「家族のお葬式をやりなおしたい」
コロナ禍で葬儀の簡素化や小規模化が進む今、家族の『弔い』について多くの人が心残りを抱えている実態が浮かび上がった調査があります。
どうすれば“悔いのない別れ”が実現できるのでしょうか。葬儀にまつわる様々なデータから読み解きます。
(クローズアップ現代+ 取材班)
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9月16日放送 「家族と“悔いなく”別れたい 多様化する葬送」
コロナ禍で「死」「葬儀」を意識
1年半以上コロナ禍の生活が続き「死」や「葬儀」というものへの意識が高まっています。
大手葬儀会社が去年(2020年)11月に、首都圏と関西圏のあわせて100人を対象に行った意識調査では、新型コロナの感染拡大をきっかけに「死や葬儀について意識した」と答えた人が全体の半数に上りました。
- 最も意識が向いたのは親世代の葬儀関連(22人)
- 次いで多かったのは自分自身の葬儀を意識した人など(19人)
進む葬儀の簡素化・小規模化
一方、コロナ禍で顕著となっているのが、葬儀の簡素化や小規模化です。
ホールや公民館などを借りて、家族や親戚・友人や仕事関係の知人など多くの人が参列して行う葬儀は「一般葬」と呼ばれていますが、この割合が減少しています。
葬祭事業を手がける会社が、葬儀を行った経験のある全国の40歳以上の男女を対象に去年行ったアンケート調査では、
主に家族だけで行う「家族葬」
通夜を行わない「一日葬」
儀式は行わず火葬だけを執り行う「直葬」
これらを合わせた割合が、初めて「一般葬」を上回りました。
葬儀多様化の影で「弔い不足」も
大切な人を亡くした直後、遺族は深い悲しみを抱き、心の整理がつかないまま葬儀を取り仕切ることになります。限られた時間の中で準備に追われ、「納得のいく見送りができなかった」と後悔する人が少なくありません。
同じ葬祭事業を手がける会社が2017年に行った調査では、45%の人が「葬儀後に弔い不足を感じた」と答えています。
より具体的なデータもあります。2018年に大手葬儀会社が行った調査では、喪主の49%が葬儀に何らかの後悔を感じていました。
その理由として、
・本人の希望を聞いておくことができていなかった
・親戚や知人などの把握ができていなかった
・安易に近所の葬儀会社に依頼してしまった
などがあげられています。
葬儀は誰のためのもの?
葬儀での後悔が生まれる要因として指摘されているのが、送られる側と送る側の思いにギャップがあることです。
自分自身の葬儀についてたずねると、儀式を伴う葬式を望む人は6割あまり。3割以上の人がより簡素化された葬式を希望しています。一方、身内が亡くなった場合については9割近い人が儀式のある葬式を希望しています。
後悔しない“見送り”のために
大切な人を納得のいく形で見送るためにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントになるかもしれないのが、大手葬儀会社が2018年に行った調査です。
葬儀で喪主をつとめた人に対して、自分の理想の葬儀と比較して100点満点で点数をつけてもらいました。その結果『事前に葬儀に関する知識を得ていた人』の方が、より満足度の高いお見送りができることがわかったのです。
- 「事前に情報収集していた」 76.5点(平均)
- 「事前に情報収集をしていなかった」 66.6点(平均)
およそ10点の差がありました。
「葬儀について調べるのはなんとなく気が引ける」「縁起でもない」。そう感じる人も多かもしれません。しかし葬儀の知識を得たり、大切な人と “いつか来るそのとき”について話をしておくことは、後悔しないための大切な手続きと言えそうです。
葬儀事情に詳しいジャーナリストで寺の住職を務める鵜飼秀徳さんは次のように話します。
「葬儀は故人のためだけでなく、残された家族が死を受け入れ、悲しみを癒すために欠かせないものです。先立つ人、見送る人、双方が別れ方について日頃から話しておくことが“後悔しないお見送り”につながるのではないでしょうか」
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NHKでは現代の葬儀や供養のあり方について引き続き取材をしています。
「心の区切りがついた納得の葬儀」
「後悔が残った葬儀」
「コロナ禍で執り行った葬儀」など
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