もし『いつもの薬』がなかったら? 薬剤師が教える3つのポイント【薬不足】

NHK
2022年5月16日 午後0:25 公開

薬の安定供給という「当たり前」が今、大きく揺らいでいます。

医薬品メーカーで発覚した不正をきっかけに、ジェネリック医薬品の供給が不足する事態が続いています。

いつも飲んでいた薬がもらえないという患者が相次ぐ状況に、どう対応すればいいのか。

「薬のプロ」である薬剤師さんに、私たちにできることを聞きました。

(ネットワーク報道部 村堀等)

 

関連番組:クローズアップ現代「いつもの薬がない!?ジェネリック急拡大の影で何が」

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「薬のプロ」に聞く “薬不足”対応策

話を聞いたのは、西東京市の薬剤師・小野啓一郎さん。「まちの薬剤師」として医薬品不足に頭を悩ませる現状を、取材班に教えてくれました。小野さんの薬局でも、いつもの薬が手に入らず、代わりの薬を患者さんに出すことが増えていると言います。

 

小野さん:

「患者さんは薬の変更で頭がいっぱいになってしまい、肝心の薬の説明が耳に届かない。遠くの病院の処方せんを持ってきてくれた新規の患者さんも、医薬品の供給不足の問題から断らざるをえず、かかりつけ薬局とは何なのか心苦しい」

  

「薬の供給不足」が続く中で、私たちにできることとして、小野さんが呼び掛けているのは、次の3つのポイントです。

 

①かかりつけの薬局で いつもの量を

まず小野さんが患者さんへの呼びかけとしてあげたのは、必要以上に薬を確保しようとして、普段より多い量を処方してもらうことは避けてほしいということ

 

1日に100人余りの患者が訪れる小野さんの薬局は住宅街の一角にある、まさに地域の「かかりつけ薬局」。ここでも薬の供給は厳しい状況で、常連のお客さんの薬を用意するだけでも四苦八苦しているそう。急に新規のお客さんが処方箋をもってきても、対応できないことがあると言います。

 

小野さん:

「もちろん急に体調不良になってしまった場合などは遠慮しないでほしいのですが、普段から薬を服用されている方は、できるだけかかりつけの薬局で、いつも通りの量の薬をもらうようにお願いしたいです。

これまで注文の翌日には薬が届いていたのが、今では何か月待っても入ってこない薬もあります。かかりつけ薬局として、地域で暮らす常連の患者さんに渡す分だけはなんとか確保したいところです

 

<欠品に備えて青い箱に代替薬を準備している>

 

小野さん:

「大量の処方せんを持って来られた新規の患者さんがいたのですが、どうしても用意できずに遠くの薬局をご案内したことがあります。本来なら新規の患者さんが来てくれるのはうれしいことなのですが、今はどの薬局も常連さんの分を確保するので精いっぱいなんです」

 

②薬が急に変わったら ここに注意

 患者さんにとって一番気になるのは「いつもと違う薬を処方された時」のこと。

小野さんが注意点としてまず指摘したのは、薬の「色」です。

 

 

小野さん:

「できるだけ色や形が似ていて同じ飲み方の薬を仕入れるようにしていますが、今の状況では難しいこともあります。いつもと違う薬を出されると『色で覚えていたのに』とショックを受ける方が多いです。

実際、見た目が違うものに変わると、家に残っていた同じ効能の薬と一緒にいつもの倍の量飲んでしまったり、飲み忘れたりしてしまうリスクがあります」

 

そうならないようにするにはどうすればいいのか。

基本的なことのようですが、まずは「薬局での説明をよく聞くこと」だということです。

 

小野さん:

いつもと違う薬を提示されたときこそ、薬剤師の説明に耳を傾けてほしいです。薬の飲み忘れや飲みすぎが心配な方は、翌日に飲む分を前の日に小分けにして準備しておくことをお勧めします。ただし湿気に弱い薬もあるので、準備するのは1日分だけにしておいてください。

それから薬の保管は、薬局から渡された時の袋に入れたままにしておくのが基本です。飲み方が印刷されていますし、吸湿性にも優れているんです」

 

たくさんの薬を飲む高齢者などの場合、負担額は増えますが、薬局で1回分ずつ小分けにする『一包化』も可能だということです。

 

取材で集まった声の中には「代わりに出された薬の効きがよくない」とか「体調が悪くなった」といった声もあがっていました。実際にそうなってしまった場合にはどうしたらいいのでしょうか。

 

小野さん:

「基本的には同じ成分の薬であれば同じ効果が期待できますが、体質や他の薬との飲み合わせで、代替薬が合わないという方も一部にはいます。

供給の問題があるのですぐに元の薬に戻すのは難しいかもしれませんが、代替薬を飲み始めて不調を感じたら気兼ねなく薬局・薬剤師に相談してください」

 

③“飲む必要がなくなった薬”の見直しを

ここまで2つが主な注意点。そのうえで小野さんに「高齢者など日常的にたくさんの薬を服用している人」に向けて伝えたいこととして、“飲む必要がなくなった薬”の見直しを挙げました。

 

小野さん:

「症状がなくなって薬を飲む必要はなくなっているのに、飲み続けてしまう方がいます。症状がなさそうな場合は、こちらから『この薬、なんで飲んでるんですか?』と確認することもありますが、ご本人もわからなくなってしまっていることがあります。

その薬が、実は供給不足に陥っているものだった、ということが実際にありました。飲まなくてもいい薬を飲むのはご本人の体にもよくないので、多くの薬を服用されている場合にはこの機会に減らせる薬がないか見直してみてはいかがでしょうか」

 

命を守る薬 どう向き合うか

薬の供給の回復には年単位の時間がかかるとの指摘もあり、まだまだ長引くことを前提に対応していかなくてはならない状況です。

今回のようなアドバイスを参考にしながら、自分自身や大切な人の健康や命を守ってくれる薬と、改めてしっかり向き合っていく時だと思います。

 


NHKでは、医薬品不足問題を継続取材しています。

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