去年、95歳の生涯を閉じた森崎和江さん。地の底で働いた女性坑夫に聞き書きした『まっくら』や東南アジアなどへ売られた少女を追った『からゆきさん』など数々の著作で、近代社会の片隅に追いやられた人々の思いを伝えた。日本統治下の朝鮮半島で生まれた「原罪」を背負い、「本当の日本」を探して全国を旅した。森崎和江さんの足跡をたどり、社会に広がる「断層」を越える「命の言葉」を探し続けた、その思いを探る。
昭和天皇と戦争との関わりを示す新資料が発見された。宮内省御用掛・松田道一の膨大なメモ。注目されるのは367回もの天皇の質問、御下問。ヨーロッパ情勢を注視していた天皇に松田は12年間、外務省に集まる国際情報を進講。太平洋戦争の開戦、終戦をめぐる天皇の決断、そしてバチカンを仲介した和平工作に大きな影響を与えた。番組では御進講メモをAIで分析、第一線の研究者が読み解き世界戦争の中の外交戦を見つめていく。
今年12月、小津安二郎は生誕120年・没後60年を迎える。「東京物語」など海を越えて世界を魅了していった作品群。今も、その影響を受けた作品が生まれ、創作の秘密を探る熱い議論が続く。独特なローポジションのカメラが写す淡々とした家族の日常がなぜ深い感銘を残すのか。笠智衆と原節子の父娘が泊まる宿に置かれた「壺」の謎とは。小津が画面に忍ばせた戦争の影とは。小津を愛してやまない映画人や作家が読み解いていく。
『ETV特集』は、さまざまな社会問題を取り上げるドキュメンタリー番組です。考えるヒントを提供する「心の図書館」であることを目指しています。