テレビ放送70年を記念した「ダーウィンが来た!」と日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」とのコラボ企画。鉄腕DASHで海の企画を担当する桝太一さんがダーウィンの三宅島でのクジラロケに参戦しました。かつてNHKの自然番組ディレクターを目指したこともあったという桝さん。あこがれの番組の撮影現場でどんなことを経験し、感じたのか?コラボを振り返っていただきました。
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同じ日の同じ時間帯に放送された「ダーウィンが来た!」と「ザ!鉄腕!DASH!!」。惜しくもダーウィンを見逃した方はぜひ配信で番組をお楽しみください!
◎制作こぼれ話「空前絶後のコラボは運命だった?!」
日本テレビの人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」との前代未聞のコラボ企画はいかがだったでしょうか?ダーウィンロケ隊に参加してくれた桝太一さんの奮闘ぶり、存分に味わっていただけたものと思います。でも、実は、桝さんの参戦は一朝一夕に実現したものではなかったんです。以下の画像をご覧ください。
※黄色いハイライトは筆者によるもの
これ、今から5年前の「テレビ65年NHK×日テレコラボ」の時、コラボ企画に出演された桝さん(当時日本テレビアナウンサー)がインタビューに答えた内容です。出演したいNHKの番組として挙げていたのが、「ダーウィンが来た!」でした。「大ファンだった憧れの番組」「心から尊敬」と面映ゆくなる賛辞の後に「どんな形でも番組制作のお手伝いをさせて頂いて、その舞台裏を覗けたなら幸せです!!」と語られていたんです。
更にその後、桝さんはお忍びでダーウィンが来た!のスタッフルームに見学に来られたこともありました。その時、担当ディレクター(筆者)も桝さんとお話をさせていただきましたが、「ダーウィンいつかやってみたいんです!」と少年のように目をキラキラと輝かせていたのがとても印象的だったのをよく覚えています。桝さんは東京大学の大学院生だった時、就活でNHKの自然番組ディレクターを目指したと、著書にも書いています。残念ながらその時はご縁がありませんでしたが、長年に渡って思いを持ち続けてこられた結果、今回のコラボ出演につながった・・、なんだか不思議な力を感じずにはいられません。
振り返ると、筆者自身子どもの頃、日曜の早朝に放送されていたNHKの自然番組「自然のアルバム」が毎週楽しみで、見るたび自然への興味をふくらませていったものでした。こちらはそのまんま自然番組の作り手になり、今回、桝さんと協働させて頂くことができた…。この出会いは、50年以上に及ぶNHKの自然番組の歴史の上にあったんだなぁ…と、ロケをしながら深い感慨に浸ったのでした。
◎撮影の現場から 「もうひとつのD×D」
今回は、DASHとDARWINのいわば「D×D」だったわけですが、実は撮影現場ではもうひとつの「D×D」がありました。番組でお伝えした「三宅島クジラ鼻水プロジェクト」は、実験用のシャーレを載せたドローンを潮吹きに突入させてクジラの鼻水を採取するという奇想天外な調査でしたが、実はこの調査ドローンを撮影するためにダーウィンが来た!ロケ隊もドローンを飛ばしていたのにお気付きだったでしょうか?つまり「Drone×Drone」の「D×D」。これ、極めて過酷なミッションだったんです。
調査ドローンはクジラを探しながら広大な海の上を不規則に飛行します。一方、撮影ドローンは調査ドローンと衝突しないよう一定の距離を保ちながら、常にフレームの中に調査ドローンを捉え続けなくてはなりません。一度見失うと大海の上のドローンをふたたび発見するのは至難の業。ドローンパイロットは一瞬たりとも集中力を切らせない状況でした。さらに、冬の三宅島には強い季節風が吹きます。飛行する際には、風速5m未満の風であることを確認してから離陸するのですが、それは陸上での状況。風を遮るもののない海の上では、予期せぬ強風に襲われ、バランスを崩す恐れが常につきまといます。
こうした過酷な状況で、見事な映像をものにしたドローンパイロットのUさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。実はUさんはシロナガスクジラをドローンで撮影した経験があって、今回はクジラつながりで依頼したんですが、世界最大の生物とは比べ物にならない小さなドローンを追い続けた気持ちはいかばかりだったのか、いつか一献傾けながらじっくりと聞いてみたいところです。
◎ディレクターのお気に入り「クジラは海のリトマス試験紙?」
大阪湾にマッコウクジラ、東京湾にザトウクジラが訪れるなど海の異変が伝えられた2023年。三宅島に多くのザトウクジラが集まるようになったのも2019年からとごく近年のことです。いったい、いま海でなにが起きているのでしょうか?
顕著な変化は海水温の上昇。三宅島の海水温は、ザトウクジラが来る以前の2014年2月には14.3℃でしたが、今年2月には19.3℃とわずか9年で5℃も高くなっていたんです。黒潮大蛇行(黒潮の流れが大きく変わる現象)と地球温暖化による影響が原因と考えられていますが、あまりにも激しい変化です。ザトウクジラが冬を過ごすには、海水温が18℃以上あることが一つの条件になっており、三宅島は急激に生息適地になったとも言えます。
クジラがこうした水温の変化を鋭敏に感じ取って、生息域を拡大するのであれば、いま、これまでになく高い水温が記録されている全国各地の海でも、今後、いたるところでザトウクジラが冬に見られるようになるのかもしれません。でも、三宅島でも特産のテングサが激減してしまったように、水温の変化が海の環境を大きく変える恐れがあるのも確か。ダーウィンが来た!は、こうした地球環境の変化の中で生きものたちの暮らしぶりがどう変わっていくのか、見つめ続けていきます。
ディレクター 荒井 恒人
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