事故物件の当事者 大家と遺族の本音

NHK
2021年10月5日 午後8:49 公開

孤独死などから事故物件になることを恐れて、高齢者の入居を拒否するケースが後を絶ちません。高齢者の4人に1人が入居拒否を受けた経験があり、大家の約8割が高齢者の入居に対して拒否感があるという調査結果もあります。(※)

貸す側からみた事故物件、残された家族にとっての事故物件・・・それぞれの本音は、驚くほど赤裸々なものでした。

(クロ現+ 取材班)

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「敷地から一歩でも出て死んでくれれば」

首都圏に10世帯ほどのアパート1棟を所有する大家の中村さん(仮名)。これまでに2度、大家として管理している部屋が事故物件になりました。

1度目は入居者の自死。2度目は孤独死。

普段はサラリーマンとして働き、兼業で大家をしている中村さんにとって、遺体発見後の対応は過酷なものでした。

「やっぱり後処理ですね。遺族はいるのかな、とか。特殊清掃を入れたり、遺品整理をしたり、リフォームの手配も発生しますから。孤独死のときは夏場だったので、発見まで10日ぐらいでしたが、遺体の跡が残って臭いもきつくて。ひどくなると、臭いが隣の家に行っちゃう。その部屋だけじゃ済まないリスクがあって、これは大変でした」

「本当に人間性が疑われちゃうかもしれないけど、敷地から一歩出て死んでくれればっていうのが、オーナーとしては正直なところです」

中村さんは所有する部屋が事故物件になることで、金銭的な損失も受けました。

1度目は、清掃やリフォーム代など150万円以上を自ら負担。

2度目は、前回の経験から家主用の保険に加入していたため、清掃などの現状回復の費用や空室中の家賃などの補償は出ました。しかし、事故物件となったため、その後の家賃を下げざるを得ず、長期的な損失が発生し続けています。

もう二度と事故物件を持ちたくない・・・その思いで、大家として、高齢者の入居を拒否しているといいます。

「線引きとして、75歳以上の方はなるべくお断りしているようにしています。孤独死だったり事故だったりのリスクが高いからです。足腰が弱っていると、中で転んで打ちどころが悪くて、という可能性もありますよね。私のところに話が来る前に、不動産会社さんのほうで丁重にお断りをして頂いてることが多いです」

――例えば近くに家族がいても入居を断る?

「近さにもよるけど、本当に何かあってもすぐ駆けつけられるのか?と疑問です。言い方が悪いですけど、死んでいるかどうかわからないレベルで救急車を呼んで、病院で亡くなったって診断を受けられるような感じであれば、いいんですけどね。そうじゃないと、なかなか難しい。家族が近くにいても、なるべく候補から外したいところです。すみません」

――大家さんにとって、事故物件ってそれぐらい怖いもの?

「そうですね。二度とかかわりたくないっていうのが正直なところですね」

貸す側の大家と借りる側の入居者、仲介業者を通すと、その交流はほとんどありません。

ビジネスとして関わっている大家側のインタビューに、亡くなった方への思いよりも、所有する物件への思いを強く感じました。

事故物件は、孤独死で1割、自死で3割、殺人事件で5割、価格が下がると言われています。人の死により、下がる幅が変ると思うと、複雑な思いを抱かずにはいられません。

疎遠でも遺族 「悲しいより、大変だな」

事故物件の当事者は大家だけではありません。疎遠であったとしても遺族や親戚として、思いがけず事故物件に巻き込まれるケースも身近になりつつあります。

千葉県の60代の女性、田中さん(仮名)は、一人暮らしの兄の死により去年、事故物件を相続することになりました。

田中さんの兄は7歳違いで、ここ数年は年に1~2回しか会うことはありませんでした。死後2か月ほどで発見され、遺体は激しく損傷した状態でした。

兄の死を知ったのは警察からの電話でした。それからの日々は兄を失った悲しみよりも死後の手続きの煩雑さが印象に残っているといいます。

「例えば、クレジットカードなんかは、電話で「止めてください」で簡単に済んだのですけど。兄が年金をもらっていたんですよ。亡くなった後も振り込まれているから止めなきゃいけないと思って、年金事務所へ電話したんです。そうすると、こちらが「余分に振り込まれてる分は返します」って言ってるのに、「どういう関係ですか?」と言われてしまって。戸籍謄本だとかなんだとかって用意しなきゃいけないっていうのが、大変でした。そういうのが煩わしいって言ったら怒られちゃいますけど、あれしなきゃこれしなきゃ、がたくさんあったので、悲しいっていう思うより大変だなって思う方が多い。やっと終わったっていう感じです」

田中さんは特殊清掃など様々な手続きに加え、清掃料など60万円を負担しました。最終的には、事故物件専門の不動産会社が負担額と同等の額で買い取ってくれましたが、その手続きには半年以上かかりました。  

あれから1年。交流は少なくなっていたものの、猫好きで優しかった兄のことを振り返る余裕も出てきました。田中さん自身、離婚や子どもの自立を経て、現在は一人暮らし。事故物件で苦労した体験にも関わらず、自分を重ねてしまうこともあるそうです。

「どうだったんだろうって。兄としてね、兄の人生としてどうだったんだろうなって思います。最期、ひとりでそうやって亡くなっちゃって、寂しい人生だったのかな、それとも、本人はそれなりに生きてきたのかなって」

「もし自分がここで、例えばひとりで死んじゃったら、それはそれでありかな…。ひとりぼっちで死んじゃったからといって、悲しいとか寂しいとかじゃなく、死んじゃったら何にもわかんなくなっちゃうんだから、関係ないやって思っちゃいます。そう思っちゃってます」

※「不動産会社に入居を断られた経験がある高齢者は全国で23.6%」R65不動産調べ、「賃貸人(大家)の約8割が高齢者の入居に拒否感」(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成30年度)家賃債務保証業者の登録制度等に関する実態調査報告書

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