旧統一教会に関わる問題点をまとめて 解散命令請求はどうなる?【7月5日更新】

NHK
2022年11月15日 午後6:09 公開

「世界平和統一家庭連合」・旧統一教会が社会から関心を集めるきっかけとなったのは、去年7月に起きた安倍元総理大臣の銃撃事件。逮捕・起訴された山上徹也被告は、これまでの調べで、母親が多額の献金をしていた旧統一教会に恨みを募らせ、団体と近しい関係にあると思った安倍元総理大臣を狙ったとみられることがわかっています。

その後、特定の信仰を持つ親の子ども「宗教2世」の問題が、知られるようになりました。多額の献金。政治と旧統一教会の関係。さらに、去年11月のクローズアップ現代の放送をきっかけに、教義のための「養子縁組」問題も明らかに。

いまどのような問題があり、国はどのように対応しようとしているのか。これまでクロ現で伝えてきた内容や、NHKのニュース、特集記事などから、問題点を整理します。

(2023年7月5日更新)

 

関連番組:クローズアップ現代(7月12日までNHKプラスで見逃し配信)


 

◆山上徹也被告・「宗教2世」問題

山上徹也被告

去年7月、奈良市で演説中の安倍元総理大臣が銃で撃たれて殺害された事件。ことし1月13日に起訴された、山上徹也被告。殺人や銃刀法違反などの罪に問われています。捜査段階の調べに対して、山上被告は母親が多額の献金をしていた「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述しています。

裁判に向けて6月12日、裁判所と検察、それに弁護士で争点などを絞り込む「公判前整理手続き」が本人も出席して初めて行われる予定でしたが、奈良地方裁判所に不審物のおそれがある段ボール箱が届いたことから、中止となりました。(のちに箱の中身は箱の中身は被告の刑を軽くするよう求める署名だと判明)。

 

👇NHKNEWSWEB(2023年5月18日)

👇NHKNEWSWEB(2023年6月13日)

👇NHKNEWSWEB(2023年6月22日)

  

特定の信仰を持つ親の子供、いわゆる「宗教2世」の問題。親が高額な献金をすることで家族の生活が追い詰められた、そう訴える2世が後を絶ちません。「貧困や孤立」だけでなく、「恋愛・結婚の自由がない」など問題は個人の人権におよび、「親が信じる宗教に自分の人生が壊されてしまう」と訴える2世たち。

👇クローズアップ現代 2022年9月5日(月)放送・まとめ記事はこちら

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 親が宗教を信仰している子どもたちが虐待を受けていると訴えるケースがあることを受け、厚生労働省は去年12月、児童相談所などが対応する際の留意点などをまとめた指針を全国の自治体に通知しました。

加藤厚生労働大臣は記者会見で「実際に被害に苦しまれた方々の意見も踏まえ、児童相談所や市区町村が相談にあたる際の留意点などを盛り込んだ。今後、学校などの関係機関にも浸透するよう周知を図っていく。宗教の問題を起因に悩みを抱えている方々の支援をしっかりと行っていきたい」と述べました。

👇NHK NEWSWEB(2022年12月27日)

 

◆政治と教会のつながりは

銃撃された安倍元総理大臣は、旧統一教会の関連団体「UPF」のイベントにビデオメッセージを寄せていました。事件後、高額献金などの問題が指摘されている教会と政治家の関係が問題視されるようになり、「選挙の際に協力を受けた」、「関連団体のイベントに出席した」、「祝電を送った」など接点を持つ政治家が相次いで明らかになりました。

さらに取材を進めると、教会は地方の政治家を通じて、政策に影響を与えようとしていたと証言する幹部も現れました。

👇クローズアップ現代 2022年8月29日(月)放送・まとめ記事はこちら

また、旧統一教会の関連団体「国際勝共連合」「国際平和連合」「UPF」のトップと務める梶栗正義氏に、クロ現はインタビューを実施。取材班が「実態として教会と関連団体は一体なのではないか」と問うと、梶栗氏は「関連団体は教会とは別の独立した組織である」とした上で、「UPFについては教会からの寄付が活動の原資になっている」と認めています。取材班は旧統一教会と政治の関係についても取材を続けています。

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◆霊感商法・高額献金問題

旧統一教会は2009年の「コンプライアンス宣言」以降、社会的、法的に問題となる行為をしないよう努めてきたとしています。しかし、今もなお教会が高額な献金を集めているという訴えが相次いでいます。

以前は、高額なつぼや印鑑を売りつける被害が主でした。それが、最近は正体や勧誘の目的を隠して近づき、親しくなったところで「今のままでは、先祖の因縁が解けない。こどもが幸せになれない」など不安や恐怖をあおる。そして多額の献金を強要し、経典などを授けるという形に変わってきていると言います。

また、取材を進めると、一人暮らしの高齢の信者に、組織的に献金を迫っていた疑惑も浮かび上がってきました。

独居高齢者をめぐるトラブルについて、全国霊感商法対策弁護士連絡会の川井康雄弁護士は、「これまでも、高齢者が旧統一教会の信者に、公正証書などの文書を書かされたという相談はあった。安倍元首相の銃撃事件の後も、亡くなった親の遺品を整理して、初めて親が高額な献金を旧統一教会にしていたことが分かったという相談が相次いでいて、この中に独居で親族とやり取りが少ない高齢者に献金を迫っていたケースが相当数あると思われる」と話しています。

全国統一教会被害対策弁護団はことし2月、教団に対し、元信者などが払った献金などの支払いを求める集団交渉を始めました。弁護団は5月に会見を開き、請求額は総額で26億円余りになったと発表しました。

弁護団は、集団交渉で解決しない場合は訴訟も検討するとしています。

 👇 NHK NEWSWEB(2023年5月25日)

  

◆被害者救済はかる新法などが施行

旧統一教会をめぐる問題の被害者救済をはかるため、悪質な寄付を禁止する新しい法律が去年12月の国会で可決。

ことし1月5日に、被害者救済法の一部と、霊感商法などの悪質商法による契約を取り消せる「取消権」を行使できる期間を10年に延長する改正消費者契約法、それに改正国民生活センター法が施行されました。

また、「不当寄付勧誘防止法」について、未施行だった行政措置や罰則、禁止行為に関わる一部の規定が4月1日、施行されました。

これに合わせて消費者庁は、この法律の運用を担う部署を新設したほか、行政措置などの際に有識者に意見を求める制度の運用を開始しました。

👇NHK NEWSWEB(2023年1月5日)

👇NHK NEWSWEB(2023年4月1日)

  

◆信者の子どもの「養子縁組」

去年11月のクローズアップ現代の放送で、スクープとして報じたのが、旧統一教会の中で行われている、「養子縁組」の問題です。

取材班に寄せられた情報から、子どもを授かった家庭から授からなかった 家庭に積極的に養子をだすことを、教団が奨励しているのではないか、という疑惑が浮上。独自取材で、知られざる実態とその問題点に迫りました。

👇クローズアップ現代2022年11月15日(火)放送・まとめ記事はこちら

取材班は、実際に養子に出された当事者に面会。カメラの前で初めて語ったインタビューで、女性は「教義の道具として生まれてきたのではないか」と、自らの存在意義について悩み苦しんできた体験を打ち明けました。

 

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支援活動を行っている弁護士には「教義に基づいて信者の家庭どうしで養子縁組をされ、悩んでいる」という相談が複数寄せられました。専門家は教団が行った養子縁組に法的な問題がある疑いもあるとして、行政が調査を進めるべきだと指摘しました。

  

番組放送後、厚生労働省は、自治体と連携して実態調査を開始。教団に対し、法令を順守して養子縁組のあっせん事業にあたるような行為をしないことの徹底を求める行政指導を、2回にわたり行いました。

信者向けのハンドブックに養子縁組をあっせんしていると受け取られかねない記載があると指摘を受け、教団は、指摘を受けた部分を消去するなどして修正した改訂版のハンドブックを厚生労働省に送付。

これについて厚生労働省が内容を精査した結果、親による養育が困難でないにもかかわらず養子縁組を推奨していると捉えられる記載があり、児童福祉法などに照らして適切ではないとする見解を教団に通知しました。

👇 NHK NEWSWEB(2023年3月7日)

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◆合同結婚式で渡韓した信者たち

教団が結婚相手を決める旧統一教会の合同結婚式。90年代に入るとその数は急増し、日本人女性が韓国人男性と結婚するケースが相次ぎました。いまも韓国に7000人いるという日本人女性信者の歩みや現状を取材しました。

いまも幸せを感じている人がいる一方で、結婚のために入信し信仰心がない夫との結婚生活が、うまくいかなかったケースもあり、合同結婚式によって苦しみを抱えている人たちがいることがわかりました。

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👇クローズアップ現代2023年1月30日(月)放送

 

◆6回の「質問権」行使 解散命令に該当する事実はあるか

国の大きな動きは旧統一教会への「質問権」の行使。宗教法人法に基づき、法令に違反して、著しく公共の福祉を害する行為の有無などを調査するものです。

去年11月11日、永岡文部科学大臣は、世界平和統一家庭連合・旧統一教会について、「質問権」を行使すると表明。同じ月の22日に行使しました。「質問権」の行使による調査などで、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、地方裁判所への解散命令の請求を検討する方針です。

平成8年に宗教法人法の改正法が施行され、「質問権」の既定ができて以来、行使されるのは初めてです。

👇NHK政治マガジン(2022年11月11日)

 

文部科学省によると、違法な勧誘による献金など、旧統一教会や信者の不法行為を認めた民事裁判の判決が22件あり、損害賠償額は累計で少なくとも14億円になるということです。

判決は1994年以降、東京や大阪、福岡、札幌などの裁判所で出されていて、旧統一教会による組織的な不法行為を認めた判決が2件、信者による不法行為を受け、旧統一教会の「使用者責任」を認めた判決が20件あります。

 

その後、文部科学省は去年12月に2回目、ことし1月に3回目、3月に4回目と5回目、5月に6回目の質問権を行使しました。

文部科学省は、回答内容を精査して追加で「質問権」を行使するか検討することにしています。

👇NHK NEWSWEB(2023年3月15日)

👇NHK NEWSWEB(2023年4月25日)

👇NHK NEWSWEB(2023年6月12日)

 

こうした中、旧統一教会から調査の依頼を受けた弁護士が去年12月からことし2月にかけて4回にわたって文部科学省に申し入れ書を送り、ほかの宗教団体で起きた事件の裁判例などをもとに解散命令請求をしないよう求めていることが、ことし3月に初めて分かりました

👇NHK NEWSWEB(2023年3月16日)

 

信教の自由を守りながら、宗教法人の活動にどこまで関与できるのか、そして解散命令請求につながるものが見つかるのかが重要な焦点になりそうです。