いま建物の老朽化や住民の高齢化などで、管理がうまくいかなくなるマンションが多発しています。「まだうちのマンションは築浅だから大丈夫」「自分は若いし、関係ない」…
そんなあなたも、もしかしたら予備軍かもしれません。 あなたの住まいは大丈夫?専門家の取材をもとにチェックリストを作成しました。
(クローズアップ現代取材班)
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マンションの大問題 老朽化×高齢化
〈マンションみらい価値研究所所長 久保依子(くぼ・よりこ)さん〉
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マンションみらい価値研究所所長の久保依子さんによると、建物の老朽化や高齢化などの問題で管理運営が行き詰まるマンションには、いくつかの兆候があるんだそうです。
久保さんが挙げた8問のチェックリストがこちら。あなたは、何個当てはまりますか?
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いかがでしたか?合計で4個チェックが入った人は、かなり要注意とのことです。
キーワードとなるのは、“2つの老い”。
それは、「建物の老朽化」による劣化や多額の修繕費などの問題と、「住民や所有者の高齢化」による認知症のトラブルや孤独死などの問題が二重にのしかかり、マンションの管理運営が難しくなること。
いま多くの高経年マンションが、この”2つの老い“に苦しんでいます。
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チェックリストの項目を専門家が解説
チェックリストの各ポイントごとに久保さんからの解説とアドバイスをご紹介します。ご自身のマンションとの向き合い方を振り返るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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① いまのマンションに長く住むと思っていない
まずは、マンションを好きになる、関心を持つということが管理の大前提です。それがなければマンションの老いの問題がどこかで発生し、巻き込まれる可能性が非常に高いです。たとえ今はマンションに長く住むつもりがなくても、人生どうなるか分かりません。無関心のまま、気が付けば“2つの老い”真っただ中の可能性も。
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② マンション内に立ち話ができる程度の知人は2名以下
この2名というのは両隣を意識しています。挨拶というレベルでは意外とできたりする方も多いのですが、立ち話くらいまでいかないと関係性にまでつながってきません。ご近所とのマンション内の関係性がないと、“2つの老い”の問題に巻き込まれる可能性が高いです。
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③ 管理組合の総会に出たことがない
総会に出たことがない方も、いっぱいいらっしゃると思います。しかしマンションの区分所有者は、こうした総会に出なければマンションで何が起きているか把握できませんし、管理組合の構成員ですので、たとえ忙しくても理事はやらなければいけないものです。
出られないとしても、管理規約や総会議事録は必ず配られるものですので、せめて捨てずに保管し、しっかり目を通して頂きたいです。
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④ 積立金がいくらあるか知らない
マンションの資金計画がしっかりしていなければ、大規模修繕のタイミングで大きく値上がりしたり、その金額をめぐって管理組合が紛糾し、”2つの老い”の問題への対処に黄信号が灯ったりする可能性が高くなります。そのためにもマンションの財政状況をしっかり把握しておくことが重要です。
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⑤ 管理会社に任せてあるから大丈夫だと思う
マンションにお金があるうちはいいのですが、管理会社も営利企業ですので、もうからないマンションからは撤退することも起こりえます。また中には、管理がおざなりな会社もあるでしょう。
大前提となるのは、マンションの管理は所有者たちの管理組合が主体だということです。
ご自身の家計のやりくりを全て他人任せにすることはないと思いますが、同じようにマンションの管理についても、管理組合が主体的にやることが大事です。
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⑥ ゴミ置き場に、未分別のゴミや指定日以外のゴミが多量に出ている
管理に関心がない住民や所有者が多いとこうなります。こうした日常の問題について、話し合いなどが住民でなされ解決できないと、大規模修繕などひとりひとりのお金と生活が関わってくる問題を話し合うことは難しいです。
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⑦ 郵便受けや玄関ドア前に表札がない住戸が多い
表札がないということは、近所づきあいをしたくない、外との関係を断ちたいということの現れといえます。また表札がなかったり、郵便受けがふさがれていたりする家が多い場合、空き室が多い可能性もあります。
これは賃貸で貸せていないということで、資産価値が低くなっている可能性があります。空き室だと、人が住んでいないため傷みやすいということがある上に、賃貸で所有するオーナーは投資目的なので、儲かるかどうかを最優先に考えます。
なかには資産価値をあげるために管理をちゃんとしようという人もいますが、多くの場合、まず住んでいないので理事になることもなく、マンション内がどうなっているのか全然知りません。修繕積立金などの値上げに難色を示すケースも多く、管理をしていくのとは逆のベクトルが働く可能性があります。
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⑧ 駐車場に車がほとんど止まっていない
いま問題になり始めているのが、この駐車場の空き問題です。車離れが進み、マンションの駐車場が埋まらないケースが少なくありません。
実はマンションの管理組合の多くが駐車場収入を大きな財源のひとつとしています。それが貸せずにいると、その分収入が目減りすることになります。
その足りない分を修繕積立金や管理費の値上げでカバーできていればいいのですが、それができていないと資金ショートにつながってきます。その分かりやすい目安が駐車場がどれだけ埋まっているか、なのです。
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最後に、「“行き詰まるマンション”予備軍」になってしまった方へ、久保さんからアドバイスをいただきました。
久保さんは、「『しまった、予備軍になっている!』という方も、今ならまだ間に合います。はじめの一歩は気が付くことです。お仕事やご家庭の都合もあり、急に管理組合活動に関心を持とうと言っても難しいと思います。まず、何かひとつでも行動に移してみませんか」と語ります。
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久保さんが挙げた“はじめの一歩”は、たとえば、
・今まで話したことのない人に思い切って話しかけてみる
・帰宅した時に掲示板を確認する
・普段は通らない通路や敷地を歩いてみる
などです。
新しい人とのつながり、管理組合とのつながりがきっと見えてくるはずです。
先送りにすれば、どんどんと問題の解決が難しくなっていくとも言われる“2つの老い”の問題。このチェックリストを使って、あなたとマンションの関わりを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
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●クローズアップ現代 2022年10月18日放送 ※10月25日まで見逃し配信