サーファーと納豆? 食物アレルギーを引き起こす意外な組み合わせ

NHK
2023年4月26日 午後3:28 公開

いま注目されているのは、成人になってから新たに発症する「大人」の食物アレルギーです。

花粉症の人が果物や野菜のアレルギーに?ペットを飼っている人が牛肉や豚肉のアレルギーに?医療従事者は果物アレルギーになりやすい?サーファーには納豆アレルギーが多い? など… 

実は、食物アレルギーの中には、意外な組み合わせによって引き起こされるものがあるんです。かつて原因不明とされることが多かった大人の食物アレルギー。身近にある“意外な原因”を取材しました。

(クローズアップ現代取材班)

【クローズアップ現代 4月26日放送(5月3日まで見逃し配信)】

アレルギーとは?

食物アレルギーとは、本来は、体に害はない食べ物に対し、体内の免疫が過剰に反応することです。

症状は、じんましんやかゆみ、おう吐などのほか、時には命に関わるアナフィラキシーショックが引き起こされることもあります。

大人の食物アレルギーとは?特徴は?原因は?

子どもの場合、多くは卵や牛乳、小麦で起こりますが、大人の場合は、果物、野菜、小麦、エビやカニ、肉、納豆など、発症の原因となる食べ物は多種多様です。

では、どのようにして食物アレルギーを発症しやすい体質になってしまうのか? 

そのメカニズムは、現在の医学では十分に解明されていませんが、理由の1つに、生活習慣や環境など「食べ物以外の」要素が関わっていることが分かってきています。

花粉症の人が食物アレルギーに?

代表的な例が、「花粉症」です。

野菜や果物のアレルギーに悩んできた50代の女性は、30代のころ豆乳を飲んだことがきっかけで、突然重い症状があらわれました。その後、リンゴ・桃などの果物、トマトやキュウリなどの野菜が次々食べられなくなり、体調が思わしくない状態が続きました。

アレルギーの専門医の診察を受け判明した原因が、花粉症でした。

実は、女性は以前から花粉症に悩まされていました。

ハンノキという樹木の花粉に含まれるアレルギーの原因となる物質と、リンゴや桃、大豆などに含まれるアレルギーの原因物質とは、成分のかたちがよく似ています。そのため、体内の抗体が間違えて過剰な免疫反応を起こしてしまい、食物アレルギーの症状が現れたのです。これを「交差反応」と言います。

花粉の種類によって、交差反応を起こす食べ物は異なります。

健康そうなサーファーが、なぜ? 「交差反応」は他にも…

20年以上サーフィンを続けている男性は、ある日突然食物アレルギーを発症しました。

医師の診察を受けたところ、アレルギーの正体は納豆だと判明。

それは納豆のねばねばに含まれる「PGA」と呼ばれる成分が原因でした。

この「PGA」はクラゲにも含まれており、クラゲの触手が標的に触れ、毒針を刺す時に「PPGA」を生み出すとされています。

クラゲに繰り返し刺されたサーファーは、皮膚からPGAが体内へと入り、アレルギー反応が起きる状態になります。そこに、PGAを含む納豆を食べると、アレルゲンが侵入したと認識し症状を起こしてしまうのです。これも「交差反応」です。

そのほかにも、ペットを飼っている人のアレルギーの原因は、ペットについたマダニです。山間部などに生息するマダニが犬などのペットに寄生。噛まれることで、マダニの唾液に含まれる成分と牛肉や豚肉の成分が交差反応を起こします。

ほかにも、医療従事者のアレルギーの原因は、天然ゴムの手袋に含まれるラテックス。ラテックスが荒れた皮膚などから体内に入り、バナナやアボカドなどの果物に含まれる原因物質と交差反応を起こします。

運動引き金に… 運動誘発アレルギー

大人の食物アレルギーには、「交差反応」とはまったく別のメカニズムで発症するものもあります。

島根県在住69歳の男性は、2年前、食物アレルギーが原因で突然意識を失いました。

原因は、外出先で出された小さな洋菓子を食べ、ある行動をとったことにありました。

「お茶と一緒に、うっかり小指大位のバウムクーヘンを食べて、15分くらい歩いて帰って、ほっとしてビールを飲んで、お手洗いに行きまして、その次は覚えがない」

男性が、食物アレルギーと診断されたのは、5年前。小麦を食べた後に、運動などをすることで発症するというものでした。

このアレルギー、小麦を食べただけでは発症しません。

食後、数時間の間に運動や飲酒、入浴、鎮痛剤の服用などをするとアレルギー症状が誘発されます。

じんましんの他、呼吸困難や意識消失など重症化しやすいと言います。

また、小麦のほかにも、エビやカニ、果物でも起きることが分かっています。

自分がアレルギーかもしれないと思ったら…

大切なのは、専門医に診てもらうことです。

問診に加え、血液検査や皮膚テストなどを行い、総合的にみて診断します。もしかしたらアレルギーではなく、違う病気かもしれないということもわかります。アレルギーであれば、原因を特定し、自分が何を食べられて、何が食べられないのかをはっきりさせることが大切です。

もし自分にかゆみやじんましんなどの症状が出ていて気になるようだったら、何を食べたのか、食後、どれぐらいの時間で症状が出たのか、自分で記録を付けておくと良いそうです。

 

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