Q 藤子・F・不二雄作品との出会いはいつ頃、どの作品でしたでしょうか?もしも以前から好きな作品、キャラクターがあったら教えてください(SF短編に限らず)。
物心つく頃には既に『ドラえもん』をテレビで観ていたと思います。小学生になってからは単行本をちまちま買い集めました。『ドラえもん』はやっぱり特別ですが、その他の作品では『モジャ公』が好きです。好きなキャラクターはのび太です。ひみつ道具を必ずアレンジして使うのび太のアイデア力にずっと憧れていました。
Q 今回の原作を読まれた印象を教えていただけますか?
親子という近いのに実はよく知らない相手を知っていく物語です。
学生時代に読んだ作品なのですが、改めて読み直したらかなり印象が変わりました。当時は息子の甚六に感情移入して読みましたが、今は大人側の気持ちもわかります。
年齢差・性格の違いから出来てしまう大きな隔たりを違う角度から見てみる、という気づきの鮮やかさに感動させられます。
F先生のSF短編の中でも特にハートフルな作品だと思います。
Q 実写化にあたって心がけたことがあれば教えてください。マンガの絵はどのくらい意識しましたか?苦労したことはありますか?
時代設定を現代にし、キャラクターのビジュアルも原作に寄せなかったので、マンガの絵はあまり意識しませんでした。父と息子の心が入れ替わる話なので、それぞれの演じ分けにいちばん苦労しました。
↑松本監督(一番左)
Q 撮影現場はどのような感じでしたか?俳優さんの演技など、その他思い出深いことがあればぜひ教えてください。
吹越満さんと青木柚さんが親子を演じてくださいました。心が入れ替わった2人をどのように演じ分けるべきか、読み合わせの際に吹越さんが率先してアイデアを出してくださいました。吹越さんに呼応して青木さんからも提案があり、一緒に演技プランを固めていきました。
入れ替わって一晩過ごし、元に戻った後のラストシーンでの2人の表情があきらかに変化していたので、撮影しながらグッと来ていました。
Q 今回の作品の見どころについて、視聴者へぜひ一言お願いします。
僕の回はドラマオリジナルの要素が他と比べていちばん多いらしく、最初は不安だったのですが藤子プロの皆様が快く背中を押してくださいました。
原作が持つ面白さの核の部分は変えず、原作では省略された夜のシーンを膨らませています。そこに少しだけエモーショナルな要素を足しているので、是非ご覧ください。
普段、僕の部屋に置いているのび太のフィギュアと同じものを美術として甚六の部屋にも置きました。
Q 改めて今回藤子F作品にふれて、藤子Fさんへの思いを一言お願いします。
F先生。自分が監督した映画『サマーフィルムにのって』で、日常の中にポンッとSF要素が入ってくるフィーリングは先生からの影響です。
SFの部分だけではありません。多面的なキャラクターだったりワクワクの作りかたや、引き画の雄弁さ、工夫することの輝きなど、思い返せばたくさんの影響を受けてきました。というか、当たり前すぎて血肉になりすぎて言語化できないくらい些細な影響の方が大きいかもしれません。
たくさんの楽しい作品をありがとうございます。これからもふと読み返しながら、僕も作品を作り続けていきます。
あと、ドラえもんの「当人が満足なら、いいことだ」という台詞は(あの表情込みで)今後も自分の支えとして何度も反芻していくと思います。
漫画扉絵のシンクロビジュアル撮影風景
Q オープニング映像について教えてください。
シリーズの監修をしている本多アシタさんがオープニング映像の構成を考えてくれました。それを僕が演出する形で、本編を撮影してくれた清水恵里加さんと照明のオカザキユウヤさんと共に撮りました。美術は普段からよく作品を一緒に作っているTASKOの加藤小雪さんと北澤岳雄さんにやってもらって、F先生のコマを全て人力で動かして、アナログ&クラフト感のある映像を目指しています。
「せーの」でみんなでコマを動かします。
完璧にデザインされ、インパクトのあるコマの数々。
F先生のレタリングは本当に素晴らしいです。