果物で“のどがイガイガ” クロ現ディレクターが「食物アレルギー検査」受けてみた

NHK
2023年4月26日 午後3:27 公開

もらってうれしい「高級メロン」…!

でも、実は私にとってメロンは全くうれしくない食べ物なんです。小さい頃から、メロンを食べると、「のどがイガイガする」というなんともいえない感覚に…

周りからは「こんなおいしいものを!」と言われながらも、「私いらない、誰か食べて」とゆずってきた過去があります。

この症状はなんなんだろうか…と思いながら早20年。「食べなければいい」と思い、これまで避けてきた問題ですが、今回の取材を経てアレルギーかも…と思うようになり、一度しっかり検査を受けることにしました。

食物アレルギー検査ってどんなことをするの?方法は?時間は?費用は?…などディレクターの実体験をもとにお伝えします。

(クローズアップ現代取材班)


【クローズアップ現代 4月26日放送(5月3日まで見逃し配信)】

検査を受けたのはアレルギー専門医師が在籍する相模原病院

今回、診察をお願いしたのは、国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター アレルゲン研究室長の福冨友馬先生です。大人の食物アレルギー研究・治療の専門家です。

先生のもとには、原因不明の食物アレルギー症状に苦しむ患者さんが訪れるといいます。

(ディレクター)

「私は自覚症状があるものの、あまり重症ではないと思うのですが…検査を受けてもいいものなのでしょうか…?」

(福冨先生)

「患者さんご自身が気になるのであれば、検査を受けていただいたほうが良いと思います。これまで、なんとなく苦手な食べ物があって、避けながら生活してきたという方が、検査を受けて調べてアレルギーの原因がはっきり分かると、「今後こうなりますよ」、「こういう時に悪くなりますよ」とか助言することができます。すべての食べ物に対して漠然とした不安を持っていた方が、具体的にどの食物を気を付ければいいかわかることで、生活のしかたを変えることができるんです。また、アレルギーだった場合、重症化するリスクもありますからね」

“検査をしてみたい” 受診先は…?

もし、自分が食物アレルギーかもしれない…と思ったらどうしたらいいのでしょうか?

(福冨先生)

「診療の目安としては、症状が気になったら、自分がどのような食べ物を食べてどのような症状がでるのか記録を取り、専門医にかかることが大切です」

日本アレルギー学会が運営する「アレルギーポータルサイト」には、アレルギーの症状の基礎知識や、専門医がいる各都道府県の拠点病院の一覧も掲載されているので、お住まいの近くの病院を検索することができます。

【アレルギーポータル】

https://allergyportal.jp/facility/ (※NHKサイトを離れます)※別タブで開きます

ステップ① 問診 アレルギーの“可能性”を探る

食物アレルギーであるかどうかを診断するためには、①問診、②血液検査、③皮膚テストの3つのステップが必要です。

最初に受けたのは問診。私の自覚症状がある食べ物は、「メロン」と「桃」です。食べると毎回のどがイガイガする、疲れているときは口の中が腫れぼったくなることもあります。

実はこの問診が大きな鍵になるといいます。

「いつから?」 「どんな症状が?」 「ほかの食べ物で症状がでたことは?」 「ほかのアレルギー症状は?」 「花粉症は?」など…根掘り葉掘り。

すると、先生とのやりとりの中で、意外な可能性も指摘されたんです。

(福冨先生)

「スイカとかキュウリは大丈夫ですか?」

(ディレクター)

「スイカはあるかもしれません。きゅうりは大丈夫です。あまり得意じゃないから食べていないだけなんですけど…」

(福冨先生)

「でもあまり食べない?」

(ディレクター)

「食べないです」

(福冨先生)

「味が嫌い?」

(ディレクター)

「味も嫌い…(笑)」

(福冨先生)

「それってアレルギーだったりする可能性があるんですよね。実は軽い症状があって、なんとなく嫌いだと思っていて食べないみたいな…結構調べるとアレルギー検査が陽性だっていうのがあるんですよ。スイカもメロンもきゅうりもウリ科なので、アレルゲン(アレルギーの原因)としてはよく似ているんですよね」

ただの「好き嫌い」だと思っていた野菜が実は、アレルギーの可能性が…。

まるで事件の謎解きをする探偵のように、質問は続き…

(福冨先生)

「サラダは好き?」

(ディレクター)

「野菜が好きではなくて…」

(福冨先生)

「サラダ食べておなか緩くなったりする?」

(ディレクター)

「…!!ありますね…!!」

先生、なぜわかったんですか!という驚きが…!

生野菜を食べると、時々おなかを壊すことも多かったので、外出先ではなるべく食べないようにしてきたんです。

問診の結果、食物アレルギーの疑いがあるとされたのは、メロン、桃、スイカ、キュウリなど。

これら果物や野菜へのアレルギー症状、花粉症と深い関係があるかもしれないと、福冨先生は指摘しました。(くわしくは後ほど…)

ステップ② 血液検査

次に行ったのが、「血液検査」です。

血液検査とは、血液中の「特異的IgE抗体」というアレルギーを起こす原因物質の量を測定するもの。花粉、ほこり、ダニ、カビ、細菌、動物、食物、寄生虫、薬品、昆虫、職業性アレルゲンなど150以上のアレルゲンが検査可能です。

保険適用の場合、1回の検査で13項目のアレルギー反応を調べることができます。(地域によっては保険で認められる項目数が違います)

今回私が問診をもとに検査したのは、「ハンノキ(花粉)」、「スギ(花粉)」、「ヨモギ(花粉)」、「ブタクサ(花粉)」、「カモガヤ(花粉)」、「ダニ」、「メロン」、「桃」、「りんご」、「エビ」、「小麦 2種類」、「ラテックス(ゴム)」です。

通常の血液検査と変わらず、検査瓶1本分(約10ミリリットル)の血液の採取で判断でき、結果は、2~3日後にわかります。

かかった費用は、問診、血液検査で保険適用(3割負担)がありで4000~5000円程度でした。(そのほか、今回は、紹介状がなかったため7700円別途費用がかかっています)

血液検査の結果は…

後日、受け取った血液検査の結果です。

検査した13項目のうち陽性だったのは、花粉(スギ・ブタクサ・ヨモギ・カモガヤ)とダニ。一方、自覚症状があった「メロン」、「桃」は陰性でした。

しかし、福冨先生は、血液検査の結果だけで食物アレルギーかどうか、最終的な診断を下すことはできないと言います。

(福冨先生)

「実は血液検査では、本当は果物アレルギーがあっても、2割ぐらいの方は陰性になるというデータもあるんです。実際、血液検査で陽性を示さない物質でも皮膚テストでは陽性になることもありえます。反対に、血液検査で陽性を示しても食べてもアレルギー症状を起こさないこともあります。特に果物アレルギーの場合は、皮膚テストの結果を重要視しています」

ステップ③ 食べ物のエキスを直接肌に…皮膚テスト

皮膚テストでは反応がでるのか…?

「皮膚テスト」は、アレルギーが疑われる食べ物のエキスを少量、皮膚に入れ、15分後の皮膚の反応をみるテストです。

血液検査と一緒に受けられるのかと思っていたら、落とし穴がひとつ…

ちょうど花粉症の薬を服用していた私。正確な診断を行うためには、検査前1週間は服用をストップしなくてはならないとのこと…。先生からは花粉症の症状や現在服用している薬の種類を慎重に確認されました。この時期、私は花粉症の症状が比較的落ち着いていたこともあり、アレルギーの検査を徹底して行いたいと考え、一時的に薬の服用をやめ、後日再び病院へ!(点鼻薬・点眼は使っていても大丈夫とのことでした)

検査当日は、先生の指示のもと、実際に自分が食べると症状がでる食物を持参します。

今回、私が用意するように言われたのは、

「メロン」、「リンゴ」、「桃」、「きゅうり」、「トマト」、「パイン」、「アボカド」、「みかん」、「バナナ」、「キウイ」

検査するとき、食材の「鮮度」が大切とのことで、検査当日に準備しました。3センチ角に切り分けてビニール袋に入れて持参しました。

持参した果物をつぶしてエキスを抽出、皮膚の上に垂らしていきます。そのあと、先生が針で皮膚の表面を傷つけます。(このやり方は福冨先生の独自のやり方だそうで、一般的には、果物を丸ごと持参して、専用の針を直接、野菜や果物に刺し、そのまま、すぐに針を皮膚にさすという方法をとるそうです)

針で刺す時の痛みは、チクっとするぐらい。傷つけてから、15分後の肌の反応をみていきます。

症状が重い人は、刺したところが、すぐに蚊に刺されたようにぷくっと赤く腫れるようなのですが…

私の腕は、垂らした直後は、何も変化なし。

と思っていたら5分を過ぎたあたりから、徐々に腕がむずかゆくなってきて、皮膚の一部が赤くなってきました。

15分後の結果がこちら…

メロン、きゅうり、トマト、アボカド、みかんの部分に赤みがでました。腫れた部分が3ミリ以上の場合、陽性と判断するとのこと。

結果、陽性と診断されたのは「アボカド」と「メロン」でした。

キュウリ、トマト、みかんは陽性とは判定できないが、弱いアレルギーがありそうだという判断でした。

意外だったのは、自覚症状が全くなかった「アボカド」の陽性反応。

サラダを食べた後おなかが痛くなっていたのは、ひょっとしてアボカドが入っていたのかもしれません。(自覚せずに食べていたので断定はできませんが…)

一方、自覚症状がある桃には反応が出ず…!

(福冨先生)

「今回検査した、この桃には反応しない…ということもあります。果物の鮮度、銘柄、産地、熟度、部位なども左右されたりしますし、また季節も関係することもあるんですよ」

アレルギー検査 総合的な判断は…

問診、血液検査、皮膚検査をもとに、総合的な判断は…?

(福冨先生)

「血液検査で花粉アレルギーとわかり、その花粉との交差反応で、メロンやアボカドのアレルギーが出ている可能性が高いと思います。きょう検査したほかの野菜・果物も軽く皮膚が赤くなっているので、これも疑いがあるレベルですね」

野菜や果物のアレルギーは、花粉症が大きく関わっているとのこと。ブタクサやイネ科の花粉症の原因となる「プロフィリン」という物質。この物質に対してアレルギーがある可能性が高いということでした。

(福冨先生)

「プロフィリンは、すべての生の果物・野菜にも含まれていることが分かっています。人間の免疫反応では花粉のプロフィリンと果物野菜のプロフィリンを区別できません。ですので、ブタクサ、イネ科の花粉症の方が生の果物・野菜を食べてもアレルギー症状がでてしまいます。これを「交差反応」と言います。特にメロンやスイカは顕著に症状が出やすいですね」

皮膚テストでのキュウリやトマトへの反応から、広く新鮮な果物・野菜のアレルギーはあるのかもしれないという判断に…。

(ディレクター)

「ということは血液検査、皮膚テストともに陽性ではなかったのですが、自覚症状があった桃もアレルギーの可能性が…?」

(福冨先生)

「桃に対してもアレルギーの可能性はあると思っています。血液検査と同様に、皮膚検査も偽陰性になることが珍しくありません。皮膚検査は血液検査よりは陽性率が高いですが、アレルギーが軽い人は、皮膚検査を行ってもその軽いアレルギーを証明するのが難しかったりすることをしばしば経験します。今回は陽性にはならなかったのですが、桃の皮膚テストを繰り返すと陽性になる可能性が高いと考えています」

ということで、桃に関しても注意が必要なようです。

私のような体質の人は、サラダを食べると、食べた直後にのどや口の症状が出なくても、あとから少しおなかが緩くなったりすることもあるとのこと。

ただ、腫れの大きさからも見ても比較的軽度であるため、気をつけながら生活すれば問題はまったくないとのことでした。

ちなみに、皮膚検査は、保険適用(3割負担)で1000円程度でした。

対策は…?

(ディレクター)

「これからどうしたらいいでしょうか?」

(福冨先生)

「対策は、細かいことを言うといろいろあるのですが、一言でいえば症状がでる果物を食べないようにするということ、になります。生の果物・野菜はどれに対しても少しはアレルギーがあると思っておいた方が良いですが、幸い症状は軽いのでそんなに心配する必要はないと思います。メロンやアボカドのジュースなどを一度に大量に摂取しなければ大丈夫ですよ。生野菜をたくさん食べられない方はビタミンC不足になりやすいので、ビタミンCのサプリを購入して飲んでおいたほうが良いと思います」

私自身、もともとメロンやアボカドは好きではなかったので積極的には摂取していなかったのですが、今後は外食などの際に食べるものに気をつけて自分の身を守っていこうと思いました。                        

大人のアレルギーは、意外な原因や対象となる食べ物も多種多様です。「アレルギーがあるのかないのか」、それを知ることも大切なことかもしれないと思いました。

「もしかしたら、自分もそうかも…」と思ったときは、受診・検査をして適切な行動がとれることも重要だなと今回の体験を経て感じました。


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