していただいた調査会社の方々。これまで数々の番組でお世話になった協力者の皆さまにまたもや勢ぞろいしていただき、初めて実現できた撮影でありました。生きものの撮影といえども、大事なのは人の縁であるな~と改めて実感しました。
ディレクター 小山 靖弘
もしかして、もっと小さいクモヒトデもいるかも!録画した方、探してみてください
☆ブログ担当スタッフから☆
超・激レアな生きものをこっそり紹介・・・「気がつきました?」って、気づくワケないじゃないですか!と思わずツッコミを入れたくなりましたが、「世界初撮影が大好き」と世間で噂されるダーウィンが来た!なのに、「こっそり世界初を放送」なんてこともあるんですね。今回は、あの「ダイオウイカ」の番組を作ったことでも知られる小山靖弘ディレクター。数々の海の名作を作ってきただけあって、海関係の人脈はすごいですね。このブログを執筆中も海の取材に出ているようですので、次なる番組にご期待ください!
ブログ担当スタッフ