アフリカ “親ロシア”が広がる世界を歩く

NHK
2022年9月28日 午後4:21 公開

予備役の部分的動員を進めるなど、ウクライナ軍の反転攻勢を受け「焦りを募らせている」ともみられるロシア。しかし、核の脅しを繰り返すなど、強気の姿勢を崩していない。背景には、欧米による厳しい経済制裁など包囲網も強まる一方、孤立化を避ける戦略を図ってきたこともある。

ロシアが接近を図っているのが、国連加盟国のおよそ3割を占めるアフリカの国々。ことし3月の国連総会でのロシア非難決議にはアフリカの54か国中、半数近い26か国が同調せず、ロシアに一定の配慮を見せた形だ。ロシアはどのようにアフリカで影響力を広げているのか。現地で実態を取材した。 

(クローズアップ現代取材班) 

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ロシアに急接近するマリ

ことし3月、国連でのロシア非難決議を「棄権」した国の1つ、西アフリカのマリ。かつてフランスの植民地で、独立後も強いつながりを保ってきたが、その関係が崩れロシアに急接近しているという。

それを示す現象は、現地に入るとすぐに、かいま見えてきた。首都バマコの大通りには多くの兵士や警察官が警備にあたり、自由な撮影はままならない。中心部の道路脇では、大きなマリの国旗と並んでロシアの国旗が売られているのが目に入ってきた。フランスのラジオ局やテレビ局の放送は禁じられ、“フランス離れ”と同時に“ロシアへの接近”を象徴するかのようだった。 

  

“親ロシア”インフルエンサーが支持拡大

マリで高まる“親ロシア”の世論の背景には何があるのか。まずは、“親ロシア”の政治活動をしている弁護士のドリッサ・メメンタさんに話を聞くことにした。 

メメンタさんはSNSで12万人近いフォロワーを持つインフルエンサーで、3年ほど前からSNSへの投稿や集会などを通じて、ロシアへの協力を呼びかけている。取材した日も、世界情勢におけるロシア擁護のライブ配信をはじめると、すぐに500人近くが視聴し、次々と賛意を表すハートマークが寄せられた。 

メメンタさんの主張が支持を得る背景には、旧宗主国フランスへの不信感と国内での治安の悪化がある。マリではおよそ10年前からイスラム過激派が勢力を拡大し、フランスはマリ政府の求めに応じて2013年から軍を派遣したが、状況は改善しなかった。 

こうした現状への国民の不満を背景に、マリの軍部が、おととし、去年とクーデターを起こし、フランス政府はことし8月、マリから部隊を撤退させた。

ドリッサ・メメンタさん :

「フランスはマリの意志を受け入れず、押しつけようとするだけだ。ともに歩んできたが、私たちは何も得ることができなかった。一方、ロシアとはウィンウィンのパートナーとなれる」。

 

“よう兵部隊”が関係強化の切り札

マリで“フランス離れ”が進む中、存在感を強めてきたロシア。過激派対策としてロシア製のヘリコプターなどの兵器を送り、マリとの軍事的な協力を進めてきた。

さらに、関係強化の切り札として派遣されたと指摘されているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」。これまでシリアやウクライナなど紛争地で活動してきたとされる、ロシアのいわば“よう兵部隊”だ。マリ軍とともに過激派の掃討作戦に加わる一方、市民の犠牲もいとわないとして人権侵害が指摘され、国際的な懸念が高まっている。 

スウェーデン国防研究所によると、マリに加え、アフリカの少なくとも6つの国にロシアはワグネルを派遣しているとされる。その多くが強権的な政権で、それを支えることで、ロシアとの関係強化につなげる狙いも指摘されている。 

  

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元大統領側近の言葉

ただ、実際にはロシアが進出した後も、マリでは過激派対策は効果をあげていない。 

紛争監視の国際的なNGOなどは、軍事政権になってからも、過激派の攻撃は減るどころか激しさを増していると指摘している。 

クーデター前の政権で、長く大統領のアドバイザーを務めてきたボカリ・サガラさん。ロシア依存は問題の解決につながらないとして、国の行く末を案じている。 

 

前大統領アドバイザー ボカリ・サガラさん:

「人々は、解決策はロシアしかなく、『ワグネル』がやってきてイスラム過激派を瞬く間に消滅させてくれるかのように信じ切っているが、これは真実ではありません。マリ人の大半は教育を受ける権利が保障されず、現状を理解するのはとても難しいことです。言われるままにすべてを信じて、ただ分かったと納得するしかないんです。真の解決策は、武器を取り合い殺し合いをすることではなく『なぜ過激派が増えているのか』を知ることにあるはずなのです」

結局は、若者への教育と雇用の機会を確保するための国づくりを、地道に進めていくしかないと強調した言葉が印象に残った。 

 

ロシアの次のターゲットか

次に向かったのは、マリの隣国のブルキナファソ。ロシアの次のターゲットとも言われ、ロシアとの距離感をめぐって、世論も揺れている。 

マリと同様、フランスの旧植民地で、イスラム過激派が攻勢を強めている。治安の悪化を背景に、ことし1月に軍がクーデターを起こし、軍事政権となった点でもマリと状況が似ている。 

首都ワガドゥグではたびたびフランスとの関係断絶を訴えるデモが行われ、そこにはロシア国旗を持った人たちの姿も見られた。 

とりわけ、熱を帯びているのがSNS上での“ロシア寄り”の情報発信だ。数万人単位のフォロワーを持つSNSのアカウントがいくつも存在し、フランスを非難し、ロシアとの関係強化を訴える投稿が拡散されている。 

そうした親ロシア団体の1つを訪ねると、ブルキナファソとロシアの国旗をあしらったTシャツを着たメンバーに加え、最近、歌手デビューしたという男性によるロシアをたたえる歌で出迎えられた。 

団体の広報担当者によると、ロシアからの支援を受けているのかと質問すると、否定した上で、寄付によって活動し、この半年でおよそ1万人の支持者を得たという。 

 

過激派に追われ ロシアに傾斜

シビリ・バモゴさん:

「私たちが望むのは、この国をテロから解放するために正直に助けてくれる国です。ロシアが私たちを救ってくれることを望みます」 

こう語ったのは、首都近郊の町で避難生活を送るシビリ・バモゴさん。3年前、故郷の北部の町がイスラム過激派の襲撃を受け、着のみ着のままで逃れてきたという。親しくしていた叔父は過激派に殺害され、バモゴさんが故郷に戻れるメドはたっていない。 

絶望感の中、バモゴさんが心を動かされたのは、ロシア支持のSNS投稿。見せてくれた動画の1つには、プーチン大統領が写り、信じがたいメッセージが流れていた。 

 

「フランスはイスラム過激派たちに武器を与えており、非難されている。プーチンは支援を必要としている人たちに、声をあげるよう呼びかけている」 

 

動画を見つめるバモゴさんの真剣なまなざしに、その場では何も言えなかった。

バモゴさんのような国内避難民は、ブルキナファソ全土でおよそ190万人にのぼる。そうした苦難にあえぐ人々にこそ、ロシアを支持する情報が広がりやすい現状をかいま見た気がした。 

 

あふれるデマに懸念

一方でネット上にあふれる“ロシア寄りの情報”に危機感を強めている人たちもいる。 

地元のファクトチェック団体「ファソチェック」は、ネット上の投稿などを監視し、内容が真実かどうかを確かめ、人々に警鐘を鳴らしている。 

バモゴさんが見た、過激派とフランスがつながっているといったような内容の投稿は典型的なデマだと指摘し、私たちにいくつかの例を見せてくれた。 

先月、ブルキナファソの人々の間で「フランスが過激派とともにマリで民間人を攻撃した」という内容のSNSの投稿が拡散された。しかし、この画像を調べると、5年前にフランス軍が公開した広報写真だということが判明したという。 

また、「過激派に武器を供給するフランス軍」だとして拡散されたSNSの動画は、自然保護区でヘリコプターから物資を運ぶNGOの活動の様子であることが分かったという。 

ファソチェック ジョーダン・メダさん:

「この種の投稿は、フランスに関するうそをつき、彼らへの憎悪を呼び起こすことを目的としているのです。そして、ロシアの外交目的に沿うように使われています」

 

アフリカでの情報工作の事例を調査する専門家は、こうした“ロシア寄り”の情報発信のなかには、ロシアの政権中枢が関わっている疑いがあると指摘する。 

アフリカ戦略研究センター マーク・ダークセン研究員):

「ロシアの偽情報キャンペーンは通常、何層もの仲介者を通じて組織化され、複数の組織が関与しています。ロシアの関係者によって、こうしたキャンペーンの出所とクレムリンとのつながりを偽装することが、ますます巧みになっています」

 

ロシア“友好国”は今後も増えるのか

今後、ブルキナファソはマリのようにロシアとの関係を深めていくのか。外交のかじ取りを担う、ルアンバ外相に直接、問うことができた。

ブルキナファソ ルアンバ外相:

「ブルキナファソはすべての国と友好関係にあるので、優遇する国はなく、関係はどの国とも良好です。ロシアを西側諸国と比べたがる人もいますが、私たちを助けようともしない人たちに、とやかく言われたくはありません。この苦境から抜け出すためには、“とげのある枝”でもつかむしかないのです」 

 

かつての植民地支配の歴史から、アフリカの国々のなかには西側諸国への根強い不信感を持つ国も多く、外相の言葉にもその思いが込められていた。一方で、“とげのある枝”という表現で、暗にロシアに接近することへのリスクをにじませていたのも印象的だった。 

それでも、その枝をつかもうとするアフリカ諸国の現状は、西側の価値観がすべてではない、多極化と分断が進む世界を映し出しているように感じた。 


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