値上げ/物価高 なぜ起きた?いつまで続く?

NHK
2022年10月3日 午後5:29 公開

今年に入って何度も経験してきた値上げの波。10月に最多となる6700品目以上の食料品が値上げされ、家庭や企業を直撃しています。異例の物価高の原因は?いつまで続く?物価高の苦境にあえぐ現場や専門家への取材を記事にまとめました。 
(クローズアップ現代 取材班)

● クローズアップ現代 2022年10月3日放送 ※10月10日まで見逃し配信

● クローズアップ現代 2022年10月4日放送 ※10月11日まで見逃し配信

なぜ値上げは起きた?

今月値上げした6700品目以上の詳細は、こちらの記事からご覧いただけます。(※9月30日時点の取材です)👇

そもそもなぜ、いま多くの品目で値上げが起きているのか?この1年間で1.4倍の値段になった食用油を例にみていきます。

去年、世界経済はコロナによる落ち込みから回復し、一気に需要が拡大。さらに異常気象などの要因もあり、食料不足、モノ不足が深刻になります。

そこに今年の2月、ロシアがウクライナに侵攻。

すると、ウクライナからの流通が止まる中で・・・ウクライナ産のひまわり油が高騰し、その代替品としての菜種油も高騰しました。

この菜種油を多く使う日本の飲食店や消費者に大きな打撃となりました。

そして、さらにその代替品になったパーム油も高騰。

こうした中で今年3月、パーム油の最大生産国のインドネシアで値上げに抗議するデモが起き、インドネシアでは、国内の供給量を確保するため、一時、輸出が禁止されました。

日本では・・・もともとカップ麺やスナック菓子、洗剤やシャンプーなどパーム油を使っていたので、こちらも値上げしました。

それでは、なぜこれほど多くの品目が一度に値上げしているのでしょうか?

みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介さんによると、それに関わる重要な数字が“原価率”。売り上げの中で原価がどれだけの割合を占めているのかを表すものです。

日本の主な産業では80.5%。多くを原価が占めているんです。

日本は他の国よりも原価率が高く、その原材料も輸入に頼っているので、海外の物価の影響を受けやすく、さらに、高い原材料を補うために、人件費や利益を削り続けて、給与も少なくなると言う悪循環におちいっているといいます。

物価高 その影響は・・・

取材した大手厨房機器買い取り業者によると・・・物価高になり始めた6月頃から、買い取り件数が例年の1.5倍になり、現在も増え続けているといいます。

コロナの影響に加えて、物価高の影響が深刻化し、傷の浅いうちに廃業を決断するケースも多いのでは、とのことでした。

下の図は民間の調査会社のデータ。物価高で倒産した企業の件数です。

2020年は97件、2021年は138件と少しずつ件数は増えていて、今年は8月の時点で、すでに過去最多の150件となっています。

倒産を防ぐには?商品・サービスの値段を上げられない事情

倒産を防ぐには、商品・サービスの値段を上げられればよいのですが、そうもできない事情がみえてきました。

原材料の高騰を、価格に反映できているのか?という民間の調査会社のアンケートに対して、70.6%の企業が、多少なりとも価格転嫁は出来ていると答えました。ただ、どのくらい価格転嫁できているのか?という数字を見ると、36.6%でした。

この数字はどういうことを表しているのかというと、例えば原材料の高騰で、100円コストが上昇したとします。

この100円のうち、値上げとして価格に出来ているのは36.6円分にすぎず、残りの63.4円分は企業が負担しているということです。

本当はもっと価格に転嫁したいというのが多くの企業の本音だといえます。

値上げラッシュはいつまで続くのか?

この値上げラッシュはいつまで続くのでしょうか?

ある調査会社の試算によると、物価の上昇率は年内は上がり続けますが、来年からは下がっていくと予測されるということです。ただこれは上昇率の話で、値上げ自体は続く見込みです。

この値上げがどのくらい家計負担になっているのか?試算した結果が下の図です。

10月以降、1ドル=145円の円安が続いた場合、今年度の家計負担額は8万1674円にのぼります。

年収別で見ると、800万円から900万円の世帯では、9万1324円で、年収の1.1%に相当します。

300万円未満の世帯では、6万2765円で、年収の2.7%に相当する負担になります。

つまり収入が少ない家庭ほど、物価高による負担が大きいということになります。

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