東京大改造 生まれ変わる東京の昔、いま、そして未来

NHK
2023年1月11日 午後5:23 公開

若者の街・渋谷に、日本一のオフィス街・東京駅周辺などー

東京都内の各地で、いま大規模な開発が続々と行われています。日本の顔として、国の経済全体を支えてきた首都・東京が、この先どう変わっていくのか。大開発のまっただ中にある街の未来を、過去を振り返りながらご紹介します。

(クローズアップ現代取材班)

都内各地で進む大規模開発

若者の街として新しい文化を発信してきた「渋谷」、交通の要衝として日本を支えてきた「八重洲・日本橋エリア」、地元住民との協力で海外の人々も住みやすい街づくりを進めている「虎ノ門・麻布台エリア」や東京オリンピック・パラリンピックの開催地として盛り上げを見せた「湾岸エリア」など、都内の各地でいままさに大改造が進められています。目指すのは、世界から企業や人材が集まる次世代型の都市です。

都内で再開発が進む主要なエリア

〈都内で再開発が進む主要なエリア〉

【渋谷】“若者の街”から“世界の文化の中心地”へ

若者文化の発信地・渋谷。見渡す限り至る所に高層ビルが建っていますが、いまから70年ほど前の渋谷には高い建物はほとんどありませんでした。

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〈1948年頃の渋谷〉

1950年代の渋谷の写真

〈1950年代の渋谷の写真〉

その上空を走っているのはなんとケーブルカー。とはいっても、戦後のほんの短い期間だけ設置されていた子ども用のアトラクションでした。当時は渋谷駅周辺に高い建物がほとんどなかったため、かなり遠くまで見通せたことでしょう。

その姿が一変したのは1970年代。「若者の街」をコンセプトに、ファッションビルが続々と建てられ、“流行の発信地・渋谷”が生まれました。

当時のSHIBUYA109

〈当時のSHIBUYA109〉

そしていま、渋谷が“若者の街”から次のステージへと変貌を遂げようとしています。東急東横線の渋谷駅が地下化され、駅周辺では近年続々と新しいビルが建設されています。

開発前の渋谷駅周辺 2008年頃

〈開発前の渋谷駅周辺(2008年頃)〉

そのコンセプトは「世界のコンテンツ産業の中心地」。市場規模22兆円にもなったゲーム産業など、成長著しいデジタルコンテンツを担う企業を渋谷に呼び込もうと100年に1度といわれる大規模な開発が進められています。

渋谷駅周辺で近年建設されたビル

〈渋谷駅周辺で近年建設されたビル〉

渋谷の大開発で特徴的なのが、建てられるビルがそれぞれに役割を持っていること。人々の交流の場や人材育成の場を作りだし、従来のオフィスビル以上の機能を持った特色のあるビルが次々と生み出されています。

今年の始めに行われたJR渋谷駅の大規模工事も、この「100年に1度の再開発」の一環です。4社9路線が乗り入れる渋谷駅の利便性をより高めるために、今回の工事では山手線のホームの幅を広げて内回りも外回りも一本化されたホームとなりました。

さらに、力を入れているのが下部構造(インフラ)の強化です。渋谷は谷地になっており水害に弱く、これまで何度も浸水被害に悩まされてきました。こうした課題を解消しようと、地下に雨水を逃がすための施設が設けられました。

渋谷の地下雨水貯留槽

〈渋谷の地下雨水貯留槽〉

下部構造で災害に強く安心して暮らせる街を作り、上部構造となる建物で文化のより一層の発展を担う。世界の中心となる新しい渋谷が、いま生まれようとしています。

【東京駅周辺】“東京の中枢”も生まれ変わる

渋谷に続いて大きく変貌を遂げようとしているのが、日本一のオフィス街・東京駅周辺です。

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〈昭和初期の東京駅周辺〉

明治維新後にロンドンの街並みを参考に、近代的なビジネス街として整備されたこのエリア。赤レンガ造りで象徴的な東京駅の駅舎は、日本全国の鉄道網の中心として1914年に建てられました。

完成当時の東京駅(1914年)

〈完成当時の東京駅(1914年)〉

1923年に起きた関東大震災では特に駅舎に被害はなかったものの、その後の太平洋戦争での空襲攻撃によりほぼ全焼の被害に見舞われます。元通りの駅舎の再建は当時の財政状況では厳しく、1947年からおよそ60年にわたって3階建てだった駅舎は2階建ての状態で運営されてきました。

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〈1960年代の東京駅〉

東京駅が開業してから100年を目の前にした2012年。開業当時の建設時に使った材料や工法を駆使し、5年にわたる工事を経て東京駅は開業当時の姿で新たに誕生しました。

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〈2012年に復原された現在の東京駅〉

そしていま、その東京駅周辺で大規模な開発が進められています。2027年に竣工予定のオフィスビルは日本で最も高い390メートルにもなります。低層階には商業施設、また周辺には緑豊かな広場を備え、多様なアクティビティを楽しめる空間が生まれようとしています。

東京駅周辺の将来イメージ

〈東京駅周辺の将来イメージ〉

【日本橋】かつての景観で魅力を取り戻す

さらに、東京駅のすぐ近くでも開発の動きが進んでいます。それが、日本橋です。

江戸時代には城下町として栄えた日本橋エリア。街のシンボルともいえる日本橋は、江戸幕府の開府と同年の慶長8年(1603年)に誕生しました。江戸と全国を結び、人と品物が行き交う五街道の起点として、日本の陸上交通の要衝という重要な役割を担ってきました。

東海道五十三次で描かれた日本橋

〈東海道五十三次で描かれた日本橋〉

有名な東海道五十三次でも描かれているように、当初の日本橋は木造でした。

1900年代の木造の日本橋

〈1900年代の木造の日本橋〉

1911年に石造りのアーチ橋として生まれ変わり、現在の日本橋の姿となります。

1911年の日本橋 石造りのアーチ橋に生まれ変わる

〈1911年の日本橋 石造りのアーチ橋に生まれ変わる〉

そのおよそ50年後の1963年、日本橋を覆うように首都高速道路が建設されます。翌年に控えた東京オリンピック・パラリンピックに向けて、都心部での交通混雑を回避することを目的に建設されました。

首都高速開通後 現在の日本橋

〈首都高速開通後 現在の日本橋〉

そして、半世紀以上がたったいま、首都高速道路は老朽化が進み更新が必要とされています。そこで計画されたのが、首都高速の地下化です。現在工事が進められており、2035年を目標に首都高速は地下道路として開通される予定です。

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〈首都高速道路撤去後の日本橋イメージ〉

その後は、日本橋の上にかつてのような青空が広がることが期待されています。広がる青空の下で水辺を楽しく歩ける街に日本橋も生まれ変わろうとしています。

日本橋の将来イメージ

〈日本橋の将来イメージ〉

【虎ノ門・麻布台】海外から人材を呼び込め

次に紹介するのが、「虎ノ門・麻布台」エリアです。ここでは、外国人が住みやすい街へと開発が進められています。

1864年頃の港区 江戸の大名屋敷

〈1864年頃の港区 江戸の大名屋敷〉

虎ノ門・麻布台がある港区には、都内で最も多く大使館が置かれています。江戸時代、ここには多くの大名屋敷があり、明治時代になると政府は国交を結んだ国に大名屋敷の跡地を拠点として提供しました。それがこの地域の大使館の多さにつながったと考えられています。

現在、多くの企業が日本国内における本社機能をこの地域に構えていて、外国人も多く暮らしています。

港区空撮 2014年

〈港区(2014年)〉

そしていま、虎ノ門・麻布台で進められているのが、さらに海外の人が働きやすく暮らしやすい街づくり。2023年には、700人規模の大型インターナショナルスクールや世界各国の多様な食文化に対応したフードマーケットが入った高層ビルの誕生が予定されています。

港区エリアの将来イメージ

〈将来イメージ〉

この開発では海外人材を呼び込むだけでなく、地元の人たちの暮らしやすさの実現も期待されています。この地域は、18メートルもの高低差があり、そのため坂が多いのが特徴です。また、一方通行の狭い道が多く、緊急車両が入りにくいことも課題となっていました。

今回の開発では、高層の建造物によって高低差を解消。周辺の道路も整備し、快適な街づくりが進められています。

【湾岸エリア】世界的な環境危機を乗り越え、次世代の都市へ

そして、もっと先の未来、50年100年先を見据えた都市開発が湾岸エリアで行われています。東京オリンピック・パラリンピックで競技会場となったこのエリアでは、“環境に優しいテクノロジー”をテーマに持続可能な社会の実現に向けた開発が行われています。

競技会場の広大な跡地を使い、空飛ぶクルマや海の上に浮かぶ水空合体ドローンといった最先端技術の実証実験が始まっています。

湾岸エリアの将来イメージ

〈湾岸エリアの将来イメージ〉

新たな街へと変貌を遂げる東京。未来の暮らしが、すぐ近くまで来ています。

【関連番組】

●クローズアップ現代 2023年1月11日放送 ※1月18日まで見逃し配信