知っていますか?「IUU漁業」が世界中で問題に。【3分で解説!】

NHK
2022年9月26日 午後5:57 公開

規制を無視して魚を取る、漁獲量をきちんと報告しないといった、「違法Illegal・無報告Unreported・無規制Unregulated」で行われる漁業、「IUU漁業」。

海洋の環境を悪化させるだけでなく、船上での人権侵害など、いま、世界的な問題になっています。

多くの水産物を輸入している日本にとっても他人事ではありません。IUU漁業でとられた魚は、もう私たちが口にしている可能性もあります。IUU漁業の問題と対策について整理しました。

(クローズアップ現代取材班)

IUU漁業とは

この問題の調査や研究を行っている国際NGOのWWF(世界自然保護基金)ジャパンによると、IUU漁業とは

◆違法(Illegal)

国や漁業管理機関の許可なくまたは国内法や国際法に違反して行う漁業 

例:密漁

◆無報告(Unreported)

法律や規則に違反し、報告が行われていない、または虚偽の報告を行う漁業  

例:産地偽装 

◆無規制(Unregulated)

無国籍または当事国以外の船舶が、規則および海洋資源の保全管理措置に従わずに行う漁業

「密漁」、「違法な漁具や漁法での漁業」、「不正確・過少報告」、「認可されていない漁船による漁業」などがこれにあたります。

IUU漁業 は持続可能な漁業にとって問題

わたしたちが食卓に並ぶ「シーフード」。

水産庁の水産白書によると、世界の水産資源のうち、過剰に漁獲されている状態の資源の割合は、3割を超えます。ニホンウナギなどは絶滅危惧種とされているほか、他にも資源量の低下が指摘されている魚介類もあります。

秋になると「サンマが不漁…」なんていうニュース、耳にすることないですか?

私たちが、将来もシーフードを食べられるようにするためには「持続可能な漁業」に取り組むことが必要です。水産資源が枯渇することを防ぐため、科学的根拠に基づいて、「管理しながら漁業を行う」というルールが設けられています。

しかし、IUU漁業が横行するとこうしたことが難しくなります。

アメリカは、「IUU漁業と水産物偽装は、水産資源を悪化させ、合法的な市場をゆがめ、消費者の信頼に悪影響を及ぼし、世界市場において漁業規制を順守する水産物生産者と不当に競合する」という問題も指摘し、対策に乗り出しています。

さらに、人権団体などに“奴隷労働”とも言われる人権問題も発生しています。十分な賃金が支払われない、身体的な虐待を受けるなどの人権を無視した不当な労働を強いられている人たちがいるのです。

IUU漁業の対策に動き出した日本

輸入水産物については、実は日本政府も、年末から対策に動こうとしています。

それは2022年12月から施行される「水産流通適正化法」です。

IUU漁業で獲られた魚を国内に流通させないよう、水際で防ごうという法律。外国の政府と事業者に魚が適法に獲られ・運ばれた事を示す証明書の添付を義務づけます。さらに税関などでチェックし、確認が取れれば国内で流通する仕組みです。

輸入される水産物で対象となるのは 4 種。サンマ、イカ、サバ、マイワシです。法律の検討会で座長も務めた北海学園大学の濱田武士教授は「先行して対策に取り組んでいる欧米に比べ、日本では輸入する魚種も多く、流通も複雑になっている。そのため、この法律の実現可能性を重視し対象魚種については”スモールスタート”になった」としています。

関連番組:

9月26日(月)夜7時30分放送(総合テレビ)

👉クローズアップ現代「食卓の向こうに“闇”がある 追跡!シーフード産業の実態」(※10月3日まで見逃し配信)