値上げ/物価高 求められる対策は?

NHK
2022年10月4日 午後5:40 公開

値上げ品目が6,700品目以上となった10月。物価高による家計の負担は、ますます大きくなってきています。私たちは、この物価高にどう向き合っていったらいいのでしょうか。

(クローズアップ現代取材班)

値上げによる家計負担は平均8万円以上

今年に入って何度も経験してきた値上げ。10月には、過去最多の6,700品目以上が値上げされました。

コロナ禍からの回復による急激な需要拡大、異常気象による食料・モノ不足。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻によって、あらゆるモノの値上げが続いています。

こうした値上げによる家計の負担は大きくなってきています。どれぐらいの家計負担になりそうか試算をしてみると、10月以降も1ドル=145円の円安が続いた場合には、今年度の家計負担額は、平均8万1,674円とされています。なかでも収入が少ない世帯ほど、物価高による負担感が大きくなるとみられています。

そもそも物価高って悪いこと?

家計の大きな負担になっている物価高ですが、そもそも物価高とは本当に悪いことなのでしょうか。

日本の中央銀行である日銀では、2013年から2%の物価上昇率を目標にしてきました。一体なぜ、日銀は家計の負担になりうる物価上昇を目指していたのでしょうか。

その理由は、景気の好循環を作るためです。

まず、物価が上昇するとモノの価値が上がるため、それを売っている企業の利益が上がります。利益が従業員に還元されると賃金が上がり、雇用も増えていきます。

こうして賃金が上がると、消費者の「モノを買いたい」という購買意欲が高くなり消費が活発になります。そしてまた物価上昇へと繋がります。これが継続していくと、良い循環が生まれるというのです。

つまり、賃上げがともなって安定して物価が上昇すれば、経済全体を成長させることができます。日銀はこうした循環が生まれることを狙って、物価上昇を目指してきたのです。

"良いインフレ"と"悪いインフレ"

しかし、いま私たちは物価高に悩まされています。それはなぜなのでしょうか。

それは、この好循環が生まれていないからなんです。一体どうすれば好循環が生まれるのでしょうか。

物価上昇が続いた状態「インフレーション(インフレ)」には、"良いインフレ"と"悪いインフレ”があるといいます。

”良いインフレ”だと、好循環が生まれるといいます。

例えば、1個100円の商品があるとします。この商品を作るのにかかったコストは80円なので、売れた場合の利益は20円になるとします。

この商品、人気があって需要が増加します。そうすると、企業が売値を130円に上げます。売値を上げたときに、コストが10円増えていたとしても売値を130円に設定したので、40円の利益を確保することができます。

この利益を設備投資や賃金に回せば、好循環が生まれ"良いインフレ”になります。

一方、”悪いインフレ”の場合です。

もともと100円で販売していた商品が、需要の高まりではなく原材料の高騰でコストが40円増えたとします。このまま20円の利益を確保しようとすると、売値を140円にしないといけません。しかし、100円の商品を140円に値上げすると、買ってもらえなくなるのではないか。

そこで、企業は利益を10円に減らして、売値を130円にします。こうなると、企業に入る利益が少なくなるため、設備投資や賃金に回すことが出来ずに好循環へと繋がりません。

いま日本に起きている物価高は、原材料が高騰したことによって起きているため、これが続くと、”悪いインフレ”になってしまう可能性があるというのです。

カギは賃金上昇!どうやって実現させる?

私たちの生活を少しでも上向かせるためにどうすればいいのでしょうか。
カギとなるのは、賃金上昇です。

こちらは、物価の影響を考慮した実質賃金のグラフです。

前の年の同じ月と比べて、今年に入ってから3月まではなんとかプラスを維持していましたが、今年4月にマイナスに転じ、4ヶ月連続でマイナスとなっています。

つまり、私たちの実感としては給料が減ってきているということを表しています。

そんな中、議論の的となっているのが企業の内部留保です。

上のグラフは、企業が蓄えとして手元に残しているお金、利益剰余金の推移です。

従業員の給与は増えていない一方で、内部留保は10年連続で過去最高を更新し続けているのです。昨年度の金額は合わせて516兆円。この額は、去年の日本の税収のおよそ8倍にあたります。

いまの物価高の中で、この状況をなんとか出来ないか。

あるIT企業では、今年4月からインフレ手当として月1万円の支給を開始。社内では、給与が4%上がる計算なのでありがたいという声が上がっているといいます。

また、別の企業では、物価高に対応するため、夏にベースアップを決めるという異例の決断をしました。

政府の対策は…

こうした物価高に対して、政府は新たな総合経済対策の柱を打ち出しました。

・物価高騰・賃上げへの取り組み

・円安をいかした地域の「稼ぐ力」の回復・強化

・「新しい資本主義」の加速

・国民の安全・安心の確保

今後、好循環を生み出せるのか。いま問われています。

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