レジ袋のかわりに使う「エコバッグ」。
コーヒーチェーンやコンビニなどで普及が進む「リユースカップ」。
最近では日本マクドナルドが全店でプラスチック製のストロー・スプーン等を「紙製」や「木製」に切り替えたことも話題になりました。
“でも、実際はどのくらいエコに効果があるの?”
二酸化炭素(CO2)は具体的にどのくらい排出削減できているか。そもそも代替品を作るにも二酸化炭素は出ているし、本当にエコなのか……もやもやしたことがある人もいるのではないでしょうか。
今回番組では、東京大学講師で環境工学が専門の中谷隼さんとデータ分析を行いました。
その結果から、エコグッズの本当に効果のある使い方が見えてきました。
(クローズアップ現代取材班)
取材協力 東京大学大学院工学系研究科・中谷隼講師
製品の製造から廃棄までに生じる環境負荷を測定・数値化し、環境効果の実証実験を監修
エコバッグ 実は○○回以上使って、ようやく効果がある?
今や買い物に欠かせない存在となったエコバッグ。
でも、このエコバッグも私たちが手にするまでの間にCO2を排出しています。
プラスチックのレジ袋の代わりに何回エコバッグを使えば、ようやく“エコ”と言えるのか?
中谷さんの答えは「50~150回」。(出典:UNEP (2020))
取材班は「思ったより多く使わないとエコとは言えないんだな」と感じましたが、いかがでしょうか。また、数字にも幅があります。
なぜか。
一般的なエコバッグは“綿”や“ポリエステル”といった素材でできていることが多く、そうした素材を作る段階でCO2を排出しています。そこから糸を紡いで布を織るなどの「製造」や、店頭に並ぶまでの「輸送」など、様々な段階で出るCO2排出量を積み上げると、結果的にレジ袋の50~150倍の数字になったのです。数字に開きがあるのは、CO2の排出量が素材によっても変わりますが、「重さ」によって大きく変わるのも理由。より重い製品のほうが、製造時も輸送時も多くのエネルギーが使われ、CO2の排出量も増える、ということ。
ちょっと説明が細かくなりましたが、上記を図式化したのがこちら。
これは「ライフサイクルCO2」という考え方です。モノが生まれてから廃棄されるまで一連の流れのなかで排出されるCO2をすべて含めて考えよう、という概念。
これを頭の片隅に入れておくと、どうすればより効果的なエコを実践できるかの“ものさし”になりそうですね。
紙ストローとプラスチックストロー、どっちがエコ?
次に、近年普及が進む紙製のストロー。
ドリンクの味がこれまでと違うように感じる、形が崩れてしまうなどの声も聞かれますが、実際どれくらいCO2の削減に効果があるのか。
中谷さんの答えは「約2分の1」。(出典:Tetra Pak (2019))
紙製のストローはプラスチックストローに比べてCO2の排出量が半分ほどになるというデータがあるといいます。
中谷隼さん
「紙は植物からできています。植物は大気中のCO2を吸収するため、その分だけ環境影響が低いと考えられています。一方で、その紙を作る段階や、ストローに加工にする段階などでCO2を排出するため、それらを積み上げるとプラスチック製ストローの半分というのがひとつの目安になると思います」
プラスチック容器のリサイクル どう処理するのが正解?
最後は少し毛色が異なりますが、取材班がSNSで「エコについての悩み」を質問したときに多くの人から回答があったこの問題。
「弁当容器を水で洗って捨てているけど、そもそも水を使うのがもったいないのでは?」
「洗ってまでリサイクルするほど、効果があるのか?」
中谷さんの答えは、
そのまま捨てて燃やした場合のCO2排出量を「1」とすると
①水で洗うことによるCO2排出量は「40分の1」
②お湯で洗うことによるCO2排出量は「8分の3」
中谷隼さん
「確かに、水で洗うことは環境負荷がゼロなわけではありません。水を使うときに浄水施設でエネルギーを使ったり、下水処理施設でエネルギーを使ったりしています。ただ、それでも可燃ごみに捨てて燃やしてしまった場合の環境影響のほうが重いというのが我々の計算です。多少の環境負荷があっても、リサイクルのために水で洗うのは問題ないかと思います。一方でお湯を使うことは、環境影響が結構大きいんです。より多くのエネルギーを使うので、私たちの試算だと水で洗うときと比べて影響が約15倍とでています」
中谷さんによると、油汚れなどがひどいとき、小さい容器であればリサイクルの効果もそれほど大きくないため、洗わず捨てるほうがエコなときもあるということでした。
※リサイクルの方法についてはお住まいの自治体のルールをご確認ください。
いかがでしたでしょうか。
この記事では二酸化炭素(CO2)削減という観点でどうすればより効果的なエコを実現できるか見てきましたが、環境問題は“海洋プラスチック”や“水資源”についてなど、さまざまな視点で考えていく必要もあります。
エコについて考えるとき、ひとつの参考になれば幸いです。
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それ本当にエコですか?徹底検証!暮らしの中の環境効果 初回放送日: 2022年10月24日 ※放送後1週間、見逃し配信でご覧頂けます
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