ChatGPT開発企業の天才エンジニア、シェイン・グウさんが語るAIの未来

NHK
2023年4月11日 午後4:08 公開

去年11月の発表後わずか2か月で1億人のユーザーを獲得した生成系AI(※)ChatGPT。ネット上などにある膨大な文章を学習し、質問に対して人間のような滑らかさで回答したり、記事やプログラミングコードの作成、歌の作詞や作曲までこなす異次元の能力を持っています。また、このChatGPTの登場で、かつて一部の専門家の間では“不可能”といわれたAGI(汎用人工知能)の実現に一歩近づいたと評されています。AGIとは人間と同様の感性や思考回路をもつ人工知能のことで、イメージするならば言わばドラえもん。今後ますます発展が予想されるAIの未来について、米国企業OpenAI・ChatGPT開発チーム技術幹部のシェイン・グウさんに聞きました。

(クローズアップ現代 ChatGPT取材班)

※生成系AI:コンテンツの生成ができるAI=人工知能のこと。

2022年はAGI元年

ーChatGPTに代表される最近のAIの発展をどう捉えていますか?

シェインさん:

2022 年が AGIのイヤーゼロ、つまり「AGI元年」となったことは、とてもエキサイティングでした。僕はおよそ10年にわたってAIの研究を行ってきましたが、去年ほどワクワクした年はありません。全ての人、ビジネスマンでもアーティストでも、プログラムを触ったことのない中学生、高校生でも、ChatGPTがどういうことができるのかを理解し、アイデアさえあれば誰でもこのAIを使って社会的価値を生み出せるようになったんです。これは本当にエキサイティングなことで、今後は毎月毎月がその前の月よりも、よりエキサイティングになって行くと思います。

ーシェインさんご自身はChatGPTをどう利用していますか?

シェインさん:

僕はプログラミングでわからないことがあったら、大体ChatGPTに聞きます。99%答えてくれる感じですね。あと僕は日本語を書くのがあまりうまくないんです。だからChatGPTに「この日本語の文面直してくれ」みたいな感じで使ってますね。

ー冒頭で2022年はAGI元年だったとおっしゃりましたが、どのくらいの可能性でAGIが実現するとお考えですか?

シェインさん:

まず僕はAGIというのは人間最後の発明だと思ってます。というのはAGIが実現したときに人間以上の効率で発明ができしまうからです。一方で、AGIという言葉自体が論争されているということも理解しています。 非常に多くの人が、AGI に対してさまざまな想像や期待を持っていますよね。どのくらいの可能性でAGIが実現するか、ですが、将来については、僕から具体的に話すことはまだできません。

ただ私たち人類はChatGPTなどAI技術の力を借りて今後ますます単純労働の多くを自動化でき、より高度な思考や困難な問題解決に創造性を集中できると思います。またこれは個人的な見解ですが、AGIが実現したとしても、それは人のアシスタントであるべきだと思っています。まずは人がやることを決め、AIが10倍の効率とか、あるいは10倍のアイデアをくれる。そして何か自分が悩んでいるときには励ましてくれる友達のような、AIにはそういう存在であってほしいと思いながらChatGPTのチームで仕事をしています。

ChatGPTの規制には多くの議論が必要

AGIへの道を切り開いたといわれるChatGPT。一方で差別や偽情報の助長、サイバー攻撃への悪用といった負の側面も指摘されています。イタリアでは「ChatGPTは、どのように情報を集めているか不透明で個人情報保護の法令に違反する可能性がある」として使用が一時禁止されました。

ーChatGPT のような生成系AI は非常に有用だと思いますが、不安や恐怖を感じている人もいます。何らかの規制が必要だと思われますか?

シェインさん:

OpenAIの社内では安全性について、日々さまざまな議論をしています。政府や教育の専門家、一般の人々ともよく話し合っています。しかし私たちは決してあらゆることについての専門家ではありません。私たちにできるのは基本技術に取り組み、それを安全に保つことです。規制については多くの議論が必要だと思います。 私たちは世界中の政府に、この技術を熟知している企業やグループと活発に討議すること、また実際に経験のある人々を雇用することを奨励します。 規制に関しては感情的なものではなく、客観的である必要があります。彼らが利害関係者と充分に話し合いができたと感じたところで、私たちOpenAI側の意見を提供したい、議論に参加したいと思います。

ーChatGPT、AIに仕事を奪われるのではと不安を感じている人々に関してはどう思われますか?

シェインさん:

技術革新が起きるたびに混乱が発生します。 常に何らかの議論が行われます。これは僕が敬愛する、ある専門家の言葉ですが、彼は「ものごとの生産性を向上させることができる技術は、基本的に社会に役立つ可能性がある。ただ、それを許容するかどうかは、人々次第だ」と言っています。

雇用・失業の問題に関しては、政府などに非常に重要な役割があると思います。AIは 生産性を向上させ社会をより良く変化させるとことができると思いますが、変化をゆるやかにする方法や、過渡期に多くの人が苦しむことのないようにすることは非常に重要な問題だと思います。

ドラえもんに親しむ日本はAIで飛躍できる

日本で生まれ小学校6年まで過ごしたシェインさん。AIの未来を切り開き発展させていく存在として日本に大きな期待を寄せています。

ーAIの発展における日本の可能性をどう見ていますか?また日本へのメッセージがあればお願いします。

シェインさん:

僕はこれから日本は、もっともっと大きく飛躍できると思っています。ツイッターとかソーシャルメディアを見ていても日本人はChatGPTの使い方がかなり面白いし、ユニークです。考えやこだわりの方向性がアメリカなどの効率主義とは大きく違うんですけど、でも、とても深い。そして他の国と違ってAIを恐れていない、道具として見ていない。それは、ドラえもんの影響が大きいのかなと個人的には思うんですけど(笑)AIと一緒に生きる世界がどういうものなのか、を幼少期から何となく理解している。これは世界の中でも独特だと思うんです。

ChatGPTの技術によって2つの大きな壁がなくなりました。それはプログラミングなど専門性の壁と英語など言語の壁です。この2つの壁がなくなることによって日本の専門性は爆上がりすると僕は思っていて、サムさん(※)にはこう言っています。「生成系AIの分野で伸びしろが一番あるのは日本ですよ!」って。OpenAIは、これから日本とどんどん仲良くなっていきたいです。最近僕は日本語のツイッターアカウントも開設しました。日本のみなさん、気軽にメッセージをお送りください!

※ OpenAIのCEOサム・アルトマン氏

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※ その後の情報に基づき、2023年4月13日、記事を修正しました。