アントニオ猪木さん “最後”の闘魂メッセージ

NHK
2022年10月5日 午後3:21 公開

7月21日。

私は都内のホテルの一室で、“あの人”が来るのを待っていました。

“燃える闘魂”アントニオ猪木さん。

音楽番組「ライブ・エール」のスペシャル企画で、内村光良さんと一緒にインタビューすることになったのです。

猪木さんは完治が難しいとされる難病「心アミロイドーシス」を患い、体重は激減しながらも、闘病する姿をインターネットなどで積極的に発信。信念である「元気があれば何でもできる!」を、体を張って伝えています。

その奥に秘められた思いとは何なのか?

初対面を前に鼓動が高鳴る私。

そこに、猪木さんは現れました。

まず、真っ赤なマフラーが目に飛び込んできました。そして、穏やかな笑顔。

車いすでゆっくりと近づいてくるその体は、座っていても大きさが分かりました。

やさしくほほえむ瞳の奥は、生き生きと輝いていました。

(クローズアップ現代 キャスター 桑子真帆)


 

「調子?いつも万全です。きょうは最高です!」

桑子:

こんにちは。NHKアナウンサーの桑子と申します。お決まりの赤いマフラー、鮮やかです。

 

猪木さん:

いやぁもう、そんなファッションも格好つけている場合じゃないです。

 

桑子:

生で見られてうれしいです。

 

内村さん:

きょうはよろしくお願いいたします。

 

猪木さん:

元気ですかー!!

 

内村さん:

ありがとうございます。元気いただきました。

 

桑子:

最初からいただいちゃいましたね。

 

猪木さん:

この1年足らずの間に3回も死にかけて。お迎えが今回は来たかなと思ったら、あの世からも嫌われて。今は病院じゃないですけど、毎日病院で天井を見ながら、じっとしているこのつらさと。それよりも毎日自分の体の状況が分かんないから、そういう意味では、人と話をする機会がないっていうのは、きょうはこうやって皆さんにちょっとお会いできて、逆に元気をいただいています。逆に私が興奮している。

 

桑子:

最近の調子はいかがですか。

 

猪木さん:

いつも万全です。そういうことにしています。

 

内村さん:

さすがでございます。

 

猪木さん:

きょうは調子どうですかって、悪いって言うより、きょうは最高でーす、って。

 

病気になって考えた 人間の“尊厳”

桑子:

猪木さんが突然発病されたのが4年前ですよね。その当時、自分が難病だと伝えられたときというのは、どういうお気持ちだったんですか。

 

猪木さん:

何もないときもあるけど、本当に痛みが…。これだけ人を痛めつけてきたから、その分お返しをもらっているのかな。

 

内村さん:

それだけ今まで闘ってきたから、こうやって病気とも闘っていけるんじゃないかなと思うんですよね。

 

猪木さん:

その辺のテーマがね、要するに尊厳というか、難しいですよね。人の生きるっていう。きょう1日こうやってまた生きているわっていうんで、尊厳という、一体なんのために生まれてきたのか。そういうテーマはいっぱいあるけど、何か1つの使命とかなんとかじゃなくて、こうやって生きていることが、もしかしたらメッセージかもしれないね

 

内村さん:

「尊厳」という言葉はなんか残りますね。

 

猪木さん:

このテーマは難しいけど、いかに生きる元気というような、そういうものは人から教わる問題じゃなくて、個人がどういうふうに考え、それを実行するか。

 

桑子:

それをまさに体現していらっしゃるな、と感じますよね。

 

猪木さん:

今ならリングに上がっても勝てますよ。

 

猪木さん:

あんまり難しいことばは苦手なんだけど、仲間が時々(自宅に)来たときに、古舘伊知郎さんなんかもたまに来てくれるんです。そうすると、なんか一晩中みんなプロレスの話です。俺が最初に疲れちゃうんで、ベッドへ行って横になって。

 

桑子さん:

いい時間ですね。

 

「かっこ悪い猪木もさらけ出す」

桑子:

でも、こうやって病と闘う様子をずっと発信して、続けてらっしゃるじゃないですか。それはどうしてなんですか。

 

猪木さん:

今の尊厳も含めて、自分なりにいろんな角度から考えた。事務所は、こういう体ですから、あんまりもう人前に出すのは嫌だと思ってたんでしょうけど、あるがままで皆さんに、「あんただらしない」という人もいるだろうし、いろんな人がいるにしても、まあ、あるがままでいいじゃないと言って。

 

内村さん:

それで逆にみんな、元気もらうんじゃないかな。そう思います。

 

猪木さん:

強い猪木もそれはそれで、今ある、かっこ悪いかいいか分かりませんけど、このかっこ悪い猪木もさらけ出して、人はどうあるべきかみたいな部分も含めてね。こういう状態の中で「猪木、頑張っているよ」っていうメッセージを送るしかできませんね。

 

混迷の時代 猪木さんが届けたい思いとは

内村さん:

今、時代がいろいろと、紛争があったりもしますけど、猪木さんはこの時代、どう思われていますか。

 

猪木さん:

自分が過去、イラクの人質解放があって。もう一つは北朝鮮問題を、私の師匠(力道山)が北朝鮮の出身で、そういう意味では師匠の出生地まで行った。そしたら、とにかくプロレスを見たことがないと言うわけ。私は、片足もうリングから降りているけど、本物を見せましょうってやったの。それがなんと1日19万人、2日間で38万人。これはすごいなって。東京ドームもすごいけど。そういう真ん中に立って戦っている、自分じゃない部分ってありますよね。

 

内村さん:

私も見ました。あのとき、北朝鮮の試合も、人種を越えて人を越えて熱狂していましたもんね。だからもう国境とか関係なく、みんなが熱狂していたっていう。

 

(1995年 北朝鮮で試合した猪木さん)

 

桑子:

今、みなさんに届けたいメッセージはありますか。

 

猪木さん:

ひと言しかないですよ。元気だよ。「元気があればなんでもできる」。この、なんでもできる、っていうところに1つのポイントがね。

 

内村さん:

これって実は本当に深いことばなんだなって、今思います。

 

桑子:

本当ですね。私たち、最後にやはり猪木さんの“あれ”を聞きたいなと思っておりまして。

 

猪木:

いくぞー!

1、2、3、ダーッ!

 

【猪木さんインタビュー動画はこちら】

猪木さんのインタビューの模様は、動画でもご覧になれます。

◆“最後の”闘魂メッセージ その1「元気ですか!!」

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◆“最後の”闘魂メッセージ その2「病状、考えていること」

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◆“最後の”闘魂メッセージ その3「私たちへのメッセージ」

https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=iw9twt79&type=video&dir=SnD&sns=true&autoplay=false&mute=false

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