【証言】安倍元首相銃撃 勤務先や近所などで山上徹也容疑者を知る人は…

NHK
2022年7月11日 午後5:28 公開

安倍元総理大臣が銃で撃たれ、死亡した事件で、殺人の疑いで逮捕された山上徹也容疑者(41)。今回、クローズアップ現代では山上容疑者のかつての勤務先の先輩や上司、そして近隣に住む人などにインタビューを行いました。そこから浮かび上がってきた人物像とは…。証言をまとめて、お伝えします。

(「クローズアップ現代」取材班)


 

勤務先では…最初“真摯(しんし)に対応”

山上容疑者が働いていた工場の責任者

 

おととし10月から京都府内の工場で派遣社員として、フォークリフトで製品などの積み降ろしの作業にあたっていた山上容疑者。働いていた工場の責任者によると、入社後の半年間は勤務態度に問題はなかったということです。

 

山上容疑者が働いていた工場の責任者:

「(入社面接を)担当した現場の管理者に聞き取りしたところ、言葉遣いは別に荒々しくもなく、態度は本当に真摯(しんし)に対応していた。ちゃんと『です・ます』調の言葉と、普通の社会人が使う程度の敬語というのを操っていたと聞いています。

同僚、それから現場の責任者に聞き取り調査をしたところ、まず働き始めて半年ぐらいは非常におとなしくて良好な勤務態度だったというふうな報告を受けています」

 

 

半年ほどで態度に変化が

 山上容疑者が働いていた職場の先輩

 

その後、山上容疑者の態度に変化が現れます。

働き始めて半年ほどが経った去年4月ごろ、物静かだった山上容疑者が不平不満をもらすようになったと、当時の職場の先輩は振り返ります。

 

職場の先輩:

「半年間は別に何も言わずに働いていたんですが、その頃から、不平不満を言い出していました。当時は他にも作業員がいて、その作業員がそんなに動いていないとみた彼は『なんで俺が動かなあかんのや』と。で、『その作業員と、もう一緒に仕事したくない』とか、そこまで怒ってはいなかったですが、どんどん態度が悪くなってきました」

 

山上容疑者が職場で乗っていたフォークリフト

 

その後も、作業を手順通りに行わなかったり製品を雑に扱ったりするケースが目立ったという山上容疑者。ことし1月ごろにはトラックへの荷物の積み込みを巡り、言い争いになるなど、衝突もあったと言います。

 

職場の先輩:

「荷物をトラックに積んで、数量に間違いがないかを、最後にトラックが出る前に、もう一度チェックをするんですけども、それをしなくなってきました。最初は『ちゃんとやってよ』と言ったら、素直にやっていたんですが、それがだんだん、しなくなってきて…

『なんでせなあかんねん、俺が準備したの信じられへんか』って。で、『いやいや、それは本人もドライバーさんも最後に積み終わったら、数を確認しようねっていうのが会社のルールやから』って言って。そうしたら彼は、『お前がすれば』と、怒って、にらみ返している状態でしたね。しょうがないから代わりに、僕がやっていました。忙しい時期だったので」

 

 

次第に仕事を休みがちに…

山上容疑者の上司

 

その後、山上容疑者はことしの4月初旬から欠勤が増え始めます。最初は1日だけだったのが、次第に連日休むようになったと言います。

  

山上容疑者の上司:

「私のほうには『ちょっと体調がすぐれないので、休ませてほしい』と連絡が入って。コロナ禍ということで来てもらうのも、控えてもらいました。ただ、最後のほうになると連日でお休みを取るようになって。で、2日目以降はちょっと連絡がなくてこっちから連絡を取ることもありました」

 

山上容疑者は4月下旬には「体調不良で退職したい」と会社に申告。有給休暇を消化したあと、5月中旬に退職したということです。その後、テレビの報道で銃撃事件のことを知り、職場は騒然としたと言います。

 

山上容疑者の上司:

「正直信じられない。実名が公表された際には、『うちで働いていた人と同姓同名の方なのかな』という認識でした。実際に映像とかで確認して、まさかこういうことをやるタイプに見えなかったので、もう、驚きでいっぱいでした」

 

職場の先輩:

「(山上容疑者が)拳銃のようなものを、うちにまだ勤務してる時に作っていたのではないかと思い、私ともトラブルがあったので、恐怖をすごく感じました」

 

 

「まるで人がいないような、自分だけの世界の人」

 

この春まで勤務していた工場では強い口調で反論するなど、感情的な態度を示すこともあったという山上容疑者。近隣に住む人たちの目にはどのように映っていたのか。

同じマンションに3年ほど前から住む女性は、銃撃事件が起きる数日前に、山上容疑者とマンションの廊下ですれ違ったと言います。

 

近隣に住む女性:

「エレベーターの前で、降りてこられた方がいて。普通に『こんにちは』って言うと、あいさつも会釈もなくて。ちょっと悲壮感というか、怒っている感じかな。目線をちょっと下にそらして、目線も合わさないですれ違った方がいらっしゃるのがすごく印象的で、覚えていたんです。まるで人がいないような、自分だけの世界みたいな状態だったので。すれ違う人で私もそういうふうに記憶することは、そうそうないんですけれども、かなり印象的だったなっていうふうに思いました」

 

 

1年ほど前に“異常な音”

  

さらに取材を進めると、山上容疑者と同じフロアの住人からは“異常な音”を聞いたという証言もありました。

 

同じフロアに住む男性:

「“キュイーン”っていうのかな、パイプを切るような音って大体想像つくでしょう。キュイーンっていう、そんな音で。僕はそのときは管理会社にクレーム入れなかったけど、下の階の人か隣の階の人かがクレームを入れたんでしょう。だから、管理会社も貼り紙をしました。『電気道具を使った音がうるさいんです』というクレームがあったんで、心当たりのある方は…って管理会社から通達されていました。

もう1年ぐらい前の話だから、僕はそんなに記憶が定かではないんですけど、夜遅い時間だったんじゃないかな。だから、クレームが来たんだと思いますよ。昼間やったら多分クレームは来ていない思いますよ」

 

この男性は職業柄、同様の道具や工具を使っていたことから、このような音がすることに疑問を感じたといいます。

 

男性:

「僕もそういう機械(工具)を扱う仕事をしてるから、そういう音によく似ているなという感覚にはなります。だから、そのときには業者の人が来てるのかと最初思いました。でも何でこのマンションの部屋で使う必要があるのかは、疑問ですね」

 

その後、この男性は同じような音を聞いたことはなかったと言います。山上容疑者とすれ違うことはあったものの、言葉を交わすことはありませんでした。

 

男性:

「今のご時世やから、声も出されへんし、でも、『ああ、おとなしい人やな』っていうぐらいな感覚でしたよ。僕自身、部屋で爆発物などが見つかったことを聞いたときに、もしそれが暴発したら、ここに住んでる人にみんな被害があった思うから、ちょっと怖いですね」

 

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