「入管」とは?外国人収容の実態や課題をまとめました

NHK
2022年12月7日 午後6:37 公開

在留資格がなく、国外退去を命じられるなどした外国人を収容する「入管施設」。

去年、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが収容中に亡くなったことで、入管施設内で何が起きているのか、関心が高まっています。

そもそも入管施設とは何か?どんな人が収容されているのか?内部の様子は?

議論されている課題点と合わせて、短く解説します。

(クローズアップ現代 取材班)

「入管施設」には誰が収容されているのか

入管施設 内部の様子

(入管施設の内部の様子)

在留期限をこえて日本に滞在する「オーバーステイ」の外国人は、6万6,759人(令和4年1月1日)。

出入国在留管理庁=入管の施設に収容される対象は、こうしたオーバーステイで在留資格がないなどの外国人で、中には有罪判決を受けた人もいます。

国外への「退去命令」が出ると、多くの人は帰国しますが、帰らない選択をする人もいます。その理由は「長年日本で暮らし祖国に戻る場所がない」「子どもや配偶者がいる」「難民申請中で祖国に帰ると迫害の恐れがある」などさまざまです。

収容施設の内部や生活はどうなっている?

入管施設内部の様子を説明する元収容者の男性

おととしまで3年間収容されていたアジア出身の40代と50代の男性が、内部の状況を明かしました。

男性は10畳ほどの部屋に4人で生活していたといいます。部屋の外に出られるのは日中の6時間ほどで、それ以外は施錠された部屋の中での生活が続きました。

男性の証言によると、部屋の外にはシャワールームや洗濯室、屋外運動場などがあり、収容中は携帯電話が使用できないため、外部にアクセスするには施設内にある公衆電話でテレホンカードを購入してかけるか、面会に来てもらうなどの必要があると言います。

入管をめぐる課題「医療」と「長期収容」

収容施設での処遇について、入管庁は「被収容者への医療面での対応を含め、個々の状況及び人権に配慮した処遇に取り組んでいる」と説明しています。

しかし、収容中に病気や自殺で亡くなった人は、統計をとり始めた2007年以降で18人。11月も東京の入管施設でイタリア人の男性が亡くなり、自殺とみられています。

 

医療の問題

名古屋市の入管施設で亡くなったスリランカ人の女性ウィシュマ・サンダマリさん

去年3月には名古屋市の入管施設に収容されていたスリランカ人の女性、ウィシュマ・サンダマリさん(33)が体調不良を訴えて亡くなり、遺族は「入管は仮放免を認めず違法に収容を続けたうえ、体調が悪化しても必要な医療を提供しなかった」などと訴えて今も裁判を通して真相解明を求めています。

出入国在留管理庁によるウィシュマさん死亡についての調査報告書

この問題について入管は、去年8月に最終報告を公表し、

▼ウィシュマさんの治療などを求める訴えを局長に報告せず、現場の職員だけで必要ないと判断するなど、内規に違反した運用を行っていたほか、

▼施設内にある診療室の医師や看護師は非常勤のため、死亡した当日は不在で、ウィシュマさんの容体が悪化しても職員だけで対応するなど、医療体制が整っていなかったとしていて、

現在、常勤医の確保や外部の医療機関との連携強化のほか、救急対応のマニュアル整備などの対策を進めています。

ことし10月には、入管の対応を巡りある判決が出されました。2014年に東日本入国管理センターに収容されていたカメルーン人男性が死亡したことをめぐって、男性の母親が「不調を訴えていたのにも関わらず速やかに救急搬送などを行わず適切な医療を受けさせなかった」などとして国に賠償を求めた裁判。水戸地方裁判所が入管の対応の過失を認めたうえで165万円を賠償するよう命じました。現在、国と遺族側の双方が控訴しています。

  

長期収容の問題

さらに、入管施設での収容の長期化も課題となっています。

入管施設は本来強制送還前の一時的な収容施設とされていて、収容の期限に定めはありません。祖国に帰らない選択をする人の中には、長期収容で精神的に追い詰められ、施設を出たあとうつ病などと診断される人もいます。

長期収容について、入管は「退去強制が確定した外国人は、速やかに日本から退去することが原則」とした上で、「収容は、帰国すれば即座に解かれる性質のものだが、退去強制令書が発付されたにも関わらず、退去を拒み続けた結果として収容が長期化する場合がある現状については、解消する必要がある」としています。

収容施設の外で暮らす「仮放免」にも課題

仮放免中の男性

(仮放免中の男性)

入管の外に出るためには、「仮放免」(かりほうめん)という制度があります。

仮放免とは、条件付きで収容が解かれる制度です。仮放免となるかどうかの判断は入管に委ねられています。ただ、仮放免中の暮らしには条件があります。

・定期的に入管に出頭し、期間を更新しなければならない

・居住地域以外への移動は入管の許可が必要

・就労は禁止

・・・など

現在、新型コロナウイルスの感染対策として、多くの人が「仮放免」の措置を受けて一時的に収容施設の外で暮らしています。しかし、様々な制約の中、厳しい生活を余儀なくされ、支援者らの助けを受けて生活をしている人がいるのも現状です。

一方、入管は仮放免中に逃亡する人などもいるとしています。

国連からの勧告 “長期間監禁状態に置く収容は回避すべき”

国連の委員会による勧告

入管の収容を巡っては、国際的な人権規約に基づいて各国の人権状況を審査している国連の委員会からも改善をはかるよう勧告が出されています。

ことし11月に出された勧告では、2017年から去年までの5年間に3人の収容者が死亡したことを受けて、「施設内の医療状態が劣悪だという憂慮すべき報告がある」「長期間監禁状態に置く収容は回避すべき」などが挙げられました。

日本がこれらの課題にどう取り組むのか、国際社会からも厳しい目が向けられています。