きのう(6日)日本に入国したイタリアに滞在歴のある男性が、オミクロン株に感染していることが確認されました。国内で感染者が確認されたのは3人目です。
オミクロン株について研究者が注目しているのが、ウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」です。なぜそこに注目するのか?専門家に聞きました。
関連番組
クローズアップ現代+「“多重変異”オミクロン 見えてきた未知の領域」(2021年12月7日放送 )
〔この記事の内容〕
- オミクロン株の特徴 これまでの変異株と違う?
- オミクロン株が懸念される理由は?
- 変異の特徴 どこまで分かっている?
- 私たちができることは
オミクロン株の特徴 これまでの変異株と違う?
「スパイクたんぱく質」はウイルスと人間の細胞とが結びつく「鍵」となる部分です。オミクロン株の場合、ここにおよそ30か所の変異があることがわかっています。東京医科歯科大学の武内寛明准教授は、これまで「デルタ株」などにも見られた“既知の変異”と、特徴がよく分からない“未知の変異”があると指摘します。
東京医科歯科大学 ウイルス制御学分野 准教授 武内寛明さん
ウイルス学が専門 新型コロナウイルスのゲノム解析などを進める
東京医科歯科大学 准教授 武内寛明さん:
今までのアルファ株はデルタ株の特徴を持っていませんでしたし、デルタ株はアルファ株の特徴を持っていませんでした。しかしオミクロン株は、アルファ株の特徴変異もデルタ株の特徴変異も持っています。さらに今まで見たことがない変異パターンを追加で持っていて、つまり“既知の変異”と“未知の変異”が合わさっている変異株なんです。
オミクロン株のスパイクたんぱく領域には、アルファ株の特徴変異である「N501Y」や免疫逃避変異と言われている「E484K」の部位に変異が入っています。
アルファ株とデルタ株の特徴変異、さらに免疫に影響を与える部位に変異が入っているのです。
今までのコロナウイルスとは、まったく違う“顔かたち”をしたウイルスであろうと。
“顔かたち”が変わることで、今までコロナの症状だと思っていたものとは違う症状を呈する可能性も、もちろん否定できません。
オミクロン株が懸念される理由は?
武内さんが特に注視しているのが、“未知の変異”の1つ「G446S」という変異です。コンピューターのシミュレーションでは、この変異が起きると人の細胞と結合しやすくなり、感染力が高まることが懸念されていましたが、今回初めて実際に発生しました。
武内さん:
今まで見たことがないパターンでの組み合わせで、さらにほかの未知の変異も入っていることが、WHOの「懸念される変異株=VOC」に定義された1つの要因であると思います。
南アフリカ共和国では、デルタ株の感染が拡大している状態でオミクロン株に置き換わってきたのではなく、デルタ株の感染流行が抑えられているなかで、オミクロン株が増えてきました。
オミクロン株とデルタ株で、コンペティション=競合が起こったかどうかはまだ検証の余地があります。少なくとも「人から人への感染伝播する能力を有している新たな変異株」であることは間違いないと、はっきり申しあげることができます。
スパイクたんぱく質のイメージ 人間の細胞とつなぐ「鍵」の部分となる
武内さん:
実際に“既知の変異”と同じような特徴を有しているかもしれないし、”未知の変異”と組み合わされることで、感染力や伝播性、さらにワクチンやわれわれに対して、既知の変異株より非常に悪い影響を与える可能性もあります。
未知のものと既知のものが組み合わさっているからこそ、注意しなければならない。
「さまざまな変異を有しているから注視しなければいけない」というのが私の意見です。
変異の特徴 どこまで分かっている?
武内さん:
「変異していることだけはわかるけれども、それ以外のことは何もわからない」という状況ではありません。少なくとも、既知の変異がどういう特徴なのか、その特徴づけはできています。アルファ株やデルタ株などで特徴づけられた変異が複数入っていて、これがどういう影響を及ぼすかは容易に予測することができます。
そういう意味では変異が多く入ったウイルスですけれども、「どういうウイルスか、さっぱりわからない」「取っかかりすらない」ということではありません。今までの経験・知見を生かすことによって、オミクロン株の特徴の解析が今までよりも早く進むことが十分考えられます。
私たちができることは
武内さん:
オミクロン株もコロナウイルスの仲間ですし、コロナはコロナです。今までとってきたさまざまな対応や、経験からくる知見に基づいた対応を継続することが、少なくとも今われわれがやるべきことだと思います。
「適切なマスクの着用」
「三密を回避すること」
「不要不急の外出を極力控えること」
日々の生活のなかで感染拡大を食い止め、従来から皆さんがとってきた予防策を、引き続ききちんと講じることで医療を十分受ける体制を保つことができます。そうすることで、“第5波”のようになる可能性を低く抑えることができると思います。
オミクロン株は市中流行株より懸念すべき特徴を有している可能性があるので、それを踏まえて、今一度、感染予防対策や医療体制などを整えることが重要だと思います。
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